法学部は何を勉強するところ?〜東大法学部卒業生が話すリアル〜

法学部は何を勉強するところ?〜東大法学部卒業生が話すリアル〜

「あなたはなぜこの大学・学部を選びましたか?」

推薦やAO入試がある大学では必ず聞かれるこの質問、最近では一般入試のアンケートでも聞かれるようになりました。

4年間もしくはそれ以上の期間、多額の学費をかけて通う大学は、大学選びだけではなく、学部選びがとても重要です。なんとなくのイメージ、就職に有利そう、偏差値が丁度いいからなどの理由で決めてしまうのはもったいないです。

また、何を勉強するか、どんな楽しいことが待っているか分からない状態で、受験勉強をしてもやる気が続きません。そこでこの記事では、現役大学生へのインタビューをまとめた書籍『13歳からの学部選び』をもとに、東大法学部を卒業した筆者が、学生が実際にどんな勉強をしていて、どんな経験ができるのか? 学部選択に役立つ情報をまとめました。

目次

法学部とは?

そもそも、法学部では、何をどのように学ぶのでしょうか。また、どのような学生が集まってくるのでしょうか。

法学部ではどんな力が身に着くの?

法学部では、社会で適用されているさまざまな「法」の解釈やその運用について学びます。基礎的な法の知識を学びながら、実際の社会問題を論理的に解決する力を養うのが主な目的です。

法律には、抽象的で独特な表現が多用されており、実際に適用するときには、この法律が何を定めているのか注意深く解釈する必要があります。法学部では、過去に起きた事件をもとに法律の運用を学び、実際の事件に法律を適用する力を身に着けていきます。

法学部での学習でもっとも重要となってくるのが、論理的思考力(ロジカル・シンキング)です。法律を適用する際に、論理的な飛躍があっては、誰も納得することができず、法律の信用や意義が失われます。そのため、論理的に結論を導くということが鍵となってくるのです。

法学部の授業

法学部の科目は、ほかの学部と同様に「必須科目」と「選択科目」に分かれています。

必須科目には、憲法、民法、刑法などの主な国内法に加え、政治学などがあります。選択科目には、国際法や世界各地域の政治、知的財産法などのマイナーな法律なども含まれており、自分の興味関心に応じて自由に授業を取ることができます。また、大学によっては、他学部履修制度もあるため、ほかの学部の授業をいくつか取ることも可能です。

授業の大半は、講義形式ですが、それに加えてゼミという授業も履修します。ゼミの内容は、担当講師やテーマによってさまざまですが、文献を読んで発表するという輪読形式のものもあれば、交渉や仲裁などより実務的な内容を扱うゼミもあります。通常30人以下の少人数制であるため、講義形式ではなかなか構築しにくい学生間や教授とのネットワークが築ける貴重な機会です。

法学部にはどのような学生が集まるの?

法学部といえば、弁護士や裁判官志望の人ばかりが集まるというイメージをお持ちの人も多いかと思います。実は、法学部には、法曹志望の人以外にもさまざまな人々が集まってきます。法律や論理的思考に関心がある人や、政治に関心のある人など、学生の関心分野は幅広いです。課題のある授業が非常に少ない傾向にあるため、自主的に学ぶことが好きな人も多いといえるでしょう。

法学部の主な科目

法学部で学習する科目は、主に実体法学・基礎法学・政治学の3つに大きく分けることができます。ここでは、それぞれどのような内容の科目であるか説明していきます。

実体法学

法律と聞いてみなさんは何をイメージしますか。民法や刑法などが、よく耳にするところではないでしょうか。そのような実際に社会で定められている法律について、解釈などを学ぶのが実体法学です。

「六法全書」や「六法」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。六法とは、日本における主要な六つの法律(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法)のことを言います。これに行政法を加えたものが日本の法律の基盤となっており、実体法学ではそれらの法律について学習していきます。

それでは、具体的にどのような勉強をしていくのでしょうか。法律の多くは、何十年も前に制定されており、制定者の意図を正確に把握することは非常に困難です。さらに、法律が制定されてから何十年もたっている場合、社会は時代とともに変化しており、法律もそれに対応させなければなりません。法律の解釈とは、そのような点を踏まえて、法律に何が書いてあるのか、法律の文章は何が言いたいのか、どのような場合に適用できるのかを学んでいきます。そして、実社会で起きた問題に適用させる練習をしていくのです。

基礎法学

基礎法学とは、実体法の裏にある根本的な問いについて扱う学問です。「なぜ・どのような意図で法律を制定したのか」など法律のルーツについて考えたり、「よりよい制度はないのか」を探究したりします。特に、基礎法学の中でも代表的な「法哲学」という科目では、そもそもなぜ法律は必要なのかといった法律の存在意義に迫る問いを扱います。すなわち、基礎法学とは法律の本質について考える学問なのです。

抽象的で難解なイメージを持たれた人もいるかもしれませんが、基礎法学は法律やルールの問題点が発見できたり、現状の制度の改善点がわかったりするきっかけとなります。実際に、基礎法学の問いについて考える際には、実際にある法律や社会で話題となっている出来事を題材にすることが多くあるのです。

政治学

政治とは、ニュースでよく流れる政治家の話に限らず、人が集まってある物事がよりよい方向に進むようにするために行われる全てのことをさします。コミュニティの大小を問わず、複数の人間が利害を調整しながら現状の改善を図る方法を考えるのが政治という学問なのです。

