小学校で活躍されている先生方に大学生がインタビュー!
お仕事の内容や学生時代からの歩みなど、ここでしか聞けない内容を盛りだくさんでお届けします。
今回は、池田市立神田小学校で勤務をされている 樋口 綾香(ひぐち あやか)先生にインタビューをしました。学校現場で働く教師として、国語教育の醍醐味、ICTツールとの向き合い方、教師という職業についてなど、貴重なご経験をもとに学校現場のリアルなエピソードをお話いただきました。

樋口 綾香 先生
池田市立神田小学校教諭。
大阪教育大学附属池田小学校で「読解力・表現力を育成する多読を基にした言語活動のカリキュラム開発(「科研費奨励研究16H10516」や「シンキングツールを取り入れた構造的板書による読解力・対話力と情報活用能力の研究(科研費奨励研究17H00095)」)などに取り組み、現在は大阪府公立小学校に勤務。
Instagram(リンク:@ayaya_t_)ではで自分の授業を磨くために板書や授業のリフレクションを発信し続けている。関西国語授業研究会、授業力&学級づくり研究会所属。
著書に『子どもの気づきを引き出す!国語授業の構造的板書』(学陽書房)などがある。
国語は「すべての教科の土台」となる科目
–本日はよろしくお願いします!樋口先生は国語の先生でいらっしゃいますが、
授業を行う際にどのようなことを意識しているかお聞きしたいです。
国語の目的は「言葉の力を育むこと」。だからこそ、すべての教科の土台になる教科だと思っています。
国語を一年間しっかり学ぶことで、子どもたちの語彙や表現力はぐんと豊かになります。一方で、学びの機会を逃すと、言葉の力の差が如実に表れるという、差が生まれやすい教科でもあるといえます。
私は「豊かな言葉を育てること」を大切にしています。
そして、もう一つ大事にしているのが「違いを楽しむ」こと。「違い」とは、「一人一人の感じ方の違い」や「一つの言葉から読み取れる意味の違い」です。言葉や作品について考えるときに、人と同じことに安心するのではなく、「違い」そのものを面白がってほしいと思っています。
–ありがとうございます。具体的に「違いを楽しむ」ためにどういったことをしているのでしょうか?
たとえば、小学校2年生の文学教材『みきのたからもの』を扱った授業では、主人公の性格や趣味などが書かれていないので、読者によって「みき像」が変わってきます。ここが違うを楽しむポイントです。
ある子どもが「主人公はAという性格なんじゃない?」と言ったとき、「なぜそう思ったのか?」と問い返します。「〇ページにこう書いてあるから、みきはこういった経験をしているから」など、根拠を持って話すことで、読みの深まりが生まれますし、他の子の意見にふれて「そんな見方もあるんだ!」と驚く場面もたくさんあります。
子どもたちの個性が自然と生かされ、互いの違いに触れることで、「違いって面白い」と実感できる授業になります。
いい授業を「真似してみる」こと
-なるほど。クラスの中でいろんな学びがありそうですね!
樋口先生は、授業研究を始めたのはどういうきっかけがあったからなのでしょうか?
教師を始めて5年目くらいのときですかね。
教師って後輩ができるのが早いんですよ、5年目ともなると10人以上いる状態で……。
自分自身もまだ自信がない状態なのに、後輩に何を教えていいのか分からなくて、そこで公開授業研究会に行ってみたんです。
その研究会でみた授業が大きなきっかけとなりました。
板書が美しく、先生の鋭い発言により児童が楽しそうに考えを広げながら参加している、そんな授業でした。
「追試」という優れた授業実践を真似してみる方法があるのですが、自分の授業で早速やってみたら、子どもたちから「今日の授業一番面白かった!」と反応が返ってきたんです。授業って頑張ったら頑張った分、子どもから返ってくるんですよね。
そこからさまざまな研究会に参加して、自分の授業づくりを深めていきました。
-追試という方法があるんですね!まずは「真似してやってみること」が第一歩につながりそうですね。
そうですね。体系化もされている概念で「追試実践のやり方」を発表している方もいます。真似することで、見えてくるものがあるのでおすすめです。ですが、そこで注意したいのは「表層的に真似するのではなく、どういう意図や目的があって、授業をしているのか理解すること」です。
意図や目的を理解した上で実践することで、どういう部分が、どう対応しているのかわかりますし、自分の中への落とし込みがうまくできるかもしれません。
-子どもたちの反応がすぐ出るというのも、やりがいがありますね。
子どもたちはとても素直ですよね。最近教科書に、はやみねかおるさんのミステリー小説が追加されたんですが、それを読んだ子どもたちが、「ごんぎつね」と似ている!と言い出したことがあったんです。
何が似ているのか聞いてみると、「一人称が一緒!」「人物の目線が一緒!」など、共通点を自分で見つけ出していたんですよ。中には「続きを書きたい」と言い出す子どももいて、子どもたち自身が授業を作っていました。
日々の学習の成果がしっかりでていると感じましたし、やはり学びを活かすにはアウトプットすることが重要だと再認識しましたね。
生成AIで「0→1」を作る
–樋口先生は、授業の中で生成AIやICTツールをどのように活用されていますか?
