才能に頼らない!誰でも身につけられる「新しい速読法ーフォーカスリーディング」とは?

本を読むのが苦手……。読みたいけどなかなか手が伸びない……。そんな方にぜひ知ってほしい読書術があります。それが、トレーニングで必ず身につく新しい速読法「フォーカスリーディング」です。その生みの親は、子供から大人まで幅広い世代に対して読書教育を展開する寺田正嗣氏。今回はその寺田氏に、フォーカスリーディングが生まれたきっかけや、フォーカスリーディングの方法、今すぐ実践できる読書術をインタビューしてきました!

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寺田昌嗣さんプロフィール

福岡県出身。名古屋大学法学部卒。元福岡県立高校公民科教師。高校時代に速読と出会い、1年間にわたりトレーニングを行うも挫折。その後7年をかけて独学で速読をマスターし、さらに7年後には新しい速読法「フォーカスリーディング」を完成させる。
2001年に独立し、その普及にあたる。主催する講座には、多くの経営者や著名人らも訪れ、98%超の修得率と実用性の高さが評判となっている。また、子ども向けの読書指導、企業向けの社員研修なども実施。
2017年度からは九州大学大学院に進学。読書教育と学習ストラテジーを研究する。
著書は10万部のベストセラー書『フォーカス・リーディング』(PHP研究所)をはじめ多数。
https://www.focusreading.jp/

速読との出会い

——ご著書『フォーカス・リーディング』は大変なベストセラーとなりましたが、寺田さんはいつから速読を志していらっしゃったのでしょうか?

私が速読と出会ったのは高校生の頃でした。実は、もともとの出会いは読書とまったく関係がなかったんです。僕を速読と繋げてくれたのは、「ノストラダムスの大予言」と「スプーン曲げ」でした。

——「ノストラダムスの大予言」と「スプーン曲げ」ですか!質実剛健なイメージのある読書とは正反対のところにあるような気もしますが……

私たちの世代はかなりの人が大予言大好きだったんですよ。もう地球が終わるなら、勉強なんかいらないじゃん!みたいな議論がまじめにテレビでなされるような時代で。私は家に帰ると親から勉強勉強ってうるさく言われるのが嫌だったので、ずっとゲームセンターか本屋に入り浸ってたんです。お金がなかったからどちらかというと本屋が多かった。本屋に行くと、大予言シリーズやUFOや超能力シリーズといった怪しい系の本を立ち読みして過ごしました。その中で、「脳の可能性を1%も開いたらあなたはアインシュタインになれる」みたいなことをいう本と出会ったわけですよ。

——アインシュタインとは大きく出ましたね。

でも当時の自分は「あ、そうか誰でもできるんだ」と思っちゃって(笑)その直前にスプーン曲げにハマって相当練習したのですが、断念したところで……。「よし今度は速読だ!」となって、そこから高校三年生までずっと速読のトレーニングやってたんです。そしたら、ゲームの腕前とかマンガを読む速度は劇的に上がったんだけど、読書の速度は全然上がらないんです。当たり前だけど、文章を処理するって言うのは見るだけじゃダメなんですよね。でも、この経験から私と速読の付き合いは始まったんです。

教師としてのキャリア

——では、高校を出たらすぐ読書法を研究されたのでしょうか?

いえ、元々私は小学生時代から教師になりたいなと思っていたんです。その思いは変わらず、名古屋大学法学部を卒業後、社会科の教師になりました。

その時に強く思っていたのは、社会科を暗記教科にしたくないということ。どういう風にこれからの時代を生き抜いていくのか。これからサバイバルの時代が来ると思っていたので、暗記よりも思考を大事にする授業をしたいと思っていました。

ですから、4月の最初の授業では、ただ覚えるのではなくどういうふうに自分の意見を作っていくかが重要だと必ず生徒たちに伝えていました。

——社会科は暗記科目だというイメージは、寺田さんが教師をされていた30年前から根強かったのですね。授業ではどのようなことをしていたのですか?

グループディスカッションやディベートなどさまざまでした。とはいっても、いきなりやってみよう!ということはできないので、資料の扱い方や議論の進め方、論理的思考の仕方なども同時並行で教えていくという形でした。

——近年の社会科の授業と比較しても、最先端の授業をされていたのですね! 寺田さんの授業は、新聞にも取り上げられたことがあると伺いましたが。

年金元年と呼ばれる1998年の少し前から、国から年金教育をせよという通達が教育現場にありました。私は通達とは無関係に、グループディスカッションのテーマの一つとして、高齢化社会と年金問題を扱っていたんです。そしたら、その情報をどこからか聞きつけた朝日新聞の記者から取材の依頼が入り、どういう扱いになるのか分からないままインタビューを受けたところ、元旦の朝刊トップでいきましょうってことになりました(笑)

——元旦の朝刊で写真付きというのはすごいですね!

