今回、武蔵野大学中学校のプログラム『言語活動』に(株)カルペ・ディエムがご協力させて頂きました。記事のタイトル、本文は武蔵野大学中学校の3年生が作成いたしました。
言語活動とは武蔵野大学中学校で実施されているオリジナルのプログラムです。この授業では、どの科目にも共通する大切な考え方や役立つスキルを実践的に学んでいきます。、言語活動の中にある「ジャーナル作成」の一環として、『大学の先生、大学院生へのインタビュー』を行いました。インタビューした内容は記事化し、カルペディアで公開をいたします。
今回私たちは言語活動という授業の一環で、北海道大学の下鶴先生にインタビューさせていただくこととなりました。先生はクマの研究で有名で、今回はクマについてお伺いしたいと思います!
プロフィール紹介
下鶴 倫人(しもづる みちと)
北海道大学 獣医学研究院所属
北海道大学准教授
「ヒグマの会」理事
神奈川県横浜市出身。
東京大大学院農学生命科学研究科を修了し、獣医学の博士号を取得。
2008年に北大大学院獣医学研究科(当時)助教、13年准教授。
研究者などでつくる団体「ヒグマの会」で理事、「日本クマネットワーク」で副代表を務める。
〈参照〉
クマの不思議な生態、人の生活に応用できれば…下鶴倫人准教授
研究内容で苦労したこと
Q.今、下鶴先生は何について研究されていますか?
A.そうですね。クマの研究で言えば大きく二つに分かれています。
一つめはヒグマの生態についてです。ざっくりいうと、例えばどんなものを食べているか、どういう繁殖をしているか、どういう風に行動しているか……いわゆる生き方そのものがどうなっているのか、みたいなことを、特に知床半島をメインに調査して研究しているのが一つです。
もう一つは、冬眠についてです。クマはあらゆる動物の中で、最大の冬眠動物なんですよね。そこで冬眠することにどういう意味があるのか、どういう風に冬眠しているのか、といった研究をしています。もし、そういうのが分かれば人間にも応用できると言われています。病気を予防するとか、様々な観点でクマが持っている体の仕組みを理解できれば、役に立つはずです。君たちも、たまには冬眠したくなることがあるでしょう?
生徒):まあ、確かに(笑)
Q.では、次に研究をしていて苦労したことはなんですか?
A.メインではクマの研究をしています。けれど、実は苦労する部分はクマ相手じゃないことが多いんですね。クマの研究をしていると、現地に住んでいる人とか、ハンターさんやいろんな人に協力してもらうことが必須です。協力してもらってはじめて、大型の動物の研究が成り立ちます。
野生動物相手の仕事は、ただ野生動物のことを考えているだけでは成り立ちません。どちらかというと研究をするための環境を整えるために、人と人との関係性に気を使いますし、時間を使うことになります。そこが苦労ってほど苦労じゃないけど、野生動物だけを見てれば良い訳じゃないですね。要は、野生動物を相手してるのではなく、人を相手にしている部分もあるということです。
Qでは、冬眠してる間は何してるんですか?
A、一つは冬眠する前までに溜めたデータを解析したりとか。また、それを元に論文を書いたりとか。あるいは、次の年の研究の準備に当てたりそういった時間に当てることが多いですね。他にも、冬眠の研究もしているので、冬は冬で飼育施設に出かけたりだとか。そういったことをしています。
クマの血液
Q.下鶴先生が入っているグループが、クマの血液を用いた年齢推定方法を確立されたと思いますが、そういった方法は今どのような場面で実用されていきますか?
A.そうですね。クマに限らずのことですが、これまでクマの年齢を調べるといった時には、一番多く使われていたのは歯なんですね。クマは冬眠するので、毎年毎年歯に層ができていくんです。薄く、ミルフィーユみたいに。その歯を取ってきて、薄く切って、その層が何個あるか数えることで年齢を推定していたんです。
そうじゃないと、一定の大きさになったクマっていうのは、見た目からは年齢はほとんど分かりません。少なくとも人間には分からないので、そういう方法を使っていたんだけれど、歯を使うということは歯を抜かなきゃいけないということですよね。生きたクマから歯を抜く、これはできないことではないですよ。ただ君たちも、歯を抜かれる痛みは予想できる通り、動物に与えるストレスが大きいんですね。それに歯で調べるのはとても時間がかかるということもあって、ただ血液を採ってきて調べられるようにしました。実用性というところはまだまだ課題がありますが、今後クマの数をどうしていくかとか、どういう風に管理していくべきなのかを考えた時に、年齢情報を得ることは大切になってきます。例えば、北海道って何頭くらいクマが人の手によって殺されているか、考えたことはありますか?
生徒)300…?200くらいですかね?
先生)大体1000頭くらいが殺されているんですね。それはただ殺し過ぎだろうという人もいるだろうし、逆にクマの数は少し減らしていく方向にしないと困るよねというような見方もできるわけです。ただやっぱり、クマは何頭いるんだとか、どのくらいの数のどういう個体を駆除したりとかしているんだろうかっていうことを考える上で、年齢情報ってとても大事なんですね。
年齢情報のために、一頭一頭歯を取ってくるというのだと、時間もかかりますし、たまに正確じゃなかったりします。それを血や他の臓器とかで出来るようになれば、簡単に重要な情報を集めることが出来ると思ってます。そういったことが実用化できるように、今そのさきの研究を進めているところですね。
モチベーション
Q.最後に研究に対してのモチベーションはありますか?
A.こういう仕事……特に研究職の大学教員ってやっぱり、知りたいと思うことを知ろうとすることがやはり、一番のモチベーションですかね。知りたいと思ったことの一端でも掴めるような、自分の力で考えて仮説を立てて、それがどうだったか、あってたのか間違っていたのか、などそのような部分が研究を通じて明らかになってくる。そんなプロセスに、強くモチベーションを感じます。
先生の今後の展望や中学生に向けた一言など
Q.今後の研究の課題はありますか?
A.私は普段獣医学部として動物の研究をしているのですが、これほどクマ問題が大きくなってくると、人との問題をどれだけ少なくするか、それに対して自分がどのような貢献が出来るのかをよく考えています。
知りたいだけではダメで、やっぱり社会的に果たす役割が歳とともに変わってくるので、それが課題かなぁと思いますね。
先生にインタビューをして感じたこと、学んだこと
インタビューをするまで、私たちは動物園で見る大人しいクマのイメージしか持っていませんでした。
そのためインタビューやそこに至るまでの調べ学習を通して、クマが人間にもたらす被害やその性質を詳しく知ることができました。下鶴先生、インタビューを受けて下さりありがとうございました。
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