政治学には、政治の歴史を学ぶ政治史学、政治の考え方の系譜を辿る政治思想学に加え、国家間の政治を学ぶ国際政治学や、各地域ごとの政治を研究する地域政治などがあります。近年では、政治学と経済学のつながりが強くなってきており、経済学の考え方を用いて政治の事象を考えることもあります。

天秤

法学部生の進路

法学部生と聞くと、弁護士や裁判官などいわゆる法曹志望の人ばかりだと想像する人も多いでしょう。しかし、実際は法学部の卒業生の進路は非常に多様です。ここでは、主な進路を紹介していきます。

大学院進学

一つ目は、大学院進学。最も多いのが、法科大学院、いわゆるロースクールですね。法科大学院では、主に法曹を目指している学生が法律についてより深く学習します。法曹になるためには、司法試験に合格する必要がありますが、法科大学院の修了がその受験資格となるのです。

法科大学院以外にも、さまざまな大学院進学の選択肢があります。政治に関心のある人は政治学研究科、研究者を目指す人は法学研究科や総合法政専攻といったところに進学します。また、政策など実社会でどのように社会課題に対応するか学びたい人は、公共政策大学院で法に加えて政治や経済を勉強しながら政策学を学びます。

法曹

もちろん法曹を目指す人も必ず一定数います。法曹になるためには、先述のとおり司法試験に合格しなければなりません。そのためには、法科大学院に進学するか司法予備試験に合格して、受験資格を獲得しなければなりません。法曹志望者の中には、在学中に司法予備試験を受験している人もおり、その多くは予備校に通いながら司法試験の対策をしています。

司法試験に合格した人は、その後法律事務所でのインターンや司法修習を経て、弁護士への道に進んでいきます。基本的に法律事務所が就職先となります。

公務員

公務員は、主に各地の市庁や都道府県庁で働く地方公務員と、主に中央官庁や国の出先機関で働く国家公務員に大きく分類できます。公務員を目指す人は、公務員試験に合格しなければなりません。とくに省庁で働くには、国家公務員を受験してから官庁訪問を行い、最終的に就職先が決定します。公務員を目指す学生は、多くの場合、在学中に大学の勉強と並行して受験勉強を行い試験を受けます。

民間就職

実は、法学部生の最も一般的な就職先は民間企業です。メーカーや商社、金融、コンサルティング業界など、民間企業と一言でいってもさまざまです。そのため、大学3年次には多くの人が書類選考や面接などと就職活動に追われています。公務員志望の人の中には、滑り止めとして民間企業の就職活動を行う人も少なからずいます。

東大生が語る法学部生活のリアル

実際の法学部生はどのような生活を送っているのでしょう。今回は、東大法学部を卒業した学生の体験談をもとに法学部の学生生活を紹介します。

法学部の大変なところ

法学部の最も大変なことは、なんといっても試験です。課題が課される科目が非常に少なく、ほとんどの科目が試験一発勝負となります。一方で、難しい科目が多いため、とても一夜漬けで乗り切れるものではありません。試験前に、膨大な試験範囲を復習することは、法学部生の最大の悩みといえるでしょう。

また、法学部の授業は講義形式のものがほとんどであるため、人間関係が築きづらいと言われることもあります。とくに東大法学部は、「砂漠」というあだ名がつけられるほどです。しかし、ゼミ科目の履修や、学生団体への参加を通して、積極的にほかの学生と交流すれば、豊かな人脈を築くことも十分できます。

法学部の魅力

法学部の魅力は、2つあります。一つ目は、法学という学問そのもの。法律は、わたしたちの生活に不可欠のものです。そのため、社会人になってからも、仕事や私生活などさまざまな場面で法律が関わってきます。例えば、仕事では契約書の作成したり読み込んだりといったことが行われます。法律の基礎的な知識が備わっていることは、社会のあらゆる場面で役立ってくるのです。

二つ目は、法学部生間でのネットワークです。先ほども紹介したとおり、法学部生の進路は実に多様です。そのため、法学部に在学中に構築した人脈はその後の社会人生活で大いに生きてきます。また、学生時代の間もさまざまなキャリアを目指す人と関わることができるため、自身のキャリアプランを見直したり視野を広げたりするきっかけにめぐり合えることも多いです。

法学部が向いている人の特徴

法学部は、論理的思考が好きな人にぴったりの学問です。また、文章を読んだり書いたりすることに慣れていることもポイントです。法学部生は、条文や判例、そのほかの文献を含め、日々大量の文章を読まなければなりません。

さらに、試験では記述式の問題が出されることもあるため、論理的な文章を書くことが求められます。文章を読んだり書いたりする能力は、法学部の学習を通して鍛えることができますが、前提として文章に対して抵抗がないことが大切です。

まとめ

いかがでしょうか。法学部での学生生活やその後の進路について少しイメージを掴めたでしょうか。法学は、わたしたちの生活に欠かせないものです。社会生活の基盤ともいえる法律の勉強は、その後の人生にも大きく生かされてくるのです。

この記事がみなさんの学部選びの一助になれば幸いです。

いかがでしょうか。法学部での学生生活やその後の進路について少しイメージを掴めたでしょうか。法学は、わたしたちの生活に欠かせないものです。社会生活の基盤ともいえる法律の勉強は、その後の人生にも大きく生かされてくるのです。

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この記事を書いた人

東京大学では、法学を専攻。人権問題や環境問題に関心があり、学部卒業後は公共政策大学院に進学(予定)。高校時代から遅くとも22時半には就寝する、極度の朝型。趣味は、ランニング・映画鑑賞・サッカー観戦など。

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