アントレプレナーシップ教育とは?具体例とともに解説!

近年、教育界で注目されつつある「アントレプレナーシップ教育」とは一体どのような教育なのでしょうか。導入することによってどのような効果があるのか、実際にどのような取り組みが成されているのか、よく知らない人がほとんどだと思います。この記事では、「アントレプレナーシップ教育」の概要と具体例を、東大教育学部生の碓氷明日香が解説します!

目次

アントレプレナーシップ教育とは

まず、アントレプレナーシップ教育は、何のために行われるものなのでしょうか。文部科学省によると、アントレプレナーシップ教育とは、次のように表されています。

“自ら社会課題を見つけ、課題解決に向かってチャレンジしたり、他者との協働により解決策を探求したりできる知識・能力・態度を身に付ける教育”

文部科学省アントレプレナーシップオフィシャルサイトより)

多くの仕事がAIやロボットに置き換わっていく社会において、子どもたちひとりひとりがどのように生きるかを考え、実行する力を身につけることが、これまで以上に必要になってきています。

そのために、「起業家精神」(チャレンジ精神や創造性、探究心など)や、「起業家的資質・能力」(情報収集・分析力や判断力、実行力、リーダーシップやコミュニケーション能力など)を有する人材を育成することが重要となってくるのです。

ここでの「起業家精神」や「起業家的資質・能力」は将来起業家にならなくても、生きるために必要な力です。アントレプレナーシップ教育は、このような力を身につけることを目的としています。この教育が広がれば、子どもたちが大人になった時、自身の関心事と価値創造をリンクさせ、変革していく社会に対応しながら自分らしく生きることができる。すなわち、ひとりひとりのウェルビーイングが達成されるのです。

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実際の導入事例

ここまで、抽象的な説明をしてきましたが、あまりピンと来なかった方も多いのではないでしょうか。というわけで、ここからは実際の導入事例を見ていきましょう。

導入事例① 小学生による、理想の会社づくり

板橋区のとある小学校では、5年生が、将来自分が就きたい職業について調べたり、新しい仕事を考えたりして、最終的に自分たちが作りたい会社の企画書を作り、プレゼン大会をする、という取り組みが行われています。プレゼン大会では、保護者や地域の方々が株券を買う形で評価をしてもらっているようです。

将来社会的・職業的に自立できるように、自分や社会の将来について情報収集し、働くことに関心を持つことを目的としています。情報を集めてうまく活用する力、企画力とその推進力、プレゼンで周囲を納得させる力。どれも社会に出てから必要とされるものですよね。それを小学生のうちから鍛えているわけです。

導入事例② 中学生の新たな職場体験

同じく板橋区の中学校では、2年生が職場体験を行っているようです。もちろん、職場体験自体はアントレプレナーシップ教育の導入前から各地で行われていることですが、そこにアントレプレナーシップ教育としての要素を取り入れています。

内容としては、まずは事前に現在活躍している起業家から主体的・創造的・協働的に取り組む態度の大切さを学ぶため、講演会を実施。その上で職場体験に行くといったものになっています。ただ職業を体験するだけではなく、その仕事は何のためにやらなければならないのか、どのような目的でその会社が作られたのか、という原点から深く理解することで、働くことの意義を実感することができるのです。

(①、②の参考URLはこちら

導入事例③ 高校生による、身近な人を幸せにする”50センチ革命”

次は、高校生の取り組み事例です。金沢高校では、身近な人を幸せにする「50センチ革命」というテーマのもと、希望生徒を対象に起業家体験プログラムを実施。高校生活で感じる違和感に対して解決策を提示し、プレゼンを行う、という形式で、地元で活躍する起業家などの話も聴きながら進められました。

地元で生きていくには、受け身で雇用やサービスを得るのではなく、自分から新しい価値や機会を創造し、提供する方が、自分たちの好きなことを中心に充実した生活を送ることができる、という考えのもと行われているこの取り組みですが、ひとりひとりがウェルビーイングを達成するというアントレプレナーシップ教育の目的に沿っているといえます。参加した生徒は「他のチームの考え方に刺激を受ける」「体験してみて初めて考える力や発想力が鍛えられる」と感じているようです。

導入事例④ 高校生による、持続可能な食堂プロジェクト

香川県の高校では、学食の経営悪化に伴い、「SDGsの視点をもって、持続可能な食堂をみんなで作り上げ、地域を盛り上げる」というコンセプトのもと、食堂を改善していくプロジェクトが行われています。

授業とは別で進んでいるプロジェクトであるため、生徒は失敗を恐れずにチャレンジすることができ、自主性を鍛えることができるそうです。周りに転がっている問題を自分ごととして捉え、解決策を主体的に考える姿勢を学ぶことができるというわけです。また、プロジェクトを通して、好きなことを仕事で生かす方法を見つけることができた、という生徒もいます。実際に自ら主体的に動くことで、働くということがぐっと身近に感じられるようになったということでしょう。

(③、④の参考URLはこちら

導入による効果

では、実際に導入している学校で、どのような効果が出ているのでしょうか。

アントレプレナーシップ教育を導入している学校へのアンケート結果から、小学校の多くが「チャレンジ精神・積極性が高まった」「自信・自己肯定感が高まった」と答えており、また、中学校の多くが「進路への関心・意欲が高まった」「プレゼンテーション力・コミュニケーション力が高まった」と答えています。(参考URLはこちら

起業家精神や起業家的資質・能力を高めることができているといえますね。

課題と対策

日本の教育の現状

このように、子どもたちひとりひとりがウェルビーイングを達成し、充実した生活を送るためのアントレプレナーシップ教育ですが、日本は諸外国に比べ、導入があまり進んでいません。これまでの日本の義務教育は、周囲と合わせることに重きを置いてきました。新しい事業を考案したり、課題を見つけて主体的に解決する、といった経験をする機会は多くはないはずです。

社会の変化に合わせて、教育の方法も変えていかなくてはなりません。しかし、「起業家教育」とも呼ばれるこのアントレプレナーシップ教育は起業家になる人材を育成するものだと誤解されやすく、必要性の意識があまり広がっていないというのが現状です。また、教えるべきことが多岐にわたり、カリキュラム的に時間が取れない、ノウハウがないため導入まで進みづらい、などの課題を抱えている学校も多いようです。

アントレプレナーシップ教育の普及のために

まずは、アントレプレナーシップ教育が「生きる力を身につける」教育であるという正しい認識を広めていかなくてはなりません。これからの社会に重要な力を子どもたちが身につけられるように、指導事例や効果を先生の間で共有していく必要があるといえます。

また、カリキュラム的に厳しい、という場合は簡易的なプログラムから、段階的に取り入れていくこともできます。すでに行っている授業の中にアントレプレナーシップの要素を織り交ぜてみることもできるでしょう。地元企業や大学、民間企業の教材・プログラムなど、学校外との連携も課題解決に有効です。

まとめ

社会に適応しつつ、自分らしさを発揮するためのアントレプレナーシップ教育。子どもたちが社会的・経済的に自立できるように、すでにある事例を参考にしつつ、普段の授業や課外活動の時間に取り入れてみてはいかがでしょうか。


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この記事を書いた人

大学では教育学部基礎教育学コース所属。世界史が好きだったことを踏まえ、教育の国ごとによる違いやその歴史に興味を持っている。趣味はアニメ鑑賞、読書。

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