才能に頼らない!誰でも身につけられる「新しい速読法ーフォーカスリーディング」とは?

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読書は複数ジャンルを読むべき

——寺田さんはフォーカスリーディングの講座のほかに、どのような取り組みをされているのですか?

小中学生向けのものとして読書教室の他に、読解・論理講座や文章講座なども行っています。読書教室では読書シールを使って、小学生の読書量を増やす取り組みをしています。本を一冊読んだらシールが1枚もらえて、シールが15枚溜まったら図書カード500円がもらえるというものです。ただし、この15枚には条件があって、3つ以上の種類のシールが入っていなければなりません。

シールの種類は、物語など比較的読みやすいentertainment、学術的なものなど難しい内容のheavy、古典と言われるような本などのclassicなどがあります。小学生なのでどうしても物語などを選びがちですが、こうすることで少しでもいろんなジャンルの本を読む機会を作りたいと考えています。社会人に対しての講義でも、「ノウハウ・知識・情報」「教養・専門」「政治・経済・地理・歴史」「宗教・倫理・哲学」「文学・詩・物語・古典」「科学・技術」という6ジャンルにまたがって読書をするようにしましょうと伝えています。

——シールを集めると思えば楽しみながら本を読むことができそうですね。いろんなジャンルの本を読むことはやはり重要ですか?

そうですね。例えばアメリカでは、本のジャンル別に8角形が設けられていて、本を読んだらそのジャンルの区画にシールを貼っていって、均等にシールが貼れるようにしよう!という教材が売られていたりします。こういうのは全部、アメリカでの読書研究がベースになっているんです。

参考:https://www.kotonoba.jp/reading-literachy/what-kind-of-books-and-how/

——複数ジャンルにまたがって読むことが良いと科学的に証明されているのですね。読書法に関して、読者の方が今からでも実践できるちょっとしたコツがあれば教えていただきたいです。

先ほどトップダウン処理の読書の話をしましたが、それに関連して、見出しを読むのに1秒以上かけて欲しいです。あとは、目の力を抜くことですね。頑張って読んでも、脳のパフォーマンスは下がるだけです、リラックスして読めるよう意識してみてほしいです。この二つができるだけで、全体の読書スピードは2倍くらいになると思いますし、理解度も高まると思います。

今後の本の活路とは

——近年ではYouTubeの流行などで、動画で簡単に学べる時代になったと思います。そんな中でも、本を読んで学ぶことの重要性とはどのようなところにあると考えますか?

これには二つの観点があります。一つには、書籍が空間軸のメディアであるのに対して、動画は時間軸のメディアだということです。どういうことかというと、書籍の文章は空間の中に存在するから、ある箇所とある箇所を線で引いたり、離れた二つのページのつながりを確認したりというように、空間の中で論理のつながりを理解することができるんです。逆に動画は、相手が作ったタイムラインの中で淡々と流れていってしまいます。受け止めやすい情報も、はてなマークが浮かぶような情報も、同じように流れていってしまうから、処理あるいは情報の処理が難しいというわけです。

もう一つは、私たちは「受け皿」と「アンテナ」が揃っていないと、知識を吸収できず、流れていってしまうということです。受け皿というのは、知識を理解するための土台です。説明で使われる言葉の意味をそもそも知っているか、というようなことですね。そしてアンテナは、関心や問題意識といったものです。そしてこの受け皿とアンテナを揃えるためには、新しいことを学ばなければいけないわけですが、それが可能なのは、動画ではなく紙のメディアだと思っています。動画の場合、自分の知らないことが流れてきたとしても、おや?と思った瞬間には流れていってしまいますから。

一方で、例えば統計学や数学というような新しい技能に関することは、本では学べない場合も多いんです。具体例があったり、図があったり、言い換えたり、例え話があったりという中で理解することができます。それができるのは、動画の価値ですよね。

——読書で受け皿とアンテナを揃えてから、初めて動画の価値が発揮されるということなんですね。普段本を読まない人にとっては、何から読めばいいか迷ってしまうと思うのですが、寺田さんはどんな本がおすすめですか?

政治、経済、歴史、地理というような社会に関するジャンルと、哲学や倫理に関するジャンルを読むことで、生き方そのものが変わってくるんじゃないかなと思います。しかもそれを読む時には、自分や著者と対話するような読み方にすると、得られるものは全く変わってくると思います。

特にお勧めしているのはエーリッヒフロムの『自由からの逃走』と、堺屋太一さんの『知価革命』という本です。この二冊は、ちゃんと読めば未来をある程度予測できるようになります。世の中がどのように動いているか、どのように変化していくかを見通せるようになるんですよ。

——本を読むことで何かを手に入れようとするのではなくて、対話しようという意識で読むことが大事だということですね。最後に、寺田さんは今後どういった活動に力を入れていく予定ですか?

私の問題意識は、本一冊を理解できる人というのはそう多くないのではないかということです。そもそも日本では、読書教育が行われていないから、アメリカで教えられるような読書のストラテジーを知らない人が多いんですよね。でも、現在でも読書法の基本が語られることってほとんどないんです。だから、その部分をどう伝えて、読書教育をどう作っていくかというのが私の最大のテーマですね。

——読書の仕方を教えてもらえる場を作ることで、読書の価値を伝えていきたいということですね。本日お話を聞いて、僕自身も読書の基礎について考えていきたいと改めて思いました。ありがとうございました!

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この記事を書いた人

東京大学文学部。世帯年収300万円台の家庭から東大へ合格。現在学業の傍ら、ライター、作家活動や講演活動を通して逆転合格のノウハウを広める。日刊SPA!、プレジデントオンライン、東洋経済オンラインにて連載経験あり。ゲームとマンガが趣味。

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