「脳」の勉強はどこでできる?現役理系大学生が徹底解説!

なんとなく、脳の構造や機能に興味があるけれど、どの学部に進学したらいいのかわからない。

そんな悩みを解決するために、現役薬学部生で脳の研究をしている筆者が、脳の研究ができる学部とその内容を、徹底解説していきます。

脳科学に限らず、学部選択に使える考え方も紹介しているので参考にしてくださいね!

目次

 「脳科学」とは?神経科学や心理学との違いも解説!

そもそも脳科学とは何を指すのでしょうか。

心はどこから生まれるのか。なぜアルツハイマー病になるのか。記憶のメカニズムは何か。

脳科学と一言で表しても、細かく絞っていくとそれぞれ全く違う分野の疑問であることが分かります。まずはそんな「脳科学」の分野とさらにその下位分野について解説していきます。

 「脳科学」は分野の総称

脳科学は文部科学省の定義によると「認知、行動、記憶、思考、情動、意志など、人間の心の働きを生み出す脳の構造と機能を明らかにすることを通して、真に人間を理解するための科学的基盤を与えるもの」です。つまり脳に関わるすべての学問を脳科学と呼んでいるのです。

脳科学は他の学問に比べて比較的最近確立した分野です。そのため、脳学部がないことはもちろん、脳そのものを多角的に学べる学部もほとんど存在しません。そうではなく、脳をどのように研究したいかによって勉強する学部・学問は異なってくるのです。

脳神経科学

脳科学といって多くの人が想像するものが脳神経科学ではないでしょうか。

脳神経科学とは、ヒトを含む動物の脳と、脳が生み出す機能について研究していく学問です。つまり、脳や神経系の構造や機能などを研究する学問分野のことです。認知症やうつ病などの、脳に関する疾患も取り扱います。

古くから医学・生物学分野では脳の研究は盛んに行われてきました。近年では古くから続く研究に加え、ロボットや機械学習への応用、そしてブレイン・マシン・インターフェースと呼ばれる技術の研究開発も行われています。

心理学

心理学では、人が何か行動を起こすきっかけは心にあると考え、ある人の発言や起こったことに対して、被験者がどのように反応するかを客観的に分析する学問です。

うつ病などの精神疾患の心理療法を行う、臨床心理士や公認心理士になるためには心理学を学ばなくてはなりません。心理士による心理療法はカウンセリングの面が強く、患者の話を聞き、寄り添いながら心の健康のためにサポートしていきます。

認知脳科学

認知脳科学は、人間の認知機能とその神経基盤を解明することを主な目的とします。

人間に特有の思考、言語、意思決定などの高次認知機能と呼ばれる能力がどのように脳内で処理されているのかを研究します。人間を主な研究対象とするため、実際に被験者にテストを受けてもらい、脳のイメージングなどを通して人間の脳にどのような変化が起こるかを分析することが多いです。

脳科学を勉強したいならどの学部に進めばいい?

ここまでは脳科学の分野の広さについて解説してきました。それぞれに違いがあるのはわかったけれど、結局どの学部に進めばいいのかわからない!という方も多いと思います。私もその一人でした。

ここからは各学部で学べること、取れる資格などについて解説していきます。

医学部

医学部では、病気の原因や、そもそもの脳の機能について研究しています。

脳科学を研究している方の中では、やはり医学系の博士号や資格を持っている人が多いです。脳科学研究において医師免許など特定の資格は必須ではありませんが、脳は全身を司っているため、全身の構造や疾患の知識があると有利であることに間違いはありません。

基礎研究として、脳神経科学的な研究をマウスやラットを用いて行うことが多いです。しかしながら、臨床の現場に出ながら研究を続けている医師も多く、実際に人間を対象として脳疾患の新しい治療法を開発したり、検証できることが医学部の魅力の一つです。

薬学部

薬学部というと薬剤師のイメージが強いかもしれませんが、実は薬学部でも脳科学の研究は盛んに行われています。医学部と同じように脳疾患の原因の解明や薬の開発を行うこともあれば、基礎研究として脳の機能や構造の解明を行うなど、その研究内容や方法は多岐に渡ります。

実際に人間を対象として研究を行うことは少なく、小動物や細胞を用いて神経回路モデルを組みます。脳科学の中でも電気生理学という分野では、実際に脳の切片を用いて神経のつながりを調べたり、脳波を用いて脳の機能と行動の関係を調べています。

