変化の早い今の時代に、子供たちの将来に向けて必要なのは、学校の授業で学ぶ認知能力だけではありません。それと同じくらい重要なのが、非認知能力と呼ばれるテストでは測れない能力です。小さい頃から習い事に通うことで、お子さまが楽しみながら、非認知能力を高めることができるのです。
そもそも非認知能力とは?
そもそも非認知能力とは、学校の成績やテストの点数に関係ない能力のことです。これには、創造力や問題解決力、コミュニケーション能力、そして自己肯定感などが含まれます。AIに仕事を奪われつつある現代社会、そしてこれからの社会ではこういった非認知能力を身につけることが重要になってくるのです。
詳しい非認知能力の一覧はこちらの記事で詳しく解説しています。
非認知能力を高めるには?
非認知能力を高めるためには、小さい頃からの習い事が効果的だと言われています。
習い事は、目標を達成するためのプロセスを通じて非認知能力を高めるのに最適な方法の一つです。習い事を始める前に目標を設定し、その達成のために練習を重ねることで、自己管理や忍耐力を養うことができます。また、習い事を通じて自分が得意なことや苦手なことを知ることができます。これにより、自己認識が深まり、自分自身の強みや弱みを把握し、それに合わせた努力をすることができるようになります。
幼少期に非認知能力が伸びるのはなぜ?
習い事を何歳からはじめたとしても、遅すぎるということはありませんが、早い方が教育的効果が高いことが期待されます。できるだけはやい時期から習い事をはじめた方がいいのはなぜでしょうか。
脳が柔らかい
まず、幼少期は脳の発達が活発な時期です。幼少期は脳の神経回路が形成される時期であり、新たな経験や学習によって脳の結合が強化されます。つまり、大人よりも入ってきた情報を受け取る力が格段に高いのです。この時期に様々な経験を通じて非認知能力を刺激することで、持続力や自己管理などの能力が育まれやすくなります。
好奇心や探究心が旺盛
次に、幼少期は好奇心や探求心が旺盛な時期です。幼少期の子供たちは、自然と新しいことに興味を持ち、積極的に学びを求めます。この好奇心や探求心を活かす習い事や体験を通じて、問題解決能力や創造性といった非認知能力を育むことができます。
模倣学習がしやすい
さらに、模倣学習がしやすい時期、つまり習い事で学んだことを日常に取り入れやすい時期です。
まねっこ遊びが好きなお子様が多いことからもわかるように、幼少期の子供たちは、周囲の大人や他の子供たちの行動や言動を積極的に観察し、模倣します。そのため、良い手本となる大人や指導者との関わりを通じて、社会的なスキルや共感力などの非認知能力が発展します。
習い事選びのポイント
子供の習い事は、学力向上だけでなく、非認知能力の育成にも大きな役割を果たします。では、どのような習い事が非認知能力の向上につながるのでしょうか?習い事選びには大きく三つのポイントがあります。
コミュニケーション能力が伸びるか
コミュニケーション能力は、人間関係や社会生活において重要なスキルです。学校生活のみならず、習い事でもコミュニケーション能力を伸ばすことを意識すると、同時に協調性や主体性も伸ばすことができます。
効果的な習い事として、例えばサッカーや野球などのチームスポーツが挙げられます。それぞれが役割分担し、協力して目標を達成することで、コミュニケーション能力やリーダーシップ能力が向上します。
忍耐力や集中力が身につくか
忍耐力や集中力が身につくと、勉強への集中力も上がり、継続的に学習できるようになるため、認知能力の向上も期待できます、また、ストレス耐性や困難への対処能力も培うことができます。これらを身につける習い事として、例えば絵画や書道、ピアノなどが挙げられます。長時間かけて取り組み、完成させることで、忍耐力や集中力が向上します。また小学校から、あわよくば高校や大学まで長期間続けることのできる習い事なので、一つのことをやり抜く力も鍛えられます。
創造力が伸びるか
創造力がある人は、日常の困難に直面した際の問題解決能力が高かったり、自己表現が豊かになるなどの特徴があります。創造力を伸ばす習い事として、例えばダンスや音楽などが挙げられます。ダンスやピアノ、歌などは自分の考えを自分なりに表現することが求められるので、創造力や表現力が飛躍的に向上します。
これらのポイントを踏まえ、子供の習い事を選ぶ際には、その習い事がどのような非認知能力を育むことができるかを意識してみてください。
非認知能力を育てる習い事6選
今まで述べてきた非認知能力が伸びる習い事は具体的にどのような習い事でしょうか。ここでは六種類の習い事を紹介したいと思います。
プログラミング
2020年度より、小学校でプログラミングの授業が必修となりました。
