医学部医学科の入試では、国公立・私立を問わず、多くの大学で面接試験が実施されています。筆記試験の成績が十分でも、面接試験の成績によっては不合格となる大学もあると言われているため、面接対策にも気が抜けません。
しかし、面接対策は、一般的な入試対策に比べて、やり方がわからない人も多いはず。それに、筆記試験同様、面接試験も大学によって出題内容や形式が異なるため、何から始めたらいいのか迷っている受験生も多いでしょう。
そこで今回は、実際に面接試験を経て東京大学の理科3類(多くが後期課程で医学部に進学)の入試に合格し、現在も医学部で学んでいる榎本さんに、医学部の面接とはどういうものか、よく聞かれる質問は何か、実際にどんな対策をしたかなどについてインタビューしました。
この記事を見て、医学部面接への具体的なイメージを固めていきましょう!
医学部入試における面接試験の特徴
ー今回はありがとうございます! 早速ですが、そもそも医学部の面接はどんなものなのかざっくり教えてください。
榎本:まず、医学部の入試における面接は、医師になるのにふさわしい人物かという人物像を見たり、特に私立大学では、さまざまな大学がある中で、どうしてその大学を選んだかという志望理由を見たりするために実施しているものだと思います。
この面接を医学部の入試で実施していない大学は、ほとんどないはずです。それくらい、日本における要請として、医学部に入る人の人物像を見てほしい、というものがあるのでしょうね。ちなみに東大の理科3類(以下、理3)は、全国の医学部の中でも面接が導入されたのがかなり遅い方だそうです。あくまでも想像ですが、学力重視だった風潮があったのかもしれません。
ーそうなんですね。では、面接は実際どのように進行されるのでしょうか?
榎本:私が受験した時は、まだコロナ禍でさまざまな制限がかかる前だったこともあり、対面で実施されました。オンラインで実施するというのは、当時は他の大学でも聞いたことがなかったです。現在は少し変わっているかもしれませんが…。
私が受けた面接は、教員2〜3人に対して受験生が1人という形式でした。ただ、形式は学校によってバラバラなはずで、例えば私が当時受験を検討していた私立大学の一つは、受験生1人が5つくらいの部屋を巡回し、各部屋で教員と一対一で別々のテーマについて話す、という形式だったようです。他にも、グループ面接が実施されることもあると聞いたことがあります。
ー異なるテーマについて個人面接を複数回実施する形式は、MMI(multiple mini interview)と呼ばれているそうですね。大学ごとに本当にさまざまなやり方があるのですね。
榎本:形式面もそうですし、特に私立大学の場合には、大学ごとに特色や求める人物像がさまざまです。これについては、各大学がアドミッションポリシーというものを出していて、そこで求める人物像や受験生に期待することを明らかにしています。また、オープンキャンパスなどでは、学生や教員と実際に話したり、パンフレットを貰ったりしてその大学について知る機会が提供されています。こうした機会を活用して、自分の志望する大学に合わせて対策するのが重要だと思います。
よく聞かれる質問・実際に対策した質問・当日聞かれた質問
ー榎本さんが実際に対策した質問、当日聞かれた質問はありますか?
榎本:東大では、理3に出願する人のみ願書と一緒に400文字程度の志望理由書を提出する必要があります。私はその志望理由書に書いたことを中心に聞かれるだろうと思い、志望理由書に書いたことについて事前にちゃんと確認しておき、そこから話を膨らませられるようにしました。
ー大学側からしたら、受験生の人となりについて知る術はそれしかないですもんね。ちなみに、榎本さんはどのようなことを志望理由書に書きましたか?
榎本:私が志望理由書に書いたのは、医療格差をなくしたいという話です。私は小学生の時にアルジェリアに住んでいて、現地でインフルエンザにかかってしまったことがあります。現地の大使館の医務官の人が診察してくださり、回復することができました。
ところが治ってから学校に行ったところ、現地の友達から「なんでインフルエンザにかかったのに生きてるの」と言われ、各国で提供されている医療技術の差が大きいことに衝撃を受けました。
また高校生の時には、医療ボランティアとしてフィリピンに2度行き、そこでも改めて医療格差を目の当たりにしました。さらに、自分なりに勉強していくと、日本国内でも地域等による格差があるとわかってきたので、国内外問わず医療格差をなくしたいと思うようになった、ということを書きました。
ーとても立派な志望理由書ですね。僕自身榎本さんとは何度も一緒に働いたことがあったのですが、そんな経緯があったとは全く知りませんでした(笑)。
榎本:構成は工夫しましたけどね(笑)。いずれにせよ、この志望理由書をもとに面接対策をしました。
ーなるほど。実際に受験こそしなかったものの、他大学もある程度検討していたとのことでした。そちらはどのように対策しましたか?
榎本:前述した通り、オープンキャンパスや入試説明会をやっている大学には行ける限り行きました。特に、高1の夏休みには本当にたくさん行きましたね。そこでは、大学の面接官を実際にやっているような先生たちが、大学の特色やどういう学生を求めているかとかを詳しく説明してくれるので、それをメモしておき、いざ出願する際にそれに沿うように志望理由を組み立てました。
私は、個別指導など特別な面接指導は受けませんでした。高1の段階では他の私大の医学部も受けようと思っていましたが、最終的には、常識的な受け答えができればいいと言われていた東大理3のみを受験したので、面接対策にはあまり時間を割かなかったです。もちろん、先ほど話題に出たMMIのような独特な面接をする大学を受ける場合には、特別に面接対策したほうが良いと思います。
また、とある大学では、自分がこれまでに受賞した賞状やトロフィー、資格試験の結果などを全て面接に持っていく必要があります。提出できる資料がたくさんある人は、ファイリングして物理的に見せやすくするとか、質問されてもぱっと答えられるようにするなどといった対策も必要になります。
ーやはり、大学ごとにどんな面接形式かを把握しておくのが重要ですね。大学のホームページや募集要項でも、アドミッションポリシーや大学の理念、学長あいさつなどを見ることができるので、その辺りの資料も読み込んでおくのがよさそうです。
東大理3の試験では、当日面接官からどんなことを聞かれましたか?
