はじめに
それは、3年前のある日のこと。
自分は文英堂の編集者Y氏と、公私共に交流のあるカルタ名人の粂原圭太郎さんに呼び出された。
そしてこう言われた。
文英堂Y氏
「西岡さん、中学5教科の勉強法の本を作りますしょう!5人の著者集めて、ゴレンジャー!みたいな感じで!」
俺
「……。」
あー。
また俺はとんでもないことに巻き込まれるのかぁ、とぼんやりと思った。
話はこうだった。
・新進気鋭の教育者を5人集めて、中学5教科の参考書を作りたい!
・若い著者たちが、自分達の経験を活かして、「できない子」がジャンプアップできるようなシリーズにしたい!
そして、粂原兄貴はこう言った
粂原兄貴
「メンバーはまだ決まってないんです。国語は自分で、他の科目の著者は、西岡さんが考えていいですよ!」
文英堂Y氏
「粂原さん西岡さんは確定で、あとのメンバーは西岡さんがお声がけをお願いします」
俺
「え、俺が考えるんですか!?」
粂原兄貴
「だって西岡さん、人脈とかあるじゃないですか!」
文英堂Y氏
「このシリーズは、『若くて勢いのある、これから教育業界で活躍していくような著者』を集めたいんですよね。私も予備校の先生とかはツテが多いんだけど、でもそういう人じゃない人がよくって。」
粂原兄貴「西岡さんが思う、『若くて勢いのある、これから教育業界で活躍していくような著者』を探してきてくださいよ!」
俺
「(粂原兄貴ってホント、昔から仕事全部投げるよなぁ……。)」
まあ大恩のある粂原兄貴に言われたら断れない俺は、この仕事を承諾することにした。
粂原兄貴
「国語は僕で、西岡さんはスタディサプリの講師もやっているから、社会かな?」
俺
「まあ、そうですね。英数と理科ですね。しかし、『参考書作り』という大役、誰に頼みましょうね……。」
ということで、そんなこんなで俺は「中学のきほん」シリーズの人探しをすることになったのだった。
①英語担当は秒で決まる
まず最初のメンバーは、僕の中では秒で決まっていた。
僕は都内某所の行き慣れたオフィスに行って、『彼』にこう言った。
俺
「……っていうことで、英語は君だ、すばるくん!よろしくね!」
すばるくん
「えっ!?なんの話!?」
そう、西岡壱誠と同い年で、同じ大学で、一番仲の良い経営者友達である、Youtubeチャンネル「PASSLABO」責任者、32.5万人の生徒を持つ宇佐見天彗くんである。
俺
「かくかくしかじかで、英語は君に任せた!大丈夫大丈夫!なんとかなるから!」
すばるくん
「いや、ええ!?なんでいきなりそんな!?っていうか考えさせる時間を……。」
と、最初は当たり前のように彼はごねた。
まあ当然である。参考書を書くなんて、とんでもなく大変な作業だからだ。彼も何冊も本を作っているが、その度に「本作るのって大変!」と漏らしていたことを僕はよく知っていた。
俺
「まあでも、君以上の適任はいないから、断ってもやってもらうつもりなんでよろしく!」
すばるくん
「断っても!?」
すばるくんが押しに弱いことは知っているので、強引に突破しようとする俺。そんな俺に彼はこんな風に言った。
すばるくん
「でも僕、英語って元からそこまで得意だったわけじゃないし、中学の参考書なんてやったことないし」
さすがすばるくん。プロとして、しっかりと読者のことを考えているなぁ、と思った。
だがここまでは想定内だ。
俺
「だからこそだよ。今回の本は、『できない子』がジャンプアップできるようなシリーズを作ることを目的にしているんだ」
すばるくん
「できない生徒を?」
俺
「そうだよ。宇佐見くんがもとからできた科目ではなく、英語という、昔の宇佐見くんも含めてみんなが苦手とする科目で、宇佐見くんには本を作ってもらいたいんだ」
すばるくん
「……。」
俺
「一緒にドラゴン桜の監修をやった時から、宇佐見くんは『できない子が自分の意思で成績を上げて羽ばたくこと』を支援したいんだって言ってたじゃん。だから今回の企画、俺の中ではすばるくん以外の適任はいないんだよ」
この一言が決め手になったのかはわからない。