コンピューターやアプリが切り離せない存在となっている現代において、それを使ったり消費するだけでなく、理解して作り出せる人間を育てたい、というのがプログラミング教育の目的です。またコンピュータに対してのみではなく、物事を整理し、論理的に考える力や行動力の育成も期待されています。
なお、幼少期のプログラミング教育の目的は、プログラミングスキルの定着ではなく、プログラミング的思考の定着です。正解のない問いに向かう学習として、注目を集めているのがプログラミング教育なのです。
プログラミング学習では、失敗を繰り返し続けることが前提なので、失敗を恐れず挑戦していく力が身につきます。また、一人で画面を操作するだけでなく、組み立てブロックを使うなど手先を動かす過程があったり、チームの仲間とコミュニケーションをしながら一緒に取り組めるような内容もおすすめです。
ピアノなどの音楽系
楽器を習うことの最大のメリットとして、音感やテクニックなどが注目されがちですが、指先を動かすことで非認知能力の向上が期待できます。指先を動かすことは、非認知能力と密接に関係している前頭前野を鍛えるのに最適だからです。
音楽はスポーツのようにスコアが出るわけではありません。どこまで練習するかという判断など、困難を乗り越える力が身につきます。
音楽系でメジャーなのはピアノではないでしょうか。ピアノは左右異なる指の動きが求めるため、脳の成長に非常に効果的だと言われています。ピアノは人気があるだけあって、教室の種類も多く、個別レッスンやグループレッスンなど形態の幅も広いのが特徴です。
しかし、最近はバイオリンやトランペットなどの楽器を習っている子も増えています。近年では、ピアノだけでなく、ギターやドラムなど、さまざまな楽器を子どもの頃から習うことができます。お子様が一番楽しいと思える楽器を選択することが重要です。
ボーイスカウト
ボーイスカウトは、基本的には野外での外遊びを中心とした活動をチームで行っています。
キャンプをしながら料理はもちろんのこと、ロープの使い方、手旗信号などといった知識や技術を習得します。様々なスキルを習得するごとに、級が上がっていくので、隊員のやる気や達成感を引き出してくれます。
ボーイスカウトやキャンプなどの習い事では、リーダーシップや協調性などの非認知能力が身に付きます。チームを組んで、さまざまな決まりの元、リーダーシップや協調性、友情を育む内容となっており、異年齢での活動もあるため、上級生がリーダーとなり下級生を導いたり励ましたりする場面も多くあります。
そのような、集団活動を続けることで、成功体験や失敗体験を積み重ね、子どもたちには自然と「生きる力」が身に付くのです。
ダンス
ダンスと言えば、ストリートダンスやチアダンスなどたくさんのジャンルのダンスが習い事として確立されており、楽しく入り込むことができる習い事だといわれています。手足をしっかり動かす運動でもあり、またチームで協力して踊ることも多いので、非認知能力を伸ばす面でも魅力的です。
ダンスでは、豊かな感受性や人前で自信を持って表現する力など、自己表現力を育むことができます。
一見、個人競技のようにみえるダンスも、実際は発表会に向けてみんなと協力して練習に励んだり、自分のパートに責任を持ち、一つの作品を作り上げたりと、社会性や協調性も大いに育まれる習い事です。ずれているところを指摘しあい、上手くいかないところはお互いに教え合う中でコミュニケーション力も向上するでしょう。
なお、見た目は華やかですが、指導や競争が厳しい場合もあるので、教室の雰囲気をよく見て、子どもに合いそうなところを選ぶことがおすすめです。
水泳
スイミングは、子どもの習い事として歴史も長く、人気の習い事の一つです。
目標を達成するためのノウハウが明確で、一人一人が自分のペースで成長できるので、非認知能力も伸ばしやすいといえます。泳ぐことに慣れていない子どもの場合、少人数で一人一人のペースに合わせてくれるところがおすすめです。
水泳といえば個人競技と思う方も多いかもしれませんが、多くのスイミングスクールが集団指導です。集団で同じ練習をする、わがままを言わずに練習をすることから集団行動や協調性、社会性が身につきます。また、一緒に練習している友達よりも上手になりたい、といった競争心も芽生えることでしょう。
古くからスイミングが人気の理由として、泳げるスキルはおぼれた時などのいざというときに、自分で自分の身を守れるということが挙げられます。また、水泳は他のスポーツ系の競技と異なり、利き手利き足による運動量の差がほぼなく全身運動を行います。つまり、左右差なく全身での運動であるため、全身の筋肉をバランスよく鍛えられます。体を鍛えるという意味でも、自分の身を自分で守るという意味でも、水泳はおすすめです。
チームスポーツ
スポーツでは、チームメイトとのコミュニケーション・協調性はマスト!
