東京大学の入試問題ときくと、すごく難しそうなイメージを抱く人も多いと思います。しかし、その中には小学生の知識でも解けてしまう入試問題や、社会を生きる私たちに対してメッセージを投げかける入試問題など、ユニークな問題が数多く存在しています。
本記事では、明日からの話の種になる、いろんな意味で「面白い」東大入試問題を紹介していきます!
クスッと笑ってしまう問題
まず最初に紹介するのは、問題を読んでいてクスッと笑ってしまう入試問題です。大学入試という厳正な選抜試験の場にも、ちょっとした遊び心が隠されています。
頭の柔らかさが問われる英作文
東大で出題される英語の入試問題には、さまざまなイラストの状況を英語で説明する問題が出題されることがあります。今回ご紹介するのも、そのうちの一つです。
鏡を持っている男の子。その鏡に映っているのは、あっかんべーをする自分。この怪奇現象に、男の子はとても驚いた表情をしています。
さて、皆さんはこの状況をなんと説明するでしょうか? 日本語で説明するのも難しいですよね。
例えば、鏡に映った自分が「勝手に動いた」と言い換えるのはどうでしょうか? 英語で言うと、「his image move by itself.」ですね。こんなふうに、中学生でもわかるような英語で説明できるように状況を言い換える力が鍵となるのです。
グリコの必勝法を考える問題!?
皆さんは「グリコ」というゲームを知っていますか? じゃんけんをして、「グー」で勝ったら「グリコ」と言って3歩前へ、「チョキ」で勝ったら「チョコレート」と言って5歩前へ、「パー」で勝ったら「パイナップル」と言って6歩前へ進むゲームです。そしてこのゲームの必勝法を問われているのが、1992年理系数学の入試問題第6問の(1)です。
この問題の答えは、「ずっとグーを出す」「ずっとチョキを出す」「ずっとパーを出す」のどれかです。どれが必勝法だと思いますか?
単純に考えると、一番多く進めるのはパーで勝った時なので、パーを出し続けるのが良いと考えてしまいがちです。ただし、ここには落とし穴があります。
それは、パーで負けた時に、相手に5歩も進まれてしまうと言うことです。つまり、自分が勝った時にできるだけ前に進めることと、自分が負けた時に相手にできるだけ進ませないことの両方を考えることが重要なのです。
ここまでを踏まえると、チョキを出し続けるのが良いと言えるでしょう。勝った時に5歩も進めるだけでなく、負けたとしても相手は3歩しか進めないわけですからね。
こんなふうに、身近な遊びからも問題が出されるのが面白いところです。
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小学生でも解ける!?知識ではなく思考力が試される問題
大学入試、ましてや東大の入試なのだから、難しい知識が要求されるんでしょ?と思っている方も多いでしょう。しかし、東大入試の中には実は小学生の知識でも解けてしまう問題も存在しています。
時刻表も立派な勉強
東大入試の地理の問題では、私たちが日常的に目にするようなものが登場します。今回ご紹介する問題は、バス停や駅などで目にする時刻表がテーマの問題です。
さて、この問題は特別な知識がなくても、よく考えることができれば小学生でも正解できる問題です。さっそく順番に考えていきましょう。
aの時刻表は一番本数の少ない時刻表ですね。利用する人数が少なければ本数も少なくなりそうです。だとしたら、aは④だと考えられます。
次に、一番本数の多いdの時刻表について考えてみましょう。1日の中でも、7時、8時台の本数が特に多くなっています。ここで、この時刻表は月曜日の時刻という注釈がついていました。月曜日で朝の時間帯の本数が多いということは、通勤通学のために利用する人が多いと考えることができそうです。ですので一番人口が多く、通勤通学に需要がありそうな②がぴったりですね。
さて、ここまで考えてきてbとcが残りました。どちらが①成田空港の上海行きの航空便で、どちらが③人口約10万人の地方都市の駅前のバス停でしょうか?
ここで注目すべきは、bは区切りのいい時間で、cは中途半端な時間も混じっているということです。飛行機に乗ったことがある人は分かると思いますが、飛行機に乗る前にいろいろな手続きをしなければなりません。そうすると、「34分発」や「53分発」といった時刻では分かりづらく、間違えてしまう人が出てきてしまうかもしれません。
このように考えると、区切りのいい時間が並んでいるbが①で、残りのcが③だということができます。パズルのようで面白い問題だったのではないでしょうか?
