共通テストの英語リーディングに対して「文章量が多すぎ!」「時間が足りない!」といった感想を持っている受験生は多いのではないでしょうか。英語リーディング攻略の鍵は、いかに「早く」問題を解けるようにするか、です。
そこで、本記事では、共通テスト英語リーディングの対策方法について時間配分という観点から、現役東大生の清野孝弥が解説をしていきます。
「英語リーディング」の特徴と効果的な解き方
共通テストの英語リーディングは、センター試験の英語リーディングと比較して文章量が増加している分、英語力のみならず情報処理能力が問われるテストとなっています。文章量は共通テスト形式に移行した2021年から増加し続けており、今年度の共通テストでも膨大な量の文章を読み解くことが求められそうです。
こうした英語リーディングにおいて、最も受験生が苦戦するのは時間配分です。ただでさえ一つ一つの英語の文章の意味を理解するのでも一苦労なのに、共通テスト本番では大変厳しい時間制限の中で文章を理解していくことが要求されます。
小問ごとに時間目標を設定するのは非効率的
塾・予備校業界では、共通テストの英語リーディングの対策法として大問ごとや小問ごとに時間目標を設定して、その時間を意識しながら問題を解くことがお勧めされがちです。英語リーディングの時間制限は全体で80分ですから、その時間を各小問ごとに割り振って「問題ごとの制限時間」を設けるようにすれば、時間管理がしやすくなり、後半の問題で大量に失点するといった事態を回避できます。
しかし現実には、受験生が目の前の問題文を読み解くのに必死な状況下で、各問題ごとに時間を気にしていくことは大変困難です。それに、共通テストの問題形式は、毎年変わる可能性があります。そのため、いくら準備段階で時間目標を使って正確に時間配分ができるようになったとしても、本番の問題数に適応する形で時間配分ができなければ、意味がないのです。
自己ベストを更新する時間管理術
英語リーディングの対策をする際には、自己ベストのリーディング時間を更新できるように意識することが大切です。
例えば、大問1に20分かかっている受験生は、大問1を解く時に、19分30秒のタイマーを設定して問題に取り組んでみましょう。大問1の時間目標は、一般的に8分〜12分程度と言われていますが、自己ベストが20分の受験生がいきなり12分を目標にして問題を解いてみても、身にならないことは明らかです。むしろ、自己ベストの20分を少し上回る19分30秒でタイマーを設定して、いつもの自分より「ちょっと上のレベル」で問題を解くように意識すれば、無理に時間配分を意識しなくても自然とリーディングスピードを改善していくことができます。
この30秒早く読む勉強法は、どんなレベルの人でも応用できます。既に大問1を8分で読めている受験生も、もし7分30秒で読むことができるようになれば、その30秒を見直しの時間に使えるようになり、得点率が向上するかもしれません。もし、時間配分に困っている受験生がいれば、この自己ベストを更新していく勉強術を活用してみてください。
時間内に解けない人の特徴3選
ここからは、英語リーディングで時間が足りなくなる原因について解説していきます。
設問を確認しないで問題文を読んでいる
まず、最もよく受験生が犯しがちなミスとしては、「設問を確認せずに問題文を読む」ということが挙げられます。共通テストの英語リーディングは文章量が多い分、全ての文章を精読することは困難です。そのため、設問で聞かれている要素に着目しながら、濃淡をつけてリーディングをしていくことが大切です。
しかし、設問を読んでもいないのに真っ先に問題文を読む受験生は、どの情報が重要かが分からないため、全ての文章を精読する必要が出てしまいます。問題文を読み終わった後に設問を確認したとしても、膨大な情報量を記憶しておくことは困難ですから、結局問題文を読み直すことになってしまいます。また、設問を先に読んでいるという受験生でも、設問文をよく理解できていないのに問題文を読み始めるというケースもあります。
設問を読むときには「何の情報を探さなければいけないのか」を理解できているか、確認するようにしてみてください。
なんとなく二回読みをしている
共通テストの英語リーディングの問題では、受験生が苦戦するように難易度の高い文法事項や英単語が随所にちりばめられています。そのため、なんとなく問題文を読んでしまうと、意味が分かったような分かっていないような中途半端な感覚に陥って、結局不安な気持ちに駆られて二回読みをしてしまうという現象が発生します。
時間の限られた英語リーディングで大切になるのは、全ての文章を理解することではなく、必要な文章を理解することです。設問の内容に関連しない枝葉末節の文章内に、自分の知らない英単語が出てきたとしても構う必要はありません。問題を解いていくにあたって、引っかかった箇所だけ二回読みをしたり、精読をしたりすれば良いのです。
受験生の皆さんへのおすすめは、一回目に文章を読んでいるときに分からない単語や文法に出会ったら、下線を引いておくことです。分からない部分を可視化しておくことで、漠然と文章の意味が分からないという不安感を払拭(ふっしょく)できますし、二回読みが必要になる箇所が明確になります。最初は面倒な作業と思うかもしれませんが、全文を二回読みする方がよほど面倒な作業です。「ついつい二回読みをしてしまうんだよな」という人はぜひ実践してみてください。