だが、彼はその後、承諾の連絡をくれた。
こうして、英語をやってくれる人が見つかったのだった。
②数学担当は結構悩む
英語:宇佐見先生
国語:粂原先生
社会:西岡
ということはとんとん拍子で決まったわけだが、その後の数学と理科は悩んだ。
俺
「参考書作りって大変だしなぁ……。」
本を作るのは大変だ。
それも、参考書作りは大変さのわけが違う。教科書も読み込み、入試問題も読み込み、他の参考書も読み込み、解説も問題も、全部1から作らなければならない。その大変さを考えると、任せられる人は限られてくる。教育に対して情熱がある人でないと、おそらくはできないだろう。
そして、宇佐見先生や粂原先生なんていうビッグネームと肩を並べてもらうわけだから、きちんと名前のある人を選ばなければならない、という思いもあった。
俺
「あ。そういえば……。」
そんな時に、俺の周りに、一人、教育に対して熱い思いを持っている現役東大生がいることを思い出した。
教育学部所属、「計算の申し子」と言われ、書籍も出している数学マスター。
カルペ・ディエム所属、永田耕作くんである。
永田くん
「数学って、本当はとっても楽しいのに、計算が遅いからとか、数字アレルギーだからとか、そんな理由で嫌いな人が多い科目なんですよね」
永田くんはよく、そんな風に言っていた。
俺
「確かに、5教科の中で一番、『苦手な人が多い』科目な気がするね」
永田くん
「そうなんですよ。でも、世の中には数字ってありふれているじゃないですか。時計だって12進法だし、割引の商品は買うし、勾配の急な坂だって登るんですよ」
俺
「世の中は数字でできている、ってわけか」
永田くん
「だから俺は、小さい時から数学嫌いにならないような参考書を作ってあげたいんですよね。それが僕の夢なんです」
俺
「ふーん」
そういえば、そんな会話をしていたのを思い出した。
そして僕は、LINEを送ることにした。
『なんで直接言わないのか』って?重要なことって直接言いにくくないですか?(そうやって女の子にLINEで告白してフラれた経験があるのは内緒)
『永田くん かくかくしかじかで、中学数学の参考書を作る気はないだろうか。宇佐見さんとか粂原さんみたいなビッグネームと肩を並べることになるからプレッシャーもあるし、参考書作りってやったことないと思うけどめっちゃ大変だしで、無理強いはしないんだけど……。でも、君の想いを世の中に発信する、いい機会だと思うよ』
と送信。
そして送信と同時に眠りに着く。なぜなら返事が怖いから。(俺が女の子に告白した時もそうだった。朝起きたら振られてたけど)
夢の中で、ドラゴン桜の初代編集の佐渡島さんの言葉がフラッシュバックしていた。
佐渡島さん
「いいか西岡。本を出す、というのは英語で『publishing』と言うな。これが何を意味をするかわかるか?」
俺
「サー!わかりません!サー!」
佐渡島さん
「『public=公的なものにする』ということだ。私的で、公開しなければずっと秘匿され続ける情報を、公的なものにして、世の中の多くの人が触れられる状態にするということだ。そう言う意味で、出版には力がある。世の中を変える力が、な」
そういえばそうだった。本を作るというのはそういう意味があるんだった、と思いながら、目が覚める。
朝になっていて、LINEが一件、届いていた。
永田から、短く。
『やります』
と。
③理科担当は、意外なところに。
ということであと1人になったわけだが、最後の一人探しは難航した。断られたりもしたし、連絡が付かない人もいた。
俺
「理科どうすっかなー。」
文英堂Y氏
「そういえば西岡さん、この人知ってます?」
そう言って、Y氏は一冊の本を見せてきた。
それは、『元バカによるバカのための勉強100カ条!』という本だった。
俺
「あ!知ってます!阪大卒のYoutuberで、『積分サークル』とか『はなおでんがん』ってチャンネルの、でんがんさんですよね。さすがに俺ら世代だったら知らない人いないですよ」
文英堂Y氏
「この人、理系なんですよね?いけないですかね?」
