「生徒の問題行動が起きてから対応するだけで、毎日が精一杯…」
「自分の指導は、本当にこの子のためになっているのだろうか?」
日々、子どもたちと真剣に向き合う先生方だからこそ、このような悩みを抱える瞬間があるのではないでしょうか。
本記事では、生徒指導提要をもとに、教師が使える生徒指導のポイントを解説します!
なぜ今、生徒指導で「4つの視点」が重要なのか?
現代の子どもたちを取り巻く環境は、私たちが想像する以上に複雑化しています。このような状況の中、従来の「何か問題が起きたら対応する」という生徒指導だけでは、対応が後手に回り、根本的な解決に至らないケースが増えています。
この4つの視点は、場当たり的な指導から脱却し、すべての先生方が一貫性と見通しを持って子どもたちと関わるための「羅針盤」となるものです。この記事では、生徒指導の根幹をなす「4つの視点」を解説し、明日からすぐに現場で使える具体的な実践例までご紹介します。
こうした背景から、2022年12月に文部科学省が改訂した『生徒指導提要』では、これからの生徒指導のスタンダードとして「4つの視点」が明確に示されました。
- 自己存在感の感受
- 共感的な人間関係の育成
- 自己決定の場の提供
- 安全・安心な風土の醸成
生徒指導の4つの視点とは?それぞれの関係性と全体像
生徒指導の4つの視点は、それぞれが独立しているのではなく、相互に深く関連し合っています。
この4つの視点は、「④安全・安心な風土の醸成」という土台の上に成り立っています。心理的に守られた環境があって初めて、子どもたちは自分自身や他者とポジティブに関わることができるのです。
それでは、各視点を詳しく見ていきましょう。
①自己存在感の感受|「ここにいていい」と思える居場所づくり
生徒が「自分はクラスに必要な存在だ」「先生や仲間は自分を認めてくれている」と感じられることです。単に褒めるだけでなく、一人ひとりの個性や頑張りを具体的に承認し、役割を与えることで育まれます。自己存在感は、すべての学習活動や社会性の基礎となる自己肯定感に直結します。
具体的な取り組み例:
- 全員に何らかの役割を与える「一人一役」活動
- 生徒の良いところを見つけて伝える「メッセージカード」
- 発表や作品を必ず掲示・紹介する機会をつくる
②共感的な人間関係の育成|他者と心で繋がる力を育む
自分の気持ちを適切に表現し、同時に、相手の気持ちや立場を想像して理解しようとする関係性を育むことです。ペアワークやグループでの協同学習、対話的な活動を通して、多様な価値観に触れ、互いを尊重する態度を養います。
具体的な取り組み例:
- ペアやグループでの話し合い活動(アクティブ・ラーニング)
- 相手の話を真剣に聞く「傾聴トレーニング」
- 道徳や特別活動でのロールプレイング
③自己決定の場の提供|「自分で選ぶ」経験で主体性を引き出す
生徒が自らの意思で「どうするか」を選び、決定する機会を意図的につくることです。小さなことでも自分で選んだという経験は、「やればできる」という自己効力感と、その決定に対する責任感を育みます。教師の役割は、答えを与えることではなく、生徒が最善の選択をするためのサポーターになることです。
具体的な取り組み例:
- 行事や係活動の企画・運営を生徒に任せる
- 複数の選択肢から学習課題や調べ方を生徒自身が選ぶ
- 学級目標やルールを生徒たちの話し合いで決める
④安全・安心な風土の醸成|すべての活動の土台となる心理的安全性
失敗しても非難されず、安心して自分の意見を言える。いじめやからかいがなく、誰もが尊重される。そうした物理的・心理的な安全性が保証された環境です。これは他の3つの視点を実現するための大前提であり、教師が最も力を注ぐべき土台づくりと言えます。
具体的な取り組み例:
- いじめは絶対に許さないという毅然とした姿勢と明確なルール
- 失敗を「学びのチャンス」と捉えるポジティブな声かけ
- 定期的なアンケートや面談による悩みや不安の早期把握
【ケース別】4つの視点を活かす生徒指導を解説!
Case1 :なかなかクラスに馴染めない生徒へのアプローチ
状況: いつも一人で本を読んでいて、グループ活動にも消極的なAさん。
ベストな生徒指導:
【④安全・安心な風土】 まずはAさんが一人でいても安心して過ごせる環境を保証する。無理に輪に入ることを強要しない。
【①自己存在感の感受】 Aさんの読書への興味を承認し、「今度、どんな本を読んでいるか先生にも教えてね」と声をかける。図書係など、Aさんの得意を活かせる役割を提案してみる。
Case2:意見が対立し、険悪になるグループ活動
状況: BくんとCさんの意見が対立し、話し合いがストップしてしまった。
ベストな生徒指導:
【②共感的な人間関係】 教師が仲裁に入るのではなく、「まずはお互いの意見を、否定せずに最後まで聞いてみようか」と促す。それぞれの意見の背景にある「想い」を想像させる。
【③自己決定の場】 「二人の意見を両方活かすアイデアはないかな?」と問いかけ、対立を乗り越える第3の案をグループ自身で考えさせる。
Case3:すぐに「わかりません」と諦めてしまう生徒への関わり
状況: 難しい課題に直面すると、すぐに思考を停止してしまうDさん。
ベストな生徒指導:
【③自己決定の場】 「全部できなくていいよ。この中のどれか一つなら、できそうかな?」と課題をスモールステップに分解し、自分で取り組む問題を選ばせる。
【①自己存在感の感受】 一つでもできたら、「すごい!一番難しいところを自分の力で解けたね!」と、プロセスと結果を具体的に承認し、成功体験を積ませる。
まとめ
本記事では、子どもの内面的な成長を支える、新しい生徒指導の「4つの視点」について解説しました。
- 土台は「安全・安心な風土」づくりから。
- 「ここにいていい」という「自己存在感」を育む。
- 他者を尊重する「共感的な人間関係」を育てる。
- 「自分で選ぶ」経験を通じて「自己決定」の力を伸ばす。
これらの視点を意識することで、先生方の生徒指導は、より本質的で、子どもの未来に繋がるものへとアップデートされるはずです。
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