皆さんは「アドミッションポリシー」という言葉を聞いたことがありますか?
「行きたい大学」を決めるときには、知名度・偏差値・学部だけではなく、その大学が、どのような学生を求めているのか、またどのような人材を育成しようとしているのかを知っておくことが、非常に大切です。
また、総合型選抜入試を考えている場合は、必ず「アドミッションポリシー」を確認し、その大学が求めている人物像に自分がマッチしているのか、それをどう伝えればいいのかを考えなければなりません。
この記事では、アドミッションポリシーの概要、確認方法、読み方のポイントなどを解説していきます!
アドミッションポリシーとは何か?
アドミッションポリシーとは、各大学または学部・学科が「どのような学生に来て欲しいか」をまとめたものです。
文部科学省は、2017年度から、各大学に3つのポリシーの策定と公開を義務付けました。アドミッションポリシーはそのうちの1つです。
3つのポリシーとは何か?
3つのポリシーは「アドミッション・ポリシー」「カリキュラム・ポリシー」「ディプロマ・ポリシー」に分けられます。
アドミッションポリシー(入学者受け入れの方針)
「入学」に関する声明
どのような学生を求めているかをまとめたもの
大学の教育理念、求める人物像、またそのための入試試験方針が分かります。
カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)
「在学中」に関する声明
どのような教育をするのかをまとめたもの
大学の授業の方法、評価の仕方、実際にどのような授業が行われるのかが分かります。
ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)
「卒業」に関する声明
どのような力を身に付けたら卒業できるのをまとめたもの
大学がどんな人材を育成・輩出したいのか、卒業認定の条件が分かります。
アドミッションポリシーは「入学前の学生」に向けたもの、「カリキュラム・ポリシー」「ディプロマ・ポリシー」は「入学後の学生」に向けた内容になります。
全てを確認することで、入学から卒業まで、各大学がどんな方向性で実施しているのかが分かります。
アドミッションポリシーの具体的な内容
3つのポリシーの中でも「アドミッション・ポリシー」は「行きたい大学=志望校」を決めるのにとても大切です。
どのような人物像を求めているかが分かるので、自分に合っているのかどうかを確認し、入学後のミスマッチを防ぐことができます。
では、具体的にどのような内容が書かれているのでしょうか? 東京大学のアドミッションポリシーを例に見ていきたいと思います。東京大学の場合は、3つの項目に分けて書かれています。
東京大学の使命と教育理念
国内外の様々な分野で指導的役割を果たしうる「世界的視野をもった市民的エリート」(東京大学憲章)を育成することが、社会から負託された自らの使命であると考えています。 東京大学に入学する学生は、健全な倫理観と責任感、主体性と行動力を持っていることが期待され、前期課程における教養教育(リベラル・アーツ教育)から可能な限り多くを学び、広範で深い教養とさらに豊かな人間性を培うことが要求されます。(一部抜粋)
特徴的なのは「リベラル・アーツ教育」です。どの専門分野でも共通する基礎的な知識や学術的方法を身につけた上で、自分が進むべき専門分野を見つけていきます。
期待する学生像
入学試験の得点だけを意識した、視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも、学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を東京大学は歓迎します。(一部抜粋)
与えられた勉強をこなすだけではなく、各知識の点を関連づけて線にできること、また主体的に学ぶ姿勢が求められていることが分かります。
入学試験の基本方針
第二に、入学後の教養教育に十分に対応できる資質として、文系・理系にとらわれず幅広く学習し、国際的な広い視野と外国語によるコミュニケーション能力を備えていることを重視します。そのため、文科各類の受験者にも理系の基礎知識や能力を求め、理科各類の受験者にも文系の基礎知識や能力を求めるほか、いずれの科類の受験者についても、外国語の基礎的な能力を要求します。(一部抜粋)
幅広い学びをしていくための、外国語能力や、教科をまたいだ全般的な学習結果が求められていることが分かります。
(引用:東京大学HP)
アドミッションポリシーの確認方法
アドミッションポリシーの確認方法は大きく2つあります。
公式サイトを確認する
「◯◯大学 アドミッション・ポリシー」「◯◯大学 ◯◯学部 アドミッション・ポリシー」と検索すると、各大学の該当ページが表示されます。中には3つのポリシーとまとめられていたり、大学全体のもの、学部ごとのものに分かれている場合もあります。
パンフレットを確認する