日本語訳をしすぎている
上述の二回読みの話と関連しますが、時間切れになる受験生はたいてい英文を日本語訳しています。日本語訳をすること自体が悪いわけではないのですが、時間制限の厳しい英語リーディングにおいて日本語訳をしている時間は、ほぼないと言っても過言ではありません。今まで一生懸命勉強してきた受験生ほど、自分で理解できない英文があると英単語と文法の知識を駆使して、なんとか日本語訳をしようと試みるものなのですが、大概は無意味な努力で終わってしまいます。
先ほども伝えたように、英語リーディングでは必要な文章とそうでない文章を取捨選択することが肝心です。日本語訳もすべきところとすべきでないところを適切に区別しないと、いたずらに時間を消耗することになってしまいます。そのため、「日本語訳をしすぎているかも」という受験生は、英語リーディングに取り組む際には、できるだけ日本語訳をしないで理解をするという意識を持ってみてください。
英語リーデイングで「必要な文章」を取捨選択する方法
選択肢の文章の言い換え表現を探す
英語リーディングの選択肢問題を作成する際には、問題文中の英語表現を言い換える形で選択肢を作成し、正誤判定の根拠が明確になるように工夫をしています。つまり、受験生は設問と選択肢を確認して、その表現と類似する箇所を見つけるだけで重要な情報を発見することができるわけです。その際に意識してほしいのは、作問者は「あえて難しく言い換えている」ということです。
例えば、2024年共通テスト英語リーディング解答番号2の問題では、gesturesという表現がhow people use their hands to communicateと言い換えられています。普通ジャスチャーという言葉を「人々が意思疎通のために手を使う方法」とは日本語で説明しません。しかし、英語リーディングではこのような言い換えがたくさん登場します。
同じ単語や表現を探すのではなく、意味のレベルで同じことを言っている箇所はないか、注意深く文章を選別していくことで、効率的に必要な情報にたどりつくことができるでしょう。
正答根拠の位置を把握しておく
英語リーディングの問題では、問題文の内容を効率よく問題にできるように、一度選択肢として言い換えた場所は、それ以降の小問の選択肢の解答根拠とならないように配慮されています。そのため、小問1の選択肢4つの言い換え表現を問題文中から見つけることができれば、小問2以降の問題を解く上で、必要のない4箇所を作り出すことができます。この方法は、後半の大問では特に有効で、問題文の量が増加するとその分、必要な情報を選択するだけでも一苦労です。そんなときに、直前の小問の選択肢に登場した箇所は、見なくて良いと考えることができれば、大変リーディングが楽になります。英語リーディングの予想問題や過去問を解く際には、ぜひ選択肢の言い換え箇所がどのように分布しているかを確認してみてください。受験生の皆さんが驚くほど、満遍なく問題文中に散りばめられていることが分かると思います。このように、英語リーディングの作問者の意図を意識しながら問題に取り組むようにするだけでも、かなり情報の取捨選択能力は向上していきます。ぜひ初めて知った受験生の皆さんは、明日から実践してみてください。
論説文では具体と抽象を意識する
英語リーディングの後半の大問では、学術的な研究成果を報告したり、解説したりする論説文がたびたび登場します。こうした論説文では、重要な情報の提示方法がかなり統一されているので、受験生の皆さんも文章の流れをつかめるようになったら、簡単に情報の取捨選択ができます。一つ簡単な例を紹介しましょう。論説文においては、重要な情報を示した抽象的な文章と、重要な情報を解説する具体的な文章がセットで登場します。例えば、「睡眠不足により、20%程度学力が低下する。」という重要な情報が提示されたとしましょう。大抵、選択肢で問われる内容も、こうした抽象的な情報になるのですが、さすがにこの文章だけでは、筆者が何を言いたいのかが定かではありません。そのため、「2022年に公表された〇〇大学の研究チームの成果報告によると、」といった具体例を通じて、重要な情報の根拠や理由が解説されるものです。こうした具体的な文章は、問題文の意味を理解するのには役立つのですが、たいていの場合、設問の選択肢には登場しません。というのも、具体例(上記では、年号や固有名詞など)は言い換えることが困難で、選択肢にすることがはばかられるからです。そのため、受験生はこうした選択肢問題の構造を逆手に取れば良いのです。固有名詞や研究結果など具体例がたくさん登場している箇所があれば、それは何かしらの重要な情報を説明するために存在しているということです。問題文を読むときには、具体例には斜線を引いて、その前後に存在する重要な文章を囲む。こういった形で濃淡をつけながら文章を読んでいくと、時間を短縮しながら、英語の文章を読むことができます。
まとめ
ここまで紹介した時短テクニックは、最初から全て実践するのは難しいかもしれませんが、一つ一つ自分のものにしていくことで、着実に英語リーディングにかかる時間を短縮していくことができると思います。ぜひ英語リーディングでの高得点を目指して頑張ってみてください。
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