なぜ「考える力」が重要なのか
昨今、話題になっているAI技術の発展。これまで人間が行ってきた多くの業務が、AIによって代替されうる時代となってきました。株式会社野村総合研究所と英国オックスフォード大学の准教授や博士との共同研究によると、日本の労働人口49%が就いている仕事が、機械によって代替されうるということを示しています。そのような中、人間にのみ生み出せるものとはなにか、ということが重要性を持ち始めています。本記事では、AI時代を生き抜く鍵のひとつである「考える力」について考えていきます。
そもそも「考える力」とは?
そもそも「考える力」とは、具体的にどんな力なのでしょうか。考える力と似た言葉に、思考力があります。思考力とは、自分自身の問題や課題を深く理解し、それに対する適切な解決策を導き出す力のことです。つまり、ただ情報を受け取るだけでなく、それを分析・評価し、自分なりの意見や判断を導き出すまで考え抜く能力を指します。
この能力は、単に問題解決に関することだけでなく、社会や人間関係においても非常に重要な能力となります。自分自身の行動や言動を客観的に見ることができ、周りの人々とのコミュニケーションも円滑に進めることができるためです。
現代社会では考える機会がどんどん減っている?!
近年、情報化が進み、手軽に情報を入手できるようになった一方で、その情報の洪水の中で自分自身で考える時間や機会が少なくなっていると言われています。
例えば、スマートフォンやタブレットなどのデバイスが普及したことで、いつでもどこでも情報を得ることができるようになりました。しかし、これによって情報過多に陥り、その情報を自分で整理して判断することが困難になってしまったきているのです。
以上のような状況において、「考える力」はますます重要な能力となっています。情報過多の中で思考停止に陥らず、自分自身で問題や課題について深く考えることができる人こそが、今後の社会で活躍するために必要な人材となるのです。
考える力がある人が成功しやすいわけ
世の中に目を向けると、自分の目標ややりたいことを順調に達成しているように見える人がいます。彼ら彼女らは、なぜそんなに物事がうまくいくのでしょうか。実は、その鍵を握るもののひとつに思考力があげられるのです。
情報を収集しやすい
情報は、成功を左右する重要な要素のひとつです。自分の役に立つ情報を取捨選択し、それを自分の味方につけて行動することが、好機を逃さずに自分のものにするうえで大切となってきます。
考える力のある人は、情報を収集し、整理することが得意です。情報過多に陥りやすい現代社会のなかでも、適切な情報を選別することができ、より正確な判断ができます。例えば、ビジネスにおいては、市場動向や競合他社の情報を収集し、分析することが重要です。そこで、自分に必要な情報を分析し、それに応じて情報を収集して整理することで、より効率的な問題解決につなげることができます。
人間関係を構築しやすい
人脈やネットワークも、仕事などにおいて重要な役割を果たします。知り合いを通して、新たな仕事やプロジェクトに巡り合えることもあるでしょう。
実は、「考える力」がある人は、良好な人間関係を築きやすい傾向にあります。なぜでしょう。思考力のある人は、物事を客観的に見ることができます。相手の立場や状況を冷静に分析し、相手の立場になってものごとを捉えることができるため、他人との意見や考え方を尊重して柔軟な対応ができるのです。例えば、ビジネスにおいては、チームでの仕事が求められる場面が多々あります。そのためには、自分の意見を主張するだけでなく、他人の意見を聞き、状況に適した解決策を提示することが必要です。そのようなコミュニケーションを通して、信頼関係を築くことができ、持続的な関係性を生み出すことが可能となります。
筋道を立てて考えたり物事を進めたりする
「考える力」がある人は、物事を論理的に考えることができます。論理的思考力は、問題解決に欠かせない力の一つです。論理的思考力のある人は、複雑な問題や課題にも冷静に対処し、筋道を立てて解決策を見つけることができます。また、計画的に行動することができるため、目標達成に向けて効率的に物事を進めることができるのです。例えば、ビジネスにおいては、目標を設定し、その達成に向けた戦略を練ることが求められます。そして、その戦略を実行するために、必要なタスクを整理し、優先順位をつけることが必要です。自分の目標や達成したいことに応じて、ものごとを整理し順序立てて仕事を進めることが得意な人は、より短い期間で多くのことを達成することができるのです。
考える力を損なう落とし穴