ただ、ちょっと残念なこともあって。この新聞には私のコメントで「僕も答えはわかりません」って書いてあるんですよ。実際のインタビューではそれに続けて「でも、生徒たちは社会について考えた。その体験が大事だと思うんです」って言ってたんです。これがカットされちゃったから、ものすごく無責任な人みたいになっちゃって(笑)どうしてカットされたのかなぁ。

フォーカスリーディングとは

——寺田さんが現在講師をされている「フォーカス・リーディング」について教えてください。

フォーカス・リーディングは、「速読」を名乗ってはいますが、速読とは全く別物です。速読というと、右脳を開発すると本をパラパラめくっただけでそのページが頭に入ってくるというように語られがちですが、科学的にはトレーニングでそのような速読を習得することは不可能だとされています。

一方で、フォーカス・リーディングは右脳の開発といったようなマジカルなものではなく、読書ストラテジーを使った科学的な読書法です。読書ストラテジーには、例えばPQRSストラテジーというものがあります。これは、Preview(下読み)、Question(問いの設定)、Read(理解読み)、Summarize(振り返り)の頭文字をとったものです。この手順を使いながら、どのタイミングでどんなメモを取ったら、記憶と理解が深まるのかということを指導しています。

——右脳の可能性にかけるのではなく、トレーニングをすることで誰でも身につけられる読書法がフォーカス・リーディングなのですね。

その通りです。そして読書スピードを上げるためのトレーニングとして、瞑想トレーニングや、武道で大事にされる「観の目付」の見方のトレーニングなどを採用しています。剣道では対戦相手の向こう側を見据えるように観ると良いと言われますが、あれには反応速度を上げる効果があります。一か所を集中してみてしまうと、逆に反応速度が鈍くなってしまう。相手を含む全体をぼーっと見つめるほうが、かえって機敏に反応できるようになるんです。

この視野と意識の使い方を読書に応用しようというのが私の考えです。この観方がつかめると、ほとんど理解を損なうことなく2〜4倍速で読めるようになります。これに加えて、俯瞰的にざっくり読むのと、集中して緻密に読むのをうまく使い分けて、読書スピードをコントロールしようという発想を採用しています。これは別の言い方をすると「フォーカスのコントロール」です。それによって、丁寧に読んで1ページ9秒前後、ざっと流し読みで1ページ3秒前後というスピードを実現しています。

観の目付の効果イメージ

——なるほど。フォーカス・リーディングでは、本を速く読めるようになるのでしょうか?

ある程度読むスピードは速くなるかもしれませんが、何でもかんでもそんなに高速に読めるわけではありません。例えば、私はエーリッヒフロムの『自由からの逃走』を10回くらい読んでいますが、それでも1ページ読むのに3分はかかっています。自分の人生のクオリティが上がると思うから、ゆっくり時間をかけても、何回でも読むんです。フォーカス・リーディングの講座の受講生の皆さんは、例えば1ページ9秒とか、スピードにこだわって、もっと速く読めるようにトレーニングします!と言ってくるんですが、そうじゃないんです。速く読めない本もあるし、ゆっくり読んだ方がいい本もあるんだから、本とか読書の目的に応じて、柔軟に読もうって話なんです。

——あくまで速く読むことではなく、本の内容を咀嚼することが一番の目的だということですね。

先ほどおっしゃっていたPreviewについて、僕も『東大読書』という読書法の本を書いた時に仮説として持っていたのは、本を読めない人たちは、本を読む際の下見ができていないのではないかということでした。例えば、国語の現代文の入試問題なんかも、一番最後に書かれているタイトルを最初に確認するだけで、その文章が読みやすくなります。それなのに、そのような下見をする人は少ないと考えているのですが、Previewについてはどのように教えられているのですか?

おっしゃるとおり、事前に情報を確認しておくことは読書の負荷を下げてくれますよね。これは「トップダウン処理」と呼ばれる読書スタイルで、フォーカス・リーディングの指導でも非常に大事にしている部分です。読んでいる最中も、章のタイトルや見出しを丁寧に処理することで続く文章の処理スピードと理解度が大幅にアップします。そしてしっかりと読み始める前段階として、スキミングという速読技法で1冊全体を10分から20分ほどで読んでおくのも、学習効果が非常に高くなるのでオススメです。

それと関連して、下読み(Preview)の後におこなうQuestionも重要です。これは、どこにフォーカスしてその本を読むかという問いを立てるということです。売れているからとりあえず読む、というように、読書に対する目的意識がない人が多いのではないかと思いますが、この本に何が書かれていて、どんな価値を自分に提供してくれるのかを読む前に確かめておかないと、読書の価値は半減してしまいます。

——何かを学びたい人は、ただ読むのではなく、本から学びたいことを明確にしてから読むのでなければダメだということですね。

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この記事を書いた人

東京大学文学部。世帯年収300万円台の家庭から東大へ合格。現在学業の傍ら、ライター、作家活動や講演活動を通して逆転合格のノウハウを広める。日刊SPA!、プレジデントオンライン、東洋経済オンラインにて連載経験あり。ゲームとマンガが趣味。

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