「ありがとうございました!」
選手がお互いに礼をし、さらに両選手揃って別の方向にも礼をする。
かるたの試合終了とともにみられる風景です。
では、2人の選手はどこに向かって礼をしているのでしょうか。
本シリーズでは、伝統のある競技かるたの世界について紹介します。
4回目の今回は、試合がどのように終わりを迎え、勝敗が決着するのかについて詳しく解説していきます。
ラスト1枚まで目が離せません!
試合展開
前回の記事で、前の下の句が詠まれた後に、次の上の句が詠まれることで試合が進むことを紹介しました。
場に置かれるのは百人一首のうち半分の50枚。残りは「場にないけれど詠まれる歌」(空札)として選手を苦しめます。1枚詠まれるごとに止まり、準備が整ってから次の歌が詠まれる。このスピード感で進むため、試合は通常1時間から1時間半ほどかかります。
その時間中ずっと集中し続けなければならないことは相当な負担です。最大で5試合勝ち進めなければならないため、十分な体力が必要になってくるのです。
札の詠まれている枚数や場にある残りの枚数によって試合も全く異なる顔を見せます。
序盤
序盤は、空札もたくさん残っているし、場にもたくさん札があるため、特に記憶力が試されます。
初心者同士の試合では、選手2人とも場所がわからず手を彷徨わせている姿や、場にある札なのに「空札」と判断してスルーしてしまう姿がみられます。上級者でも、より正確に取りに行けるかが特に問われています。
前回、お手つきの際には、相手から1枚送られると説明しましたが、他にも相手から札を送られる場面があります。
それは、自分陣の札を1枚相手に取られた時です。この時は、好きな札を相手に送ることができます。
序盤の段階でどのような札を相手に送り、どのような札を手元に残しておくかが、その後の試合展開の一つの重要なファクターになってきます。
終盤
終盤になってくると競技性がより増していきます。
場にある札の枚数も、空札の枚数も減ってきている中で選手たちのスピードはどんどん加速していきます。そこには、競技かるたの面白さが隠れています。
例えば、
A「心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花」
という歌と
B「心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな」
という歌について考えてみてください。
「こ」から始まる歌は6枚あって、「こころ」まで同じ歌は上の2枚になります。
つまり、Aの歌だと確定するのは「こころあ」まで詠んだところであり、Bの歌だと確定するのは「こころに」まで詠んだところになります。
ここまで詠んだら確定する、というところを「決まり字」といいます。
そして、試合中においては、決まり字は変化していくのです。
決まり字が変化するとはどういうことなのか。
例えば「こころあ」が詠まれたとすると、「こころに」は「ここ」まで詠まれれば取れるようになります。
「こ」から始まる他の歌の決まり字は「この」「こひ」「こふ」「これ」の4枚があり、どれも2文字目は異なります。
ここで、さらに「この」「こひ」「こふ」「これ」が詠まれると、「こ」から詠まれる歌は1つしか残っていません。
つまり、「こころに」の歌は「こ」で取れるようになるのです。
このように、終盤は短くても取れる札がどんどん多くなっていくとともに、その決まり字の変化にも対応していかなければならないのです。
試合終了
さて、激戦を経て、最後の1枚を自分の陣でとるかもしくは相手の陣のものを抜いた時、試合終了となります。
まずは選手がお互いに健闘をたたえて「ありがとうございました」と言いながら礼をします。
さらに、選手は2人揃って、読み手に対して、感謝の意を込めて「ありがとうございました」と言いながら礼をします。サッカーや野球で言うところの審判に礼をしてから退場するのと近いですね。
そこまでしてようやく札を片付けて試合会場を後にします。
最後に
いかがでしたか。
今回は、試合展開について紹介していきました。
その場にある札だけでなく、その場にない札についても記憶しながら決まり字の変化に対応していく様子が競技かるたの大きな面白さの1つ。
次回は競技かるた段位制度や段位昇格のための大会について紹介していきます。お楽しみに!
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