大学のサイト、オープンキャンパスや説明会、学校などを通じて、大学のパンフレットを取り寄せてみましょう。こちらでもアドミッションポリシーを確認することができます。
アドミッションポリシーの活用方法 ① 〜志望校選び〜
では、アドミッションポリシーの概要と確認方法が分かったところで、具体的な活用方法を見ていきたいと思います。
例えば、将来は会社員になりたいので、マーケティングやビジネスのことを学んでみたいから、商学部に行きたいな……と考えていたとします。
行きたい学部が決まっている場合は、大学の同じ学部のアドミッションポリシーを比較してみるのがおすすめです。
早稲田大学の商学部と慶應義塾大学の商学部を例にとって比較してみます。
早稲田大学 商学部 の場合
早稲田大学の建学の理念である『進取の精神』の涵養を目指す、一定の高い基礎学力を持ちながら、かつ知的好奇心が旺盛で、自分で計画を立て、種々の課題に積極的に立ち向かう意欲に満ちた個性的な学生を、全国各地や世界中から多数迎え入れる。
「学識ある実業家」の養成を創設以来の教育理念に掲げる本学部は、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力等のビジネス・スキルを修得する場であるとともに、それ以上に広い視野に立って経済社会を質・量ともに豊かにすることを目指す「商学」の基本理念を理解し、自らの使命や役割を認識した上で判断・行動しようとする人々の学びの場である。そのために、論理的思考力や社会科学の基礎となる学力が必要不可欠である。国際感覚・倫理観を兼ね備えた企 (起)業家精神を養い、深い学識と教養に裏付けられた実業家を目指し、ビジネスリーダーとして地球社会に貢献しようと志す学生を受け入れたいと考えている。
引用:早稲田大学HP
慶應義塾大学 商学部 の場合
商学部では、産業社会の抱える問題を自ら発見し、説得力ある解決策を導き、発信する能力を養うことにより、国際社会に貢献できる人材の育成を目指しています。入学者の選抜もこの方針に沿って実施されており、社会に対する強い関心、論理的な思考能力、資料を読み解く力、英語をはじめとする基礎学力をとくに重視しています。
引用:慶應義塾大学HP
どうしょう?同じ商学部でも、書いてあることが異なるのが分かります。
早稲田大学の場合は「知的好奇心」「コミュニケーション能力」「企(起)業家精神」など、外向的なエネルギーやリーダーの素質が求められているようです。
一方、慶應義塾大学の場合は「課題発見能力」「課題解決能力」「英語をはじめとする基礎学力の重視」など、自ら問いを立て、解決する能力や、その基盤となる学力の高さも求められていることが分かります。
内容を読み解くことで、自分はどちらのタイプなのか、また求められていることにマッチしているのかを検討し、志望校を絞り込んでいくことができます。
アドミッションポリシーの活用方法 ② 〜総合型選抜入試対策〜
昨今選抜入試の割合が急速に拡大しており、早稲田大学では、2026年まで選抜入試の募集枠を全体の6割まで引き上げるという目標を掲げています。
選抜入試と一般入試の併願が一般的になる未来もそう遠くはないかもしれません。 総合型選抜入試において、アドミッション・ポリシーをどう活かせばいいのでしょうか?3つに分けてみていきたいと思います。
志望動機書の作成
出願書類に必ずあるのが「志望動機」の記入です。なぜこの大学・この学部に入りたいのか、他の大学ではだめなのか?という理由や熱意が伝わり、自分がそこにマッチしている人間であると示す必要があります。
そのために、大学側がどのような人材を求めているか読み込み、または他大学との違いをアドミッション・ポリシーで確認しましょう。
面接対策
面接ではどのようなことを聞かれるか分からないので、事前に受け答えの対策を練る必要があります。アドミッション・ポリシーのどの点を重視して、どのように入学後の学業に取り入れたいかという質問が来た場合に答えられるように、事前の読み込みが大切です。
また大学の求める人材との一致度を示すために、他の質問にも、アドミッション・ポリシーにあった内容を答えられるといいでしょう。
どのような能力を伸ばせばいいか
大学によって、5教科全体の高い学力を求めているところ、英語力を求めているところ、課外活動の実績を重視するところ、などさまざまです。
志望校に定められた大学が何を重視しているかをアドミッション・ポリシーから確認し、受験生になる前から準備をしておく必要があります。
まとめ
いかがでしたか?アドミッション・ポリシーを読めば「大学が求める人物像」が分かります。
将来どんなことをして、どんな風に生きていきたいのか、夢や目標が皆さんあると思います。
夢や目標を実現させるために、主体的に大学が発信している情報を収集していきましょう。
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