「思考ツール」が重要視されている今、多くの先生が授業で活用しようと試みています。しかし、「どの場面で、どの思考ツールを使えば最適なのか?」「なんとなく使っているけれど、本当に効果が出ているのだろうか?」と悩んだ経験はないでしょうか。「目的」に合ったツールを「正しく」選んでこそ、効果は最大化されます。
この記事では、僕自身が使ってきた経験と、大学生としての分析視点を基に、数ある思考ツールを目的別に整理し、それぞれの最適な使い方と授業での活用法を具体的に解説していきます。
そもそも「思考ツール」とは何か?
思考ツールとは、一言で言えば「考えを見える化するための道具」です。
文部科学省も「GIGAスクール構想」の中で活用を推進しており、単に知識を覚えるだけでなく、生徒自身が考え、表現する能力を育む上で不可欠な要素と位置づけられています。
GIGAスクール構想について具体的に知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

思考ツールの最大のメリットは、頭の中にある漠然としたアイデアや情報を、図やチャートという形に落とし込むことで、客観的に自分の考えを把握し、次の思考へつなげられる点にあります。本記事では、代表的な思考ツールを「目的」で分類し、それぞれの使い方と授業での活用例を紹介します。

目的(1)アイデアや発想を広げる
マインドマップ

マインドマップは、アイデアや発想を広げる目的で使うツールです。一つの中心テーマに関連する言葉を、放射線状につなげていきます。
授業での活用例
国語:物語の登場人物から連想するイメージを広げる
社会:「平和」というテーマから、思いつく事柄を自由に出し合う
ポイント: 「正解」「間違い」を気にせず、とにかくたくさんのアイデアを出すことを意識しましょう。
マンダラチャート

アイデアを広げるための2つめの思考ツールは、マンダラチャートです。3×3の9マスの中心にテーマを書き、周囲の8マスに関連する要素を書き出します。さらにその8マスを外側の9マスの中心に据え、同様にアイデアを広げていきます。
授業での活用例:
総合的な学習:「職業」について、一つの職業から必要なスキルや関連する仕事などを発想する
勉強計画:志望校合格のための目標を8マスに書き、さらにやるべきことを細かく書き出す
ポイント: 強制的に8つの視点で考える必要があるため、一つの物事を深く掘り下げる時に最適です。
目的(2)情報を整理・比較する
ベン図

ベン図は、複数の情報を比較したり整理したりするために使える思考ツールです。複数の円を重ね合わせ、それぞれの共通点と相違点を整理します。
授業での活用例:
理科:「動物の細胞」と「植物の細胞」の共通点と相違点を整理する
社会:「衆議院」と「参議院」の違いを比較する
ポイント: 比較・対照が目的の単元で、効果を発揮します。
ピラミッドチャート

ピラミッドチャートは、メインテーマを頂点に置き、それを構成する要素を階層的に整理していくツールです。
授業での活用例:
国語:文章の要点(結論)を頂点に置き、その根拠となる具体的な文章を下の階層に配置して要約する
社会:歴史上の出来事の主な要因と、それに付随する複数の要因を構造化する
ポイント: 物事の構造や要点を論理的に把握する時に役立ちます。
目的(3)原因分析・多角的な検討
フィッシュボーン図

フィッシュボーン図は、問題の原因を分析するために用いられるツールです。解決したい課題を魚の頭に置き、解決を妨げている要因となっていることを背骨から伸びる大きな骨に、さらにその原因を小骨に書き出していきます。
授業での活用例:
社会:「なぜ地球温暖化が起きているのか?」という問題を設定し、原因を多角的に分析する
特別活動:クラスの問題(例:忘れ物が多い)の原因と対策を考える
ポイント: 一つの問題に対する複数の原因の構造を視覚的に理解させることができます。
PMIチャート

PMIチャートは、あるテーマに対し、「P=良い点(Plus)」「M=悪い点(Minus)」「I=興味深い点(Interesting)」の3つの視点で意見を書き出すツールです。物事をさまざまな視点から分析するために使います。
授業での活用例:
道徳:「AIの進化」というテーマの是非を、多角的な視点から検討する
社会:「レジ袋の有料化」のメリットやデメリット、今後の課題を考える
ポイント: 安易な二元論に陥るのを防ぎ、物事を多角的に捉える訓練になります。メリットとデメリットだけでなく、「I=興味深い点」を設けているのが特徴です。
授業に思考ツールを導入する際の3つのコツ
思考ツールを有効的に活用するためには、導入のしかたが重要です。
1.ツールを使う目的を説明する
いきなりツールを導入すると、生徒は「ツールを埋めること」自体を目的にしてしまいます。「アイデアを広げるためのものだから、とにかくたくさん出すことを意識しよう」など、使う目的と注意点を伝えることが大切です。
2.先生自身が「手本」を見せる
生徒にやらせる前に、先生自身がスクリーンや黒板で「こうやって使うんだよ」と、思考のプロセスを実演して見せることが重要です。
3.「書くこと」自体を褒める
思考ツールに「正解」はありません。「たくさんアイデアを出せたね」「面白い視点だね」など、アウトプットの質ではなく、思考しようとした姿勢そのものを評価しましょう。
思考ツールは、生徒の「考える力」を育てる相棒である
思考ツールを正しく使えば、生徒の思考を整理し、深め、新たな気づきを与える最高の「相棒」になります。今回紹介したツールの中から、まずは一つ、明日の授業で試してみてはいかがでしょうか。生徒たちの目が輝き、対話が活発になる。そんな変化が見られることを願っています。
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