隂山英男プロフィール
1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。
百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。
過去、文部科学省中央教育審議会教育課程部会委員、内閣官房教育再生会議委員、大阪府教育委員会委員長などを歴任。2006年4月から2016年まで、立命館大学教授。
現在、隂山ラボ代表。隂山メソッド普及のため教育クリエイターとして活躍し、講演会等を実施するほか、全国各地で教育アドバイザーなどにも就任、子どもたちの学力向上に成果をあげている。
著書:「 子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい」(SB新書)
「だから、子ども時代に一番学習しなければいけないのは、幸福です」(小学館)
「学力は1年で伸びる!」(朝日新聞出版)
「隂山メソッド たったこれだけプリント」(小学館)
「しゃべって覚える小学生の英会話Talking Time シリーズ」(学研教育出版) 「隂山手帳」(ダイヤモンド社)・・・他多数
勉強する意味とは
みなさんは、勉強する意味をどのようにとらえているでしょうか。子どもの頃は言われたままに勉強していた方も多いかと思いますが、いざ自分の子どもに「どうして勉強しなくてはいけないの」と聞かれたときに答えに困った方も多いのではないでしょうか。それなりに勉強をしてきた経験のある方であれば自分の中で答えは出ていると思いますが、なんとなく勉強しろと言っている場合などは特に困るでしょう。
これに対する筆者である僕の答えは「勉強しなければ将来の道が開けないから」というものです。実際、学校の勉強で習うことの大半は、実際の社会では使わないことがほとんどでしょう。二次関数の放物線の描き方がわかっていて得したことがあるでしょうか?古文漢文が読めるからと言って一目置かれた経験がありますか?
これらは、考える力を育むためのツールであると僕は考えています。これらの単元にまっとうに取り組むことができたか否かで、その人物が「目の前の物事にどれだけ全力で考えることができるのか」をある程度測ることができます。だからこそ、受験勉強による学歴社会はある程度正常に機能しているのだと思うのです。
すなわち、繰り返すようですが、勉強する理由とは、「勉強しなければ将来の道が開けないから」であり、勉強すらもできない人間には、そもそも未来へ進んでいく資格が与えられないからなのではないでしょうか。
とはいえ、何の社会人経験もない僕が言っても説得力のないことばかり。もっと教育について深く考えていらっしゃる方は、どのように考えているのでしょうか。本日は、「どうして子どものころから勉強しなくてはいけないのか」という問題に対して、児童教育の大家である隂山英男先生にお話を伺ってまいりました!
「勉強ができない子」の落とし穴
「勉強ができない子どもってね、難しいことができていないんじゃないんです。簡単なことができていないんです。たとえば、分数ができていない子は分数がわかっていないのではなくて、計算がそもそもできてないだけ。2+3はわかるけども7+6は分からないとかね。9+2は11って繰り上がりができても8+7はできないとか」
いわゆる「勉強ができない子」の弱点はどこにあるのか。隂山先生は、その原因を小学校の初等教育で習うような四則演算にあるといいます。8+7や6+9などの簡単な繰上りを伴う計算が満足にできていないからこそ、その先の計算ができなくなっているというのです。
たしかに、これについては筆者も一理あるように感じます。というのも、自分自身が小学校時代に7+8や9+6などの計算で多少つっかえてしまった思い出があるからです。これらの計算に対してスラスラと解けるようになってからは不自由を感じることなく進んでいくことができましたが、これらの簡単な計算にこそ算数や数学の神髄が隠れているように思えてなりません。
隂山先生の指摘によれば、問題によっては、これを読んでいるであろう読者の方でも取りこぼす可能性があるといいます。大人なら自分はできると思っているかもしれませんが、百ます計算をやって2分を超えてしまったらだいぶマズい状況にあるというのです。
隂山先生が百ます計算を推奨していらっしゃる理由はここにありました。繰上りを伴う簡単な四則演算でつっかえてしまうのならば、個別の計算を丸暗記してしまうほどに何度も反復練習することによって、まずは体にしみこませるという考えのもとに行われていたのです。
