東大生が考える「語彙力を鍛える方法」〜言いたいことを理解し伝えるには?〜

東大生が考える「語彙力を鍛える方法」〜言いたいことを理解し伝えるには?〜

「相手を誤解させてしまった」「なんとなく気持ちがモヤモヤする」「結局、何が言いたかったのだろう」
こんなこと思った経験はありませんか?

みなさんが日々抱えるこのような悩みを解決する上で重要になってくるのが語彙力です。
言葉を使って生きる私たちにとって、語彙力はさまざまな場面で役に立っています。

本記事では「語彙力とはなにか」「どうやれば語彙力が増えるのか」など具体的な方法を紹介していきます。

目次

語彙力とは

「語彙力」と聞いて何を思い浮かべますか。

ネットやSNSなどで、より適切な表現や気持ちを表したいが、なんと言えばばいか思いつかない人が、「あ〜語彙力がない」と言っているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか。

他にも、数年前からポジティブな意味でもネガティブな意味でも使える「まじ」「やばい」などの表現が多用されていることに対して、「語彙力がなくなってきている」と言われるようになってきました。

この「語彙力」とは、知っている単語の「量」とどのくらいの「質」でその単語を理解し使いこなせているか、を表します。つまり語彙力には「量」と「質」それぞれで考える必要があります。

語彙力があることによるメリット

語彙力が乏しい・語彙力がないことが、よく叫ばれるようになりましたが、語彙力があるとどんな良いことがあるのでしょうか。語彙力がない場合と比較しながら紹介していきます。

①    読解力が高まる

みなさんが1番イメージしやすいのはこちらではないでしょうか。本やメールなど、文章を読んでいてさまざまな壁にぶつかった経験はないでしょうか。

例えば、文章を読んでいて知らない単語を見つけた経験。打ち合わせ後に、会議していた先方からこんなメールが届きました。『本日も侃侃諤諤な議論をしていただきありがとうございました。』皆さんは『侃侃諤諤』という言葉を知っていますか。この時に語彙力がないひとだと、四字熟語の意味がわからずにメールの返信に時間をかけてしまう、後回しにしてしまう、最悪の場合にはそのまま忘れてしまうことが起こってしまいます。

しかし、語彙力があるひとですと言葉の意味を瞬時に理解し、即座にメールの返信をすることができます。単純に知っている言葉の数が多いほど対応できる場面が増えていきます。なお、『侃侃諤諤』の言葉の意味自体は、議論が活発に行われて様子を表しているものです。

他の例も考えてみましょう。知っているけどよく意味がわからない経験。部下に仕事を依頼した際の返事が次のようなものでした。『提示してくださった案件ですが、自分が行うことはやぶさかではありません。』どんな意味にとったでしょうか。イラッとしたあなたは意味を取り間違えているかもしれません。

語彙力がない人はここで部下が仕方なく仕事を引き受けていると解釈してしまいます。しかし、語彙力がある人は、この部下は喜んで仕事を引き受けようとしてくれていると理解できます。このように、言葉の意味を知っていても適切な使い方ができないと全く違う意味になってしまうのです。

②    コミュニケーション力

語彙力は対人での会話に重要なコミュニケーション能力にも密接に関わってきます。会話の場面で語彙力が足りないと、失礼な表現を使ったり、誤解の元となったり、関係の悪化に繋がったりしてしまうので注意をする必要があります。

例えば、あなたが取引先と、雑談していた時。

あなた:私の部下が投稿しているYouTube見ました?
取引先:みました!
あなた:ほんと!もう失笑しちゃいましたよ!
取引先:さすがにそれは失礼だと思いますよ……。

取引先の人はなぜ怒ってしまったのでしょうか。語彙力がないとこのように気がつかないうちに取引先に誤解を与えてしまい、取引に悪影響が出てしまうこともあります。この例ではあなたの『失笑』の使い方はあっています。そして取引先の『失笑』の意味の捉え方はおそらく間違えています。しかしそれは、言葉の意味を知っているにすぎず、コミュニケーション能力につながる語彙力があるとは言えないでしょう。

『失笑』という言葉には、あきれて笑うこともできないという意味を持つといった間違った使い方も、一般的にはされていることを理解しておく必要があります。それは、単語の意味をただ知っているだけでなく、実際どのようにその単語が使われているかまで理解していることを示しています。

なお、『失笑』の言葉の意味は我慢できずに思わず笑ってしまうことです。

③    思考の整理

人が考え事をするとき、自分が一番使用している言語を使って思考することが多いです。その際に語彙力があるとより思考の幅を広げることができます。

例えば、転職をするかどうかで悩んでいる時。なぜ今いる会社を辞めたいのか、もしくはなぜその特定の会社に中途採用されたいのか。考えることが多いと思います。その際に、自分の軸はどこにあるか検討するかと思います。

家庭を優先させる。社内の雰囲気を大事にしたい。やりがいのある仕事をしたい。その時に、語彙力のない人はそこで終わってしまいます。

一方で語彙力のある人は、じゃあどのような時に家庭を優先させるのか、優先って具体的に何をするのか、家庭の範囲は、などなどさまざまに状況の整理を行うのです。

語彙力はこの思考を行う際に、多様な表現を使い言い換えることで自分の思考の言語化を手伝ってくれるのです。言語化できた思考は更なる思考につなげることができるだけでなく、面接などで人に話す時などに大いに役に立ってくれます。