俺
「あーー、どうだろう?」
コンセプトはすごく合致していた。今回の、『できない人をできるようにする』ということには、これ以上なくマッチしていたと言えるだろう。
でも、Youtuberだし、忙しそうだし、、、
俺
「まあでも聞いてみなきゃわかんないっすね!じゃあ聞いてみましょう!」
そういって聞いてみたところ。
でんがんさん
「いいよ」
俺
「いいの!?」
まさかの快諾された。正直めっちゃビビった。
後から、こっそりでんがんさんに聞いてみた。
俺
「でんがんさん、なんで受けてくださったんすか……?本作っている人だから、大変さもわかっているでしょうし……」
そしたらまさかの答えが返ってきた。
でんがんさん
「だって、おもろそうやったし」
俺
「おもろそう!?」
でんがんさん
「俺、おもろいかおもろくないか、もっといえば『おもろいと自分が感じられるかどうか』でしか動かへんねん」
俺
「は、はえー」
俺は「これが、長くYouTube業界の最前線で活躍する人の『強さの源泉』なのか」、と一瞬で理解させられた。
他人や、世間一般の価値基準では動かない。
自分の直感・価値観を信じ、自分の価値基準の中で、物事を判断する。
そういう人は、多くの人から信頼される。
俺
「俺もしっかり、こういうところ学ばないとなぁ」
なんて思ったのだった。
かくして、5人の著者がそろったのだった。
④自分達の経歴を、しっかりと語る
文英堂Y氏
「今回の本は、『著者五人の徹底解剖』がしたいです」
5人揃った後、文英堂Y氏はそういった。
俺
「徹底解剖?」
文英堂Y氏
「そうです。このメンバーは、全員、元から超できたわけではなく、挫折し、苦悩し、その科目と向き合ってきた人たちです」
なるほど、と俺は思った。
「元バカ」の俺とでんがんさん。地域の教育格差を乗り越えてきたすばるさん・永田くん・粂原さん。いろんな挫折を経て、それぞれの担当科目と向き合ってきた過去がある。
文英堂Y氏
「そんな著者たちの経験は、多くの『できない子』に希望を与えると思います。『自分でもできるかもしれない』と思ってもらえるはずです。特に、年齢も子供たちと近いみなさんなら」
そんなY氏の想いもあり、このシリーズでは全員の勉強遍歴が描かれるようになった。
俺
「……ん!?ってことは俺、偏差値35で英語3点で教師に反抗してグレて髪染めてたことも書かなきゃなんないの!?」
永田
「西岡さんそんなことしてたんですか……。」
そんなこともありながら。
結構な執筆期間がかかり、Y氏が死にそうになりながらも。
なんとか書籍が完成したのだった。
この前、その打ち上げとしてでんがんさんと5人でドライブに行った。
「いやー大変だったねー」「すごい時間かかったねー」と口々に言ったのだが、不思議と、「もうやりたくないね」とは誰も言わなかった。
全員が、この本が書店に並んで、世の中のどこかの一角が変わることを、楽しみにしていた。
俺
「(……そうだよなぁ。出版って、そういうものだよなぁ)」
世界はそう簡単には変わらない。
ドラゴン桜が流行ったからって、ドラゴン桜が当たり前の世の中にはならなかった。本一冊で世の中が変わるほど、世界は甘くはない。
だが、この5人がこうして集まって、中学の参考書を作ったというのは、何かの意味があって、誰かの人生を変えるんじゃないか。
俺
「(……誰か1人でも、この本を読んで前向きになってくれれば、こうやってこの5人が集まったことにも意味ができるんだろうか……)」
なんて、考えて。
「この思いを、どこかで書いておこうかな」と思い。
今、この記事を僕は書いている。
というわけで、そんな思いを込めた5冊が、来たる8月4日に発売になる。
3年かかって作った本であり、自分一人の本ではないからこそ、みなさんにはぜひ、お手にとって欲しいと思う。
何かみなさんの人生を変えることができる要素があれば、こんなに嬉しいことはない。
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