バスレクは小学生に考えさせよう!遠足で学ぶAAR教育・探究学習

こんにちは。この記事では遠足の機会を活用してAAR教育や探究学習を実践する方法について学校の先生・保護者の方々向けに紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

目次

AAR教育とは

小学校の教育現場におけるAAR教育は、OECDが提唱する「学びのコンパス2030」の中心概念の一つであり、子どもたちが予測困難な現代社会を生き抜く力を育むことを目指します。AARは「Anticipation(見通し)- Action(行動)- Reflection(振り返り)」のサイクルで構成されます。

具体的には、児童が学習活動に入る前に「こんなことをするだろう」「こうなるかもしれない」と見通しを立て(Anticipation)、その見通しに基づいて主体的に行動し(Action)、活動後には「何ができたか」「なぜうまくいったのか、いかなかったのか」「次にどうすれば良いか」を客観的に振り返る(Reflection)というプロセスを繰り返します。

これにより、単なる知識の習得だけでなく、自ら課題を発見し、解決策を考え、実行し、改善していく「自己調整学習」の能力を養うことができます。例えば、体育の授業で跳び箱の練習をする際に、児童が事前に目標を設定し、実際に跳んだ後にどこがうまくいかなかったかを分析し、次の練習に活かすといった形で実践されます。

AAR教育は、子どもたちが自らの学びを主体的にデザインし、継続的に成長していくための基盤を築く重要なアプローチです。

探究学習とは

探究学習は、文部科学省が推進する「総合的な学習(探究)の時間」を中核とする学習活動です。生徒が自ら問いを見つけ、課題を設定し、情報を収集・整理・分析しながら、問題の解決に取り組み、意見をまとめ・表現することを繰り返すプロセスを重視します。

この学習の目的は、単に知識を習得するだけでなく、予測困難な現代社会を生き抜くために必要な「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性」といった非認知能力を育成することにあります。具体的には、批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力、主体性、協働性などが挙げられます。

探究学習は、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の4段階で構成され、生徒が主体的に学びをデザインし、試行錯誤を繰り返しながら「深い学び」へと繋げていきます。これにより、生徒は自らの興味関心に基づき、実社会や実生活と関連付けて学びを深め、将来にわたって自ら課題を発見し解決できる力を養うことを目指します。

遠足・旅行は絶好の教育チャンス!

普段の授業や教科学習においてはどうしても「正解」や「あるべき姿」ができてしまいます。しかし、遠足や旅行には正解がありますでしょうか? このような「正解が一つに限定されない課題」を与えてくれるのが学校行事であるといえます。

AAR教育と遠足・旅行

先に述べたとおり、AAR教育とは「Anticipation(見通し)- Action(行動)- Reflection(振り返り)」のサイクルで構成されています。遠足には特性上「Action(行動)」が必ず伴いますよね。よって学校ではAnticipation(見通し)とReflection(振り返り)を提供する機会を提供することによってこの教育を実践することができます。

探究学習と遠足・旅行

探究学習のプロセスは「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の4段階で構成されています。この場合は「情報の収集」の段階を遠足や旅行に組み込むことができます。

活用の具体例

1、バスのレクリーションをこどもたちに考えさせる

バスレクリエーションとは遠足などの移動中のバスの中で行うレクリエーションを指します。このようなイベントは教員が考えてしまうことも多いかと思いますが、生徒自身に考えさせるという選択肢も考えてみましょう。

事前準備:見通し

具体的にはまず生徒たちに「バスの中でどうやったら盛り上がるかな?」と問いかけます。考案を担当する生徒を募って「レク係」を作るのも良いでしょう。その後様々な案を考えさせ、それぞれの案に対してどのようになるのかを予想してもらいます。予想を元にどのようなレクリエーションを行うのか決定します。

遠足当日:行動

実際にバスの中で実施します。実施にあたっては準備物の確認や実施計画の確認など、最低限のチェックとサポートは教員が行うと良いでしょう。

後日:振り返り

実施した後は振り返り会を行い、どうすればより盛り上がったのか、どうしてうまくいったのかという点を話し合います。先生がどのようなサポートを行ったのかなども説明し、自分たち一人で行うのであればどうするかをイメージさせます。

こどもたちにとって将来を見通したり仮説を立てたりする経験を与えることができます。一方で、この教育効果を高めるためには「様々な案を考えて、見通しを行い、実行して振り返る」という、全体の議論の方向性をある程度教員が示すことも重要です。

なお最初の問いかけを「どうすれば遠足を盛り上げられるだろうか?」といった形でより抽象的にすると、議論の難易度が上がります。また教員が思いつかなかったような答えが得られるかもしれません。

2、遠足先での「フィールドワーク型探究」で問いを深める

バスレクリエーションにとどまらず、遠足全体を探究活動の場にすることも可能でしょう。事前学習のクオリティをあげる上でもこれらの考え方を使うのが有効です。子どもたちに「課題の設定」から「まとめ・表現」まで、一連の探究サイクルを体験させる機会を設けます。

事前準備:課題の設定と仮説立て

テーマ設定と問いの深掘り: 遠足先についてグループで調べ、単なる観光名所だけでなく「なぜこの名物が生まれたの?」「この場所の課題は?」など、問いを生徒自ら設定し、仮説を立てます。調べ学習を促すことが先生の役割となります。授業内で時間を確保したり、調べ方などを伝えることが求められます。

遠足当日:情報の収集と検証

五感を活用したフィールドワーク: 街並みや人々の様子を観察し記録。地域の人々へのインタビューや資料収集を通じて、仮説を検証します。地域の音や匂い、味も体験し、探究テーマと結びつけましょう。記録と共有: 得られた情報は、タブレットやノートで詳細に記録し、グループ内で随時共有して理解を深めます。

後日:整理・分析、まとめ・表現、そして振り返り

持ち帰った情報を分類・整理し、仮説が正しかったか、あるいは修正が必要か分析します。必要に応じて追加調査も行いましょう。分析結果から自分たちなりの「結論」を導き出し、ポスターやプレゼン、デジタルレポートなどで成果を表現します。発表後、活動全体を振り返ります。「何が分かったか」「うまくいった点、難しかった点」「次への改善点」「学びをどう活かすか」を話し合い、未来につながる学びへと昇華させます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。このように、遠足や旅行を単なるレクリエーションではなく、子どもたちが自ら問いを立て、情報を集め、考え、表現する「探究の場」と捉えることで、こどもたちの知的好奇心と自律的な学びの力を最大限に引き出すことができます。ぜひ実践してみてください。ありがとうございました。

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この記事を書いた人

メディア事業部、教育事業部。
旅行や地理・政治が好きな東京大学経済学部生です。

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