④    感情の整理

語彙力が持つ力は感情にも影響を与えます。語彙力というと論理的なものの気がして感情とは相容れないように感じるかもしれません。実際はどうなのでしょう。

例えば、夜自宅に帰ってきてなんとなくむしゃくしゃする。いつも仕事が忙しい中、先に帰ってご飯を作ってくれているパートナーに対してなんとなく当たってしまった。こんな経験ありませんか。

ここで語彙力のない人は、「これは感情のせいだから仕方ない」「寝れば治るだろう」そう考えて気にせずに過ごし、また同じ過ちを繰り返します。

語彙力のある人は、ここで「むしゃくしゃする」のは、体がだるいからだ。体がだるいのは、「頭が鋭く痛い」「お腹が締め付けられるように痛い」からだ、と言語化することで、頭が痛いのはここのところ近づいている低気圧のせいである、お腹が痛いのは昼に食べた唐揚げがよく温められていなかったのかもしれない、と考えることができます。

ここから適した頭痛薬を飲んだり、パートナーに理解してもらったりすることができる。そして何より自分に対するわからなさを払拭することができるため、「むしゃくしゃ」が軽減される。感情を語彙力を通じて制御することで、仕事だけでなく日常生活にもポジティブな効果をもたらすのです。

語彙力を鍛える具体的な方法

ここまで、語彙力があることによるメリットを紹介してきましたが、ここから実際に語彙力を鍛える方法を紹介したいと思います。語彙力は今日やったから明日身に付くというものではありません。そして、語彙力がある人も常に更なる語彙力の向上を目指して日々鍛え続けているものです

だからこそ、自分の日常の中に継続して取り組むことのできる方法をぜひ活用してもらいたいと思います。

①    本を読む

語彙力を鍛える方法でまず思いつくのは「本を読む」だと思います。日本語と向き合いながら日々仕事をしている文章のプロたちが編み出す日本語を読むことを通じて、さまざまな表現や言い換えを身につけることができます。

読む本は文学作品や論文などがおすすめですが、語彙力を鍛えるためにはとにかく継続が重要です。自分が興味を持てない内容の本を選んでも続かずに終わってしまうことが多いので、読書が習慣化するまではとりあえず読み切ることが大切です。

読書の方法については『東大読書』に詳しく書かれていますので、ぜひ参考にしてみてください。

②    日記を書く

本を読むことが語彙力のインプットだとするのならば、日記を書くことは語彙力のアウトプットです。自分が1日の中で体験したことを言語化することで日本語表現のアウトプットをすることができます。なんと書いていいかわからない時に、検索したり調べたりすることで、新しい語彙も獲得できます。

1日の日記の中で同じ言葉を2回使わないようにすることもレベルアップの秘訣です。例えば「嬉しい」という言葉を「喜ぶ」「愉しい」などに言い換えて表現すると、1つの感情に対してさまざまな言い方の引き出しが自分自身の中にあると意識することができます。

③    普段から身の回りに疑問を持つ

身の回りに疑問を持つことでも語彙力を鍛える方法の1つです。

例えば、なぜ時計は12の針までしかないのか、もしくは12の針まであるのかと思ったことはありませんか?

時間(英語でhour)を表す時計は、0から11もしくは1から12の数字しか使われない。これは数学の世界では12進法と呼ばれていますが、なぜ10進法が通常使われている世界において、12進法が導入されているのでしょうか。

こういった疑問から時間ってなんだろう、n進法ってなんだろうといった派生した疑問が次々と生まれてきます。そして疑問を解決していく過程で新たな語彙力や知見を習得することができます。ここで得た語彙力は、自分の興味関心から始まったもので楽しく身につけることができますし、定着もしやすいです。 

④    美術館・博物館などに行く

美術館や博物館で芸術作品や歴史作品に触れることも語彙力アップに役立ちます。

作品の中には、当時の作者の背景や感情が説明書きされているものもあります。それを材料に、自分が抱いた感情や感想を、どう言語化するか考えることで、語彙力を鍛える練習になります。

その内容を自分の中で留めるのではなく、一緒にいった仲間と共有しあったりネット上の記事などに投稿してみるのも、他者からのフィードバックが得られるのでおすすめです。

Wide angle portrait of tattooed young woman looking at paintings and listening to audio guide at modern art gallery exhibition, copy space

まとめ

ここまで、語彙力とは何か確認した上で、語彙力があることのメリットとその身につける方法について紹介してきました。

人間が生きていく上で1番目にするのは文字ですし、1番耳にするのは言葉です。

言語を通じたコミュニケーションが日々行われている中で、語彙力はやはりとても重要なものです。その習得方法に終わりはないので、自分が続けられるようなスタイルを習得することが何よりも大切です。

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この記事を書いた人

東京大学では教育哲学専攻。小学校でのボランティアの経験から学校教育のあり方について模索している。趣味は旅行とドライブ。最近は高遠そばのねぎを普通は食べないことを知り、衝撃を受けた。

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