「考える力」とは、問題解決や判断を行うために必要な能力ですが、その力を損なう落とし穴が存在します。ここでは、考える力を損なう習慣や考え方を3つ紹介します。
現状に甘んじてしまう
現状に満足してしまうことは、裏を返せば成長する機会を失っていることを意味します。自分自身の能力や置かれている状況に満足してしまうと、改善する努力をしなくなります。すぐに「このままでいいや」と思ってしまうことは、批判的思考力を使って物事を客観的に捉えることを怠っているといえます。向上し続けるためには、自分自身の能力や置かれている情報を、俯瞰的に捉えて改善をする必要があるのです。
自分以外のもののせいにしてしまう
失敗や問題が発生した際、自分以外のもののせいにしてしまっていませんか。例えば、職場でミスをしてしまったときに、上司の指示がわかりづらかったからとか、部下が確認しなかったからといったように、無意識に自分以外を要因探してしまっていないでしょうか。何か悪いことが起こったときには、実際に口に出さなくても、頭の中でほかの人やものごとに責任転嫁したくなってしまうものです。それ自体は自然なことですが、そればかりでは考える力は衰えるだけとなってしまいます。失敗や問題が起こったときに、頭を冷やして原因を自分自身で分析し、改善する努力をすることが、考える力を強化するのです。
目標やゴールがない
目標やゴールを持っていないと、考える力を磨くことが難しくなります。目標を持つことは、問題解決や判断を行うために必要な情報を収集し、方向性を定めるきっかけを与えます。ゴールや目的もなく、闇雲にものごとに取り組んでいては、筋道だてて考えて行動する機会がどんどん失われて成長を得ることができなくなります。すなわち、目標やゴールというのは、思考力を鍛えるためのとても有効なツールなのです。ゴールを設定することで、それを達成するために計画を立てたり、必要なスキルや知識を身につけるために自発的に情報収集したりするようになります。
考える力を養う3つの習慣
それでは、どうすれば考える力を身に着けることができるのでしょうか。ここでは、すぐにでも始められる思考力を鍛える習慣を3つ紹介します。
疑問を持つ・質問する
批判的思考力を鍛える最も有効な手段が、疑問を持つ癖をつけることです。しかし、いきなり疑問を持ちながら生活するように言われても、なかなか難しいと感じるかもしれません。そこで、おすすめなのが、質問する習慣を身に着けることです。たとえば、セミナーや講演会で、ついつい受け身の姿勢で聞いているだけになっていませんか。そこで、質疑応答のときに必ず一つは質問やコメントをするように意識してみましょう。そうすることで、疑問点などを見つけようと能動的に話を聞くようになり、思考力を十分に活用することができるのです。
相手の話をじっくり聞く
考える力を身に着けるためには、考えるための素材が必要です。それでは、どこからその素材を見つければよいのでしょうか。実は、その素材は、日々の対話に隠れているのです。相手の話に耳を傾け、それをじっくり咀嚼することで、ものごとを深く理解し、異なる視点で物事を捉える習慣を自然と身に着けることができます。また、相手の立場や状況を踏まえて適切な応答をするように心がけることで、ものごとを客観的に分析して最適な策を講じる練習を積むことができます。すなわち、周りの人の話を聞き流さずに、しっかり耳を傾けることで、日頃から思考力を鍛えられるようになるのです。
つねに改善点をさがす
思考力を損なう習慣のひとつに、現状に満足してしまうことがあげられていました。しかし、それは裏を返せば、日頃から改善点を探す習慣を身に着けることで、考える力を養うことができることを意味します。それでは、具体的に何をすればよいのでしょうか。まずは、日々の生活や仕事を振り返って、少し不便に感じたり歯がゆいなと感じたりすることがないか考えてみましょう。通勤時間が長いなど、些細なことでも構いません。そして、どうすればその状況を改善できるか考えます。例えば、通勤時間が長くて億劫に感じているのであれば、その時間をどうすれば有効活用できるかや、リモートワークに切り替えることはできないかなど、改善策を思いつく限りあげてみます。なかなか思い浮かばない場合は、ほかの人に聞いてみて話し合うのもよいかもしれません。このように、積極的に改善策を見出す努力をすることで、おのずと問題解決能力が身に着くのです。
まとめ
考える力は、現代社会を生き抜くうえで欠かせないスキルですが、一朝一夕に身に着くものではありません。しかし、日々の思考を見直し、日常のなかで考える機会を増やすことで、着実に鍛えることができます。本記事の例を参考に、思考力を磨いてみてはどうでしょうか。