農学部何を勉強する?〜東大農学部卒業生が語る農学部の魅力〜

皆さんは農学部と聞いてどんなイメージが思い浮かびますか?

おそらく農業を思い浮かべた人が多いのではないでしょうか。だって、「農」って思いっきり入っているから。もちろん農学部では、農業についての研究も多く行われています。ですから「農学部といえば農業」のイメージは大きく外れてはいません。しかし、実は農学部では農業の他にも、多くの研究が行われているんです。

今回は農学部とはそもそもどんな学部なのか、そして、農学部に入ったらどんな大学生活が待っているのか、ご紹介します。

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目次

農学部とは?

農学部は、動物、植物、微生物など、地球上に存在する数多の生物への理解を深め、共存していくとともに、課題解決のために利用していくことを目的として研究を行う学部です。

農学部ではどんな力が身に付くの?

農学部で身につく力は、身の回りの物事を科学的に捉える力です。

農学部は座学に加え、生物実験やフィールドワークが多い学部です。実験やフィールドワークを通して、身の回りの物事を理系的に捉える力が身につくでしょう。

また、農学部は研究によって明らかにされた知見を用いた課題解決を目指す学部なので、課題解決の力も身につく学部です。

 農学部の授業

農学部は、全体のカリキュラムのうち、実験やフィールドワークの占める割合が非常に多い学部です。例えば、動物の筋肉になる細胞の培養の方法を学んだり、植物の性質を変化させるためにDNAを書き換えるゲノム編集の技術を学んだり、それぞれの学科で基礎となるような実験のやり方を学ぶ授業が多くなっています。教科書を読んで終わりというわけではなく、実際に自分の手を動かしながら学ぶことができるのが魅力の一つです。

 農学部にはどんな学生が集まるの?

農学部は、動物や植物を主に扱うため、理系の生徒の中でも、特に「生物選択」が多く集まる学部です。また、理系だけど物理が苦手という方も比較的多めです。

さらに、農学部は実験やフィールドワークが多く、実験結果や調査結果を自分の目で確かめたいと言う方にも向いています。

農学部で学べること

大学での学部は、さらにその先で学ぶことによって学科と言う単位に分かれます。例えば文学部であれば、国内の文学について学ぶ日本文学科や英語圏での文学部ついて学ぶ英文学科など、対象やアプローチによって細かく分かれます。

農学部は非常に広いジャンルなので、学科は多岐に渡ります。また大学によって異なる学科が設けられていることが多いのが特徴です。ここでは代表的なものをいくつか紹介します。しかし、大学により区分が違ったり、そもそも設立されていない学科もあるので実際に行きたい大学の学科をきちんと調べておくのが良いでしょう。

 農学

農学部農学科では、農業を幅広い視点から分析する学科です。化学の視点から農業を考える農芸化学では、穀物の収穫効率を上げるより良い肥料とは?といった研究をしています。農業を経済学の視点から捉える農業経済学では、収穫した穀物の流通、農場の立地条件、世界の食料問題などをテーマに研究します。また農業工学では、農業機械や野菜工場といった、収穫量の向上を、機械やITといった観点から目指す学科です。このように、さまざまなアプローチでより良い農業を目指すのが農学科です。

森林科学

農学部森林科学科は、自然環境をテーマにした学科です。日本の森林や林業の保護をはじめとし、環境問題、絶滅に瀕した動物の保護など、地球全体の環境を守るための学問です。木材の性質や構造を学んだり、環境問題を学んだり、木材をより効率よく育成したり、利用したりする方法などを学びます。また、近年ではバイオマスへの注目の高まりから、バイオマスに関する研究も盛んなようです。

獣医学・畜産学

獣医学科や畜産学科では、ウシや豚、鳥などの家畜をテーマにした研究を行います。例えば、より高品質な肉牛を育てるための飼育環境や餌、また遺伝子の改変などをおこなったりします。しかし、こうした大型の家畜を用いて研究するのは非常に大変なので、実験用のネズミ(マウスやラット)を用いる学科・研究室も多いです。事前にチェックしておきましょう。

水産学

水産学科では、水産資源の保護や利用や、海洋の生態系について研究します。例えば漁獲や養殖の技術向上のため、成長や繁殖といった魚の生態について調べたり、異なる生物種同士の関わりについて研究したりします。海洋の生物については、陸上の生物よりもわかっていないことが多く、まだまだ未知の分野です。

 農学部生の進路

農学部からの進路としては、大きく民間企業への就職、公務員、大学院進学の3種類があります。

ここでは、それぞれ具体的にどんな進路があるのかみていきましょう。

民間企業

農学部から民間企業への就職については、実はかなり広い選択肢があります。メーカーやコンサル・金融・マスコミ・出版といった人気業界への就職も可能です。また、農学部の特徴として、食品業界や美容業界への就職も多めとなっています。
実際、東京大学の農学部出身者のうち、38%がこれらの企業に就職しているようです。

公務員

また、公務員への就職も人気です。特に食品を扱う厚生労働省や、動物、自然を扱う環境省や農林水産省に進む方が多くなっています。農学部での学びを活かした就職が多くなっています。

大学院進学

大学院進学も、農学部ではメジャーな選択肢です。東京大学では、59%が大学院へ進学しているようです。大学院へ進学し、さらに専門分野への理解を深めたのち、17%が博士課程へと進学しています。また、74%が就職をしており、学部生と同じく、多岐にわたる企業への就職を果たしています。

参照:https://www.en.a.u-tokyo.ac.jp/course/

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農学部の大変なところ

農学部の大変なところは、実習の多さです。

実習は通常、2コマ分で1コマ分の単位として扱われるので、他の講義と比べると「コスパ」が悪いです。(その分、単位の取得は出席だけで可能という良さはあります)そのため、他学部だと比較的時間割に余裕ができる3年生でも、1限から5限まで授業があるという日もざらにあるため、非常に大変という声は多く聞こえてきます。

また、卒業論文、修士論文などの実験も、生命系の実験やフィールドワークを行う都合、動物や植物、細胞の世話のために毎日の登校が必要だったり、フィールドワークで長期間日程を押さえておく必要があったりします。

農学部の魅力(ここが面白い。)

農学部の魅力は、研究内容と身の回りのものとの繋がりが大きいところだと思います。そのため、研究へのモチベーションが湧きやすいです。例えば、不妊治療に興味があれば家畜の不妊のメカニズムの解析を通したアプローチができます。また、感染症に興味があれば、ウィルスの構造を調べたり、地球温暖化に興味があれば環境保全のための施策を考えたりと、身の回りのものごとへの興味から取り組むには、農学部が1番幅広く、かつ深く取り組めるのではないかと思います。研究は基本的に1人で、長期間取り組むものなので、やり遂げるためには、自分の興味のある研究テーマを選ぶことが重要です。そのため、身近で多様な研究ができる農学部は非常に魅力的な学部だと思います。

また、研究分野が身の回りのものに近いため、日々の暮らしも他の人より詳しくなれます。例えば、生物系であれば細胞やからだのつくり、また薬品などに詳しくなるため、薬の成分がどう効いているのかがなんとなくわかるようになったりします。

農学部が向いている人

農学部は身近なこと、具体的なことに興味がある人に向いている学部だと