さまざまな業界・分野で活躍されているプロフェッショナルの皆様に大学生がインタビュー!
お仕事の内容や学生時代からの歩みなど、ここでしか聞けない内容を盛りだくさんでお届けします。 今回は、大阪府立中学校教諭で学校改革を推進し、フィンランドにあるヘルシンキ国際高校で勤務をされた徳留 宏紀(とくどめ・ひろき)さんにインタビューをしました。実際に現地の教育現場に入って感じたこと、ギャップ、日本の教育への応用の仕方など、貴重なご経験をもとにお話いただきました。
徳留宏紀(とくどめ・ひろき)さん
1990 年大阪府大阪市生まれ、現職は三宅町立三宅幼児園 園長(奈良県公立認定こども園)。教育コンサルタント Nordic Educations代表。2013~2022年まで泉佐野市立新池中学校教諭を務める。教科学習を通じて非認知能力& 認知能力の向上を実現し、全国各地の学校や幼保こども園で非認知能力を育成するための講演会を実施。2023年から1年間、フィンランドのヘルシンキ国際高校(Helsingin kielilukio)に勤務し、現地での生活を満喫するとともに、さまざまな出会いに恵まれて、日本へと帰国。著書に『スウェーデンと日本発!非認知能力を伸ばす実践アイデアブック』(東京書籍)、連載として『教職研修―フィンランド見聞録―』(教育開発研究所)、『世界の教室からーフィンランド編―』(教育新聞社)など多数。
幼少期から「あなたはどうしたいの?」と問われる
ー1年間フィンランドでホームステイをされていたそうですが、実際にどのような生活を送っていましたか。
徳留:私はホームステイをしながらヘルシンキ国際高校でアシスタントティーチャーを勤めていました。主に平日は1日6時間、日本語や生物、物理、地学、数学の授業を担当していました。雇用ではなくボランティアでしたので、テスト期間や長期休暇中は仕事がありませんでした。その時間を使って18カ国ほど旅行しましたし、プライベートもとても充実していました!
ー18ヵ国もですか!すごいなぁ。フィンランドでは休日をどのように過ごすことが多いのでしょうか?
徳留:公園や森に親子で行ったり、夏休みなどの長期休暇では親戚同士で集まって湖畔やコテージで過ごしたりすることもあります。日本だとゲームに課金をしたり、習い事や塾に通ったりする人も多いと思いますが、フィンランドではみんな自然に触れながら、楽しそうに過ごしています。基本的に親から子どもに対して何かを押し付けることは少ない印象を持ちましたね。
ー日本では「ヘリコプターペアレント*」という言葉もありますが、フィンランドの親子の関係性はどのような感じですか?
*子どもを見張り、必要以上に関わり続ける親のこと
徳留:元々フィンランドでは子どもは親の所有物ではないという考え方が根付いています。また幼少期から「あなたはどうしたいの?」「あなたはどう考える?」というように一人の人間として自己主張することを求められます。これは教育現場でも同様です。
ー教育現場でも、年齢関係なく自己主張することを求められるということですか?
徳留:そうです。例えば、フィンランドの学校には校則がほとんどないため、生徒も教師も自由な髪形や服装など、ファッションで自己表現ができます。またフィンランドの教育は手厚いというイメージがあるかもしれませんが、手取り足取り教えるというわけではありません。生徒を一人の人間として尊重し、生徒自身のやりたいことをサポートするという体制ですね。また、今後の進路を考える上で、キャリアカウンセラーという先生が学校にいます。
ーキャリアカウンセラーですか?どのようなことをしてくれる先生でしょうか。
徳留:心理カウンセラーや保健室の先生とは別に、生徒の進路選択や学習面の悩みを個別に相談できる先生です。例えば、小学5・6年生になると企業とコラボした授業や職業体験が盛んになります。そうしたタイミングで、自分がどのような道に進みたいのかキャリアカウンセラーに相談する生徒も増えてきます。ちなみに職業体験の体験先は、学校側は一切関与せず、生徒自身が自分で見つける必要があります。なのでその時期は泣きながら体験先を探している生徒も見受けられます(笑)
ー生徒が自分で体験先を探すのですか!?
徳留:そうなんですよ。自分も大阪で教員をしていたころは、教員が先に企業にアポイントメントを取っていました。また日本では大学に入ってから自分のキャリアについて考える機会が増えますが、フィンランドでは幼い頃から「自分の人生は自分で歩むんだ」という意識があり、それを支援する制度も日本よりも整っているといえます。