授業づくりで生成AIを活用していますしこれから必須になってくると思っていますね。
私は、生成AIを「0→1を作り出すツール」として使っていて、「1→10 に広げるのは自分」という使い分けでやっています。アイディア出しをAIに手伝ってもらって、そこからどう組み立てていくのか、どう発展させるのかは、自分で考えていくというやり方です。
ただし、どういう風に入力すればいいのか?相手によってどういう表現をすればいい?ということはだんだんと学んでいかなければならないことなので気をつけています。
ーなるほど。ICTツールについてはどうでしょう?
タブレット端末が一人一台配布されている今の時代、活用しないのは本当にもったいないと思っています。
たとえば、「自分の姿を見る→確認する→改善する」といった自己評価や振り返りが、動画や写真を通して簡単にできるようになりました。
タイマーを使って話し合いの時間を管理したり、共有フォルダで全員の意見を可視化したり、Jamboardやスライドでグループの考えを整理して発表したりと、学びの質を高める場面はたくさんあります。
子どもたちが主体的に学ぶための支えとして、ICTはとても大きな力になっています。
–逆に、ICT教育の課題点などはありますか?
私の学校は比較的早くGIGAスクール構想に取り組んでいたので、基盤が整っていたこともあり、スムーズにICTを活用できています。
ただ、準備なしに「とりあえず使ってみよう!」で導入してしまうと、ツールが遊び道具になってしまうことも。
だからこそ、使い始める前に、想定される課題や使い方のルールをきちんと整備することが必要です
働きたい先生が、働ける仕組みに
–では最後になりますが、小学校や中学校の先生って大変だというイメージがあるかなと思います。樋口先生ご自身はどうお考えでしょうか?
やっぱり、楽な仕事ではないと思います。子どもからしたら若くても先生は先生です。でもサポートもそれほど多くはない状況です。
子どもだけではなく、その倍の数の保護者とも向き合っていく必要がありますから、精神をすり減らしてしまう方もいると思います。
そういう意味では、教員は大変と感じますが、結局そこはどの職業でも同じかなと思っていますね。先生によって得意なところが違うので、それをいかしていくと面白くなると思います。何かしら目標をもって取り組むことが大事だと思っています。
–なるほど。では教育現場にはどのような課題があると思いますか?
中堅の先生になってくると、子育てや介護などのプライベートの問題が出てきます。
そのような状態で病欠など欠員がでると、学校では今、プラスで人が来ることはありませんから、各先生の割り振りが増えるだけになってしまいます。
ただ、教育免許自体はもっている人がたくさんいます。非常勤は一つの解決手段として導入すると良いかなと思いますね。担任はちょっと……と思っているけど、授業をやってみたい!など、働きたい人たちが働ける仕組みがあると良いと感じます。そういう点で、非常勤が充実するといいなと思っています。
樋口先生、ありがとうございました!
公式サイトにて、カルぺ・ディエムが提供している具体的なサービスを紹介中!
カルペ・ディエムでは、学校や保護者のみなさまが抱える懸念やニーズに応える形で、講演・講座・ワークショップを提案し、それらを実施しております。
生徒の皆さんの大学選びや学部選びのワークショップ、モチベーション向上を目的とした講演、独自の探究学習授業、長期休暇中の学習合宿、難関大学合格を目指した通年プロジェクトなど、さまざまなプランをご用意しております。
私たちの講師は現役東大生で 偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠をはじめ、地域格差や経済格差などの多様な逆境を乗り越えた講師たちが、生徒の皆さんに寄り添って全力でサポートいたします。
ご質問やご相談だけでも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。