足し算と引き算と掛け算が分かれば解ける東大数学
こちらの問題、ぱっと見すごく難しそうに思えてしまうかもしれませんが、実は足し算と引き算と掛け算が分かれば、小学生でも解けてしまう問題なのです。ちなみに、10進法というのは私たちが普段使っている数の数え方なので、特に気にしなくて大丈夫です。
さて、小学生でも解けてしまう問題と言ってもいきなり解法を思いつくのは難しいので、まずは適当な4桁の数字を考えてみましょう。「1234」だったらどの2桁の数字の和も9にならないので、条件に当てはまりますね。「9876」という数字も同じように当てはまります。「2345」だと、4と5を足して9になってしまうので当てはまりませんね。
ここで、条件に当てはまる時、当てはまらない時の法則を考えてみましょう。先の例で言うと、「4と5が揃うと当てはまらない」と言うように、入っているとダメな数字のペアがあると言うことができそうです。
それではどんなペアがダメなのでしょうか? 足して9になる数字のペアを考えてみてください。そうすると、以下のようになります。
「0と9」「1と8」「2と7」「3と6」「4と5」
このペアが揃わないように、4桁の数字を作ればいいのです。
まずは1000の位に当てはまるものから考えてみましょう。1000の位に入るのは0以外の1~9の9通りです。100の位を考える時には、足して9になるペアを除かなければなりません。1000の位が4の場合は、5を除くということですね。さらには、1000の位と同じ数を使うことはできません。この二つの条件を考慮すると、100の位に入れられる数字は8種類となります。
10の位、1の位も同じように考えてみましょう。足して9になる数と同じ数を除いて、10の位は6種類、1の位は4種類となります。
以上から、全てを掛け合わせて「9×8×6×4=1728個」が答えです。
法則が導き出せれば簡単に解けてしまう問題だったのではないでしょうか? 東大入試では、特別な知識ではなく、思考力が試される問題が多いのです。
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ここまでに紹介した問題からも分かる通り、東大入試問題には知識力ではなく思考力を試す問題も多く出題されています。学校で勉強する内容なんてあんまり覚えていない、という人でも気軽にチャレンジすることができるのです。難しくて解けなかった場合も、分かりやすい解説がついているので安心してください。
さて、みなさんは何問解けるでしょうか?
『小学生でも解ける東大入試問題』
SBクリエイティブ (2022/10/6)
じつは東大は、解こうと思えば小学生でも解けてしまうような入試問題をこれまでに数多く出題しています。なぜ、小学生でも解ける問題が難問になってしまうかといえば、知らず知らずのうちに身につけてしまった「思い込み」の落とし穴にはまり、小学生のようにシンプルに考えることができなくなってしまうから。
頭のカタイ人ほど解くのに手こずってしまうこれらの問題をはたして、あなたはいくつ解くことができるか!?
入試問題は社会へのメッセージ!?
東大入試で出される問題には、現代社会の課題に対してメッセージを投げかけるものが多く出題されています。ゆとり教育や教育格差、スマートフォンの普及による社会の変化など、トピックはさまざまです。
ここからは、東大からのメッセージを感じる問題を紹介していきます。とは言っても、この解釈はいろんな考え方があるうちの一つに過ぎません。
皆さんだったら、東大入試からのメッセージをどう解釈するか考えながら読み進めてみてくださいね。
円周率って何?
どうですか? すごくシンプルな問題ですよね。円周率とはどういうものなのかというのを正しく理解することができていれば答えられる問題ですが、「円周率は円周や円の面積を求める時に使うもの」程度の理解の人が多いのではないでしょうか?
この問題が出された時代は、「ゆとり教育」が行われ始めた頃です。学習内容を減らしてゆとりのある教育課程にしようというのが目的で、円周率を3.14ではなく3と教えていました。
「ゆとり教育」が始まった矢先に出されたこの問題は、「ゆとり教育」に対抗するという東大の意志を反映しているのではないかと話題になりました。数学を学ぶ上での大前提を、ただ暗記するだけではなく、理解することの重要性を説いていると言えるでしょう。
東大が出した異例の計算問題
計算問題を入試で出題する大学はたくさんありますが、東大は頑なに計算問題を出してきませんでした。それなのにここにきて、なぜ計算問題を出題したのでしょうか?
例えば、昔に比べて受験生のレベルが落ちているから。または、受験生の選抜を行うためにさまざまな問題を配置したかったから。さらには、実際に入った東大生の計算能力に疑問符があったから選抜の段階で確かめようとしたから。受験数学に関わっている人それぞれが理由を考えたかと思います。
これについて、ある東大生はこんな角度から考察をしたそうです。それが、「計算ができることが、勉強した証になる」ということです。
ここでポイントとなるのが。スマートフォンの普及やキャッシュレス化など、急速なデジタル化の流れが私たちの日常生活から「計算」を奪っているということです。
計算能力とは数学において基本的かつ基礎的無力ですよね。昔から、100ます計算や計算ドリルなど小さい頃から計算の練習は学校で教育の一環として行われていました。さらには、買い物をした時のお金の計算などで、身の回りにも計算をする機会がたくさんありました。
しかし、今はそれがありません。キャッシュレスの場合はお釣りが発生することはありません。さらに様々な小銭を組み合わせて支払うこともありません。組み合わせの概念や四則演算を考える必要がなくなっているのです。
この社会変化に対応して出題したのが、2019年の問題だったのではないかというのです。
今までは計算の概念というのは、勉強するものではなく、身の回りの社会から吸収して、なんとなくコツを掴むということも可能でした。しかし最近は、学校で「意識的」に学習することを通してでしかコツを掴むことが難しくなっています。
ここに注目すると、たった一問の計算問題の出題によって、受験生に数学をどれだけ勉強していたのか、を問うことができるような世の中になったのです。すなわち、計算を主体的に学ぶことをしなければ、計算能力を身につけることができない社会になっていることに気づいてね、という東大のメッセージだということも受け取ることができるというのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
東大入試というと難しい印象があるかもしれませんが、実は誰もが挑めて、楽しめる要素も十分に含まれているのです。このような「面白い」問題をきっかけに、勉強が楽しく思えるようになるなんてことも大いにあり得ます。
明日の話のネタ、学校の先生であれば授業のネタにぜひ使ってみてくださいね。