「暗記は良くないよ、考えようって人たちがいるのもよくわかってます。でも、彼らはインドの人たちが二桁の計算まで暗記しているってことをバカにはしませんよね。むしろ、インドの人々のやり方を賞賛している。それって矛盾ですよね。どうしてこんなに無茶苦茶な議論をするんだろうと不思議になります。自分自身がたくさん暗記していい大学に行っている人に限って『これからは計算機があるから計算なんていらない』っていうんですよ。でもこれは大きな間違い。勉強とは『集中するトレーニング』なんです」
隂山先生は、数学や国語の問題を集中するためのツールにすぎないと断じます。その理論によれば、難しい問題をだらだらとやっていても集中することはできないのだから、意味がない。それどころか、だらだらと勉強することは、勉強ができなくなるためのトレーニングなのだといいます。だからこそ、同じ漢字を何度も書かせることもまた、学習ではないのだそうです。
その隂山先生おすすめの勉強法は、ずばり冬休み集中勉強法。冬休みならば親が大抵家にいますし、お子さんも寒くて外に遊びに行きませんよね。ですから、5日~6日程度のまとまった時間を家庭学習に充てることができるようになります。夏休みだと長すぎます。春休みだと学年替わりの時期ですから、もう次の学年の予習をすべきなのです。だからこそ、基礎を固めるには冬休みの間に頑張ることが重要だといいます。
さらに、隂山先生は冬休み明けに行うテストの問題を、あえて明らかにしたうえで、親御さんに問題を渡してしまうのだそうです。そうすることで、先生が指導しなくても親御さんの方で勝手に勉強を指導してくれるようになりますし、子どもたちも試験範囲がわかっているからこそ、高得点を取るために勉強するようになります。だから、隂山先生のクラスでは常に高得点が期待できるのだそうです。
学習は家庭で自立して進めるべきだ
隂山先生に言わせれば、学習は家庭で自立して進めていくべきなのだといいます。長く時間をかけることで、集中力はどんどん落ちていきます。大事なことは、ダラダラと勉強させることではなく、短い時間でサッと集中して勉強を終わらせてしまうような生活習慣にあるのだそうです。
生活習慣を整えて、読み書き計算をしっかりと鍛える。そのうえで、他人や塾、学校に頼らず、家庭で学習を積むことができる基礎をしっかりと固めておく。これこそが、隂山先生の言う学習の根幹でした。
先生はこれから、子どもたちの学習時間を減らしていくような活動がしたいとおっしゃっています。長く勉強するのではなく、短い時間で集中して終わらせてしまって、余った時間は外を駆けまわったり、家族旅行で博物館や美術館に行ってのどかで幸せな時間を過ごしたりしてほしい。なぜならば、勉強とは、これらの幸せを実現していくための手段に過ぎないからです。
自分自身が何か知性を追いかけることを見つけてほしい。インタビューの中で隂山先生はそうおっしゃっていました。確かに、これからの人生を生きる中で、知性を追いかける習慣を身に着けることができれば、一生勉強し続ける習慣もまたできるようになるでしょう。こうして、人生を豊かにしていく手段を身に着けてほしいと思います。
最後に、隂山先生より、子どもの将来のために今できることについて伺いました。
「それは、子ども時代を幸せにしてあげることです。成功と幸せは違います。時に、成功は幸せを壊すこともありますから。幸せを学んでこそ、実りある生活に繋がってきます。スティーブジョブスも、最後病室の中で死を待つ時に『自分の得た成功や資産も今となっては何も価値がない』と振り返ったそうです。『ただ自分の傍にいてくれる家族や知人と過ごすことが最後に得たものである』と。
いま日本人は幸せを捨てて成功しようとしているのではないでしょうか。僕が提唱するのは、学歴などではなくて、その子がすくすくと伸びるためのこと。子どもにアンケートを取ったときの悩みって一番はずっと学習なんです。
だからこそ、朝から晩まで力のつかない努力を続けさせられて、やってもやっても成果があがらない。基礎はただできるというレベルでは実効性がないのです。基礎ができたら応用問題をする、というのではなく、盤石な基礎にする。低学年でも百ます計算は2分でやるべきというのは、その具体的な方法なのです。隂山メソッドと言われ、独自の成果を上げている理由はそこにあります。
盤石な基礎があれば、応用問題もいずれ自在に解けるようになり、自信となります。そして、それが学習意欲のみならず、未来を切り開く主体性となっていくのです。こういったことを皆さんに知っていただければと思います」
いまの学習を通じて、未来を切り開く主体性を培ってほしい。そのような思いが込められた隂山メソッドによる指導法。みなさんも、ぜひお手に取られてはいかがでしょうか?
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