こちらが事前に調べたところによると、一般によく聞かれる質問としては、以下のようなものがあるようですが…。
・その大学・医学部の志望理由
・入学後にやりたいこと
・理想の医師像
・長所・短所
・中学・高校で取り組んだこと
・併願校について
・浪人や再受験の理由
榎本:最初は志望理由を説明してくださいという質問から始まり、その後も、上記のような定番の質問以外は聞かれませんでした。その点では、準備が功を奏したといえます。
ただ、答えに詰まってしまった質問もありました。
「一人ひとりの患者さんをみられる、ケアできる医師になりたいと言ったが、患者をケアするのに、なぜ看護師ではなくあえて医師を選ぶのか」というものです。
これには「確かにそうだな」と思ってしまいました(笑)。事前の対策ができていなかったので、その場で正直に、看護は考えていない旨を伝えました。これでも合格したので、正直に伝えることも大切なのかもしれませんね(笑)。
いずれにせよ大切なのは、面接官に突っ込まれそうなことを事前に想定しておくことです。実際に私が聞かれたような「なぜ他の職種ではダメなのか」「志望理由を踏まえて、改めて医師を選ぶ理由はなにか」という類の質問などにも答える準備をしておく必要があるといえます。
ーそうですね。予期せぬところから質問が飛んでくると、ただでさえ緊張しているのに、余計焦ってしまいそうです。
当日気をつけるべきこと・その他注意点
榎本:当日は待ち時間がすごく長い場合があるので気をつけたほうがいいです。受験番号にもよりますが、私は2時間待ちました。なので他大学の試験がまだ残っている人は、勉強道具を持っていくことをおすすめします。私は、面接の後に他大学や国公立の後期入試を受ける予定がなかったので、時間を潰すための本か漫画を持っていきました。
シーンとした講堂の中でいつ呼ばれるかも分からないまま待つので、緊張感が高まってしまう人もいます。スマホなどの電子機器を使えない場合もあるので、参考書や本、自分を落ち着かせるアイテムなどを持っていきましょう。
ー服装などでなにか気をつけたことはありますか?
榎本:私は制服で行きましたが、清潔感があって過度に派手でなければ問題ないと思います。
ーそうなんですね。そういえば、面接での質問内容について、時事問題やニュースなどについて押さえておいたほうがいいという話を聞いたことがあるのですが、これについてはどうでしょうか?
榎本:例えば、自分からIPS細胞に関する研究したいと言っておきながら、それに関する重大なニュースを知らなかったら「何だこの受験生は!」とはなるかもしれません(笑)。
つまり、自分の志望理由に関わるニュースや時事問題があるなら、知っておくべきだと思います。逆に、志望理由書で何も言及していないことを唐突に聞かれることは、東大ではあまりないと思います。
可能性としてそのようなことを聞かれるのは否定できませんし、大学によっては時事問題に対する意識を重視しているところもあるでしょう。結局は、志望する大学が求める人物像をよく知ることに尽きると思います。
ーそういう意味では、東大の求める人物像を詳細に研究する必要はなさそうに聞こえてしまいます。
榎本:そうですね。東大は入試後に得点が開示されますが、面接には得点がついていません。よって、合格最低点を上回っていたのに落ちた場合にのみ、その人が面接で落ちたことがわかるようになります。ただし、そのような人は数年に1人いるかいないかのレベルなので、そういう人がいるとSNSで話題になります(笑)。
この情報から判断するに、東大の面接は加点方式ではなく、不安要素のある人を振り分けるための材料でしかないと考えられます。大学によっては、明確に配点がある大学もあるはずですが。
ーなるほど。最後に、何かアドバイスはありますか?
榎本:最近、実際に後輩から相談を受けたことがあります。中高時代に不登校だった、欠席遅刻早退が多かった、受験の点数は高いが学校成績が低かったなど、高校から大学に提出する内申書関連で何かしら突っ込まれそうな事情がある場合は、それらについてうまく理由付けをしておくといいと思います。
というのも、たいていの医学部では全部の授業が必修で、大学生でもほぼ毎日学校にいかないといけません。あなたがちゃんと大学に通い続けられるかは大学側も知りたいでしょう。
また大学によっては、小論文が必要な大学があります。東大は事前に提出した志望理由書を基にして面接する形式ですが、小論文も必要となると、受験本番、面接前日や当日に書いたものが面接で聞かれることもあります。その場合、家で志望理由書を書く場合とは異なり、試験中に書いた内容を直前に見返せず、自分で書いたことを忘れてしまいかねません。
面接官から「自分で書いたことだよね」と突っ込まれないように、小論文試験終了後には要点をメモしておくなど、万全な対策をしてみてください!
ーとても実践的なアドバイスですね。ありがとうございました!
医学部の入試で行われる面接について、具体的にイメージしていただけたでしょうか。このインタビューが、これから面接に向けて対策するあなたの参考になることを願っています。
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