大西陽介先生にインタビュー!〜ICTを活用した「学期単位の自由進度学習」への挑戦〜

今大活躍中の先生方に大学生がインタビューする企画「先生100人インタビュー」。お仕事の内容や学校外での活動など、ここでしか聞けない内容を盛りだくさんでお届けします!

今回は、愛知県の中学校で教員をされている大西陽介(おおにし・ようすけ)先生にインタビュー。タブレットを使って「MBL(Mission based learning)」を実施している大西先生に、生徒に合わせたICT教育や、教育現場の課題について、お話を聞きました!

大西 陽介(おおにし・ようすけ)先生

〈ご経歴〉

教育×AI・ICTサポーター/アドバイザー
公立中学校の非常勤講師として教職を続けながら、ICTと生成AIを活用した働き方・授業づくりを学べる「A1教育カレッジ」を運営。英語授業におけるICT活用を研究する「ICTを学ぶ会(Spice English)」ではメインアドバイザーを務める。各地でセミナー開催や校内研修の講師も務め、学校現場でのICT授業・生成AI活用を支援。「温故知新」をモットーに教育アップデートを支援している。

目次

MBL(Mission based learning)とは

ー大西先生は、タブレットを使って個別進度学習を完全に実現していると伺いました。どのようなシステムを構築されているのでしょうか?

色々な方法を組み合わせています。その一つが、「Mission based learning(MBL/ミッションベースドラーニング)」です。生徒に与えたミッションを、好きな時間にクリアしてもらい、課題の提出は学期ごとにまとめてしてもらう方法です。

ー単元ごとの一般的な進め方ではなく、学期単位で自由進度学習を取り入れているのですね。

はい。それに加えて、ICTも活用しています。課題には、クイズレット、AI音読採点、AIドリルなどが含まれていて、生徒はこれらをクリアしていきます。

ーたくさんのICTツールを使うことで、生徒が戸惑ってしまうことはありますか?

そうですね。特に生徒がまだICTに慣れていないコロナ禍の初期には、「どのツールで何をすればいいのかわからない」と混乱することがありました。そのため、ラーニングマネージメントシステム(LMS)を活用して、生徒が迷わずに進めるように工夫しています。

ー具体的にはどのようなしくみですか?

Canvaを使って、ホームページのような学習システムを作りました。そのシステムの中で、生徒がリンクをたどりながら、自分で学習を進めることができます。順序通り進めていけば、自然と課題をクリアできるようになっています。

〈LMS〉

Learning Management Systemの略で、学習管理システムとも言われます。インターネットやパソコン/スマートフォンで学習を実施する際のベースとなるシステムで、多くのLMSでは受講者がログインして学習する受講機能、教員や管理者が受講履歴や成績管理を行う管理機能からなります。

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個々の学習ペースに応じた学習内容

ー例えば20個のミッションがあったとして、ノルマのようなものはありますか?

ノルマはありますが、全員が必ずクリアする必要はありません。例えば中学3年生でも、be動詞が理解できていない生徒もいます。そのような生徒には、学年相応のミッションよりも、基礎に戻って学習することを勧めています。

ーつまり、中学3年生の内容が理解できなくても、中学1年生の内容を復習していれば、それも評価対象になるということですね。

はい、その通りです。評価のしくみを工夫することで、個々の学習状況を適切に評価できるようにしています。ミッションの達成度自体は「主体的に学ぶ態度」として評価しています。粘り強くやり切った生徒も、計画性を持って進められた生徒も、どちらも評価の対象となります。

ー逆に、学習進度が早い生徒の場合はどうでしょうか?

どんどん先に進んでもらいます。中学1年生で中学3年間分の単語をすべて覚える生徒もいます。そうした生徒には、英会話や英検の勉強など、さらに高度な内容に挑戦してもらいます。

ータブレットには中学3年生までのカリキュラムが収録されているとのことですが、それ以降の内容についてはどうでしょうか?

高校の内容は収録されていません。中学校では、中学校の内容をしっかりと理解することが重要だと考えています。ミッション以外にも、ディベートやプレゼンテーションなどのプロジェクト学習も取り入れています。

ー生徒は中学1年生からこのシステムにスムーズに適応できますか?

実は、その点が今の教育現場の大きな課題となっています。小学校で自由進度学習を経験している生徒と、していない生徒の差は大きいです。そのため、中学1年生では、学び方のトレーニングにも力を入れています。

ーMBLが合わない生徒もいますか?

一定数います。先生に直接教えてほしいという生徒や、自主学習に馴染めない生徒もいます。そうした生徒には、個別の指導やサポートを提供しています。

ファシリテーションの重要性

ーたとえば先生は、Canvaでどのような課題を出されていますか?

現地の観光局に届けて活用してもらうために、修学旅行で訪れる観光名所のポスターを英語で作成する課題を実施しました。また卒業課題として昨年度まで、担任の先生に(日本語では恥ずかしくて言えない)感謝を伝えるための学級ムービーを作成させていました。今年は、メッセージソングアルバムを作成しています。生徒が作詞し、AIが作曲と歌唱を担当します。

ーこのシステムの改善点などはありますか?

はい。当初は、初任者でも同じ成果を出せるようにと考えていましたが、実際には先生のファシリテーション(生徒が学習をスムーズに進めるために先生がするサポート)が非常に重要であることがわかりました。先生のコミュニケーション能力や生徒との距離感の取り方などが、学習成果に大きく影響します。

ーファシリテーションのコツはありますか?

私は、生徒に言葉をかけるタイミングが重要だと考えています。全てをすぐに伝えるのではなく、生徒が困った時や助けを求める時に響く言葉を伝えるようにしています。それが生徒の成長に繋がると感じています。

ー大西先生、貴重なお話をありがとうございました!


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この記事を書いた人

早稲田大学商学部2年生。イノベーションとデザインに興味がある。好きなことは実家の犬とひなたぼっこ。

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