理学部

理学部でも脳の研究は盛んに行われています。神経回路ネットワークを解明するための研究を行っていることが多く、数理モデルを使ったり、電気回路を用いたりなど、化学的、物理的アプローチをとることもあります。それでも研究の中心は脳神経科学、神経生理学などにあり、脳の構造と機能を題材にすることが多いです。例えば記憶の形成に関わるシナプス可塑性を調べたり、神経伝達物質に関する研究を行います。マウスではなくサルの脳を題材にする研究室もあるなど、ダイナミックな研究をしているので興味のある方はぜひ調べてみてください。

工学部・情報学部

近年人気が上昇しているのが工学部・情報学部による、脳をAIに応用する技術です。

例えばブレイン・マシン・インタフェース(BMI)やブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)のような、脳から情報を読み取って、機械やコンピューターにつなぐ技術が注目されています。もともと機械や情報に強い学部なので、神経科学の研究はもちろん、このような工学的な技術の開発も行われます。

脳科学の基礎研究というよりは、脳科学で得られた知見を応用する研究が盛んに行われています。

心理学部など

文系的な観点から脳を研究したいのであれば、心理学部がおすすめ。大学によっては心理学部ではなく、理学コースがある文学部・教育学部・人間科学科などに、脳の研究ができる研究室が位置していることもあります。脳神経科学は心の動きや行動を脳の活動に結びつけて捉える学問ですが、心理学は人間の行動を引き起こす要因を心として研究しています。

実際に研究を行う場では、マウスの行動を見て推測するというより、人間を対象として行動科学的な分析を行います。その結果として精神疾患へのアプローチや、人の心の動きを探求していきます。

心理学部では、科学的な観点も取り入れながら、哲学的な「心とは何か」を考えることもあります。脳そのものというよりは行動原理となっている心にフォーカスを当てている点で理系の学部とは異なります。

人間科学部・教養学部など

大学によって呼称が異なることが多いですが、「認知脳科学」の研究をしていると明記してある学部・学科でも脳の研究ができます。認知脳科学は発達障害を題材にするなど、脳科学の中でも新しい分野のため既存の学部構成の枠組みにとらわれずさまざまな学部で履修できるのが特徴的です。

大学によりますが、文理融合型の学部であることが多く、心理学的な実験と脳イメージング技術を用いて研究を進めます。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)や脳波測定(EEG)などのツールを使って、特定の認知機能が脳のどの領域で処理されているかを観察し、行動や感情と脳機能を結びつけて捉えます。

大学・学部選びの際に重要なポイント

脳科学に限らず、自分の研究したい内容がどの学部で学べるかわからないという例は実は多いのです。私自身も最後まで学部選択には悩んでいました。そんな中でも自分が後悔しない選択をするために重要なポイントが二点あります。

他学部聴講ができるかどうか

大学の中には、自分の学部以外の授業を受けることができる「聴講」というシステムを持つところがあります。

何度もお伝えしている通り、脳科学は一つの学部の中では完結できない学際的な学問です。そのため、もし自分の興味範囲が医学と心理学など、二つ以上の学部にまたがっているのであれば、どちらかに入学してもう片方を履修する、という勉強の仕方も可能なのです。

研究室も調べよう!

さまざまな学部、アプローチ方法を解説してきましたが、全ての大学が全く同じ研究をしているわけではありません。例えば、脳の研究をしたいと思って心理学部に進学しても、その大学の研究室では脳に関するテーマを取り扱っていない、なんてことも起きてしまいます。

それを防ぐためにも、自分の志望する大学・学部は脳に関する研究をしているか、自分はそのテーマに興味があるかをあらかじめ調べておくことをおすすめします。

まとめ 

いかがでしたか。脳と一言でいっても、その複雑なメカニズムを解明するにはさまざまな捉え方からのアプローチが必須なのです。自分の心に従って、最も興味が持てそうなアプローチ方法を考え、学部を選んでみてください。YouTubeなどに研究内容をわかりやすくまとめたビデオが載っていることもあるので、チェックしてみてくださいね。

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この記事を書いた人

東京大学で薬学や心理学を中心に勉強しています。高校時代に発達障害の方とその支援者を中心に様々な人と関わってきた経験があり、人と話しその人の人生を知るのが好き。ボカロとお笑いが大好き。

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