東洋経済オンラインで、数学の魅力について解説する『東大式「新・教養としての数学」』を連載中の現役東大生永田耕作さんに、「東大算数」を読んだ感想を教えてもらいました。
数学に対する苦手意識はどこから?
数学という科目は、英語・国語・数学・理科・社会という主要な5科目の中で一番、「得意な人とそうでない人がはっきり分かれる科目」だと言われています。実際、僕は多くの学生に数学を教える機会が多いのですが、やはり苦手意識のある人は本当に苦手で、そういう生徒の心を開くのはとても大変だと感じています。
でも一体、どこからその差が生まれているのか?
数学が得意な人とそうでない人では、どこから差が生まれてしまうのか?
これについて、「東大算数」の著者は、その理由を「小学生の算数にある」と述べています。
この文を読んだ時、自分は「確かに自分もそうだった」と思いました。
自分は数学がとても好きだったのですが、その理由や原点を考えてみると、やはり小学生時代に数でずっと遊んでいた経験があると思いました。自分は小学生に上がる前から電卓を首にぶら下げて遊んでいたような子供で、その世界にどっぷりと浸かっていた記憶があります。日常生活の中にある数字を見て、「あ、今は12時24分だな。1224は、分解するとどうなるんだろう?2×2×2×3×3×17か」なんて具合に、普段から自分の身の回りにある数字で「遊んで」いたのです。
実際、東大生にはこうした数字遊びをしていたような人が多く、小さい時から数独・ナンプレ・テンパズル・Algoなどのたくさんのゲームで遊んでいたという人が圧倒的に多いです。
算数が高度な数学やそれ以外の科目にも繋がっていく
そして著者は、こうした算数が、その先の高度な数学や、それ以外の科目にも繋がっていくのだと語ります。
このように、「面倒なものを簡単に直す」という思考は、掛け算を含め、たくさんの場所で使われていて、算数が得意になっていけばいくほど、この思考を身につけることができるようになっていきます。
著者は「掛け算」を例に説明していますが、それ以外にも、大量の計算をしたり、数を分解したりする時には、「より簡単にしよう」「よりわかりやすくするために、置き換えて考えていこう」と考えていく必要が出てきます。例えば九九の5の段を覚える時に、「7×5は、7×10÷2だから、70÷2=35だな。8×5も、80÷2=40だな」と覚えていると、5の段を忘れることはなくなります。
また、数の分解をするときに、「133って、7を足すと140だよな。で、140は14×10であり、2×7×10だから、7の倍数だよな。ってことは、133は7の倍数に違いない」と考えると簡単になりますよね。
大きな掛け算をする時にも、「25×24を計算しなきゃ。25って4をかければ100になるよな。ってことは、25×24=100÷4×24になる。ってことは、24÷4=6で、25×24=100×6=600だ!」と考えることができます。
このように、算数を勉強し、数で遊ぶ経験があって計算を何度もやって慣れている人であれば、簡単に計算ができるようになっていくのです。
先ほど話をしたような数学のゲームでも、試行錯誤をして、「わかりやすくできるようにするためにはどうすればいいか?」というようなことを考えていくことになります。算数で遊び続ければ、このような思考のショートカットができるようになるのです。
数字なくても思考を整理できる!?
そして面白かったのは、著者は、これを使えば数字でなくても思考を整理することができると述べているところです。
このように、算数ができる人は、日常生活のいろんな場面で、数式を作ることができるようになります。このような思考は、昨今その重要性が叫ばれている「数値化」にもつながる部分があると思います。
拙著「東大式 数値化の強化書」でも述べたのですが、数値化して考える習慣があると、思考の整理がしやすくなっていきます。
例えば、目標を立てる時に、数字や式を絡めて考えると具体的に何をするかが明確になります。
「プレゼン資料を前よりも早いスピードで作れるようにする」と考えるよりも、「プレゼン資料の作成はスライド1枚当たり30分以内で行う」と考える方が、やることが明確ですよね。
そして「プレゼン資料の作成時間=A[構想を考える時間]+B[デザインに落とし込む時間]」というように分解して式にしていけば、よりやるべきことが明確にもなっていくはずです。
「東大算数」で述べられていることを応用すると、思考を整理してより良い選択をすることができるようになっていくと考えられます。
最後に
東大算数の中で、著者はこのように述べています。
これについて自分は本当にその通りだと感じます。
やはり算数をきちんと理解し、数学の勉強をすることは人生を豊かにすることにつながるものだと言えるのではないでしょうか。
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