さらに、チームメイトがいることから、お互い支え合い最後まで諦めずにやり抜く力も自然と身につくでしょう。
スポーツ経験、特にチームスポーツの経験のある子どもは、自制心、忍耐力、目標思考などの非認知スキルが高くなる傾向にあります。集団スポーツだと、いくら個人の能力が高くても、コミュニケーション力などを使って周りとうまく協力しないとチームとしてのまとまりを失い、試合で勝つことはできません。
また、ひとりで目標に向かって取り組むのではなく、仲間と一緒に取り組んでいくのが団体スポーツです。ひとりだと諦めてしまうような場面でも、仲間がいれば支え合いながら取り組み続けられるお子様も多いと思います。諦めずに取り組み続けた結果として、目標に向かってやり抜く力が育成されることが期待されています。
多くの東大生がやっていた習い事
実際に100人の東大生を対象に、経験したことがある習い事についてアンケートを取りました。
習っていた東大生が一番多い習い事は?
その結果、経験したことがある習い事として一番多いのは学習塾でした。やはりどこかのタイミングで学習塾に通っていた人が多いようです。学習塾に通い始める時期は小学校高学年が最も多く、学習塾に通ったことがある人の4割以上も占めていました。一方で、一回も学習塾に通ったことがない人は全体の12%もいました。学習塾は中学受験や高校受験、大学受験を見据えて、純粋な認知能力向上のために通っている方が多いようでした。
非認知能力を高めるのに一番有効なスポーツ
続いて、東大生が学習塾とほぼ変わらない比率で経験したことがある習い事が、スイミングです。全体の64%が通ったことがあり、運動系の習い事の中では2位に差をつけて最も多いです。
スイミングには集中力を高める効果があります。水の中での動作は、正確さと瞬時の判断力が求められます。水中でバランスを保ちながら、テクニックや呼吸法を意識して泳ぐことは、子供たちの集中力を養うことにつながります。スイミングは全身の筋肉を満遍なく使う競技のため、心肺機能の強化や免疫力の向上が期待されています。
また水泳は、脳の空間認知能を鍛えることにも繋がり、算数などの能力向上にも役立つとされています。サマースクールが開校されていることも多いため、比較的手軽に通うことができる上、同年代のお子様との関わりも多いのでコミュニケーション能力の向上が期待されることも、ここまで数字が大きい要因なのでしょう。
意外と多い?ピアノ学習
続いて多いのはピアノです。上でも指摘したように、ピアノは忍耐力や集中力を伸ばす効果がある上に、創造性まで磨ける習い事です。難しい曲やテクニックに取り組む際には、継続的な練習と努力が必要です。
東大生の中には実際にピアノを高校生や大学まで続けていた人も多く、間違いや困難に直面しても諦めずに取り組む中で、忍耐力がついたと答えてくれました。また、自主練の習慣が必要なため、主体的に学ぶ力が身についたと答える人もいました。
ピアノに通っていた人のうち、約六割の人が3〜5歳の時に習いはじめており、比較的幼い頃からピアノに触れる人が多いことがわかります。
その他にもチームスポーツとして代表的な、サッカー、野球、バスケを習っていた人や、習字や空手など高い集中力が求められる習い事、バイオリンや合唱など創造性が必要とされる習い事など様々な習い事を習っていることがわかりました。
まとめ
いかがだったでしょうか。今までたくさんの習い事とそのポイントを上げてきましたが、最も大事なことはお子様がその習い事を「好き」でいられるか、「やりたい」と思えるかです。記事の中でお伝えしたポイントに注意しながら様々な習い事にチャレンジしてみて、一番お子様が熱中できる習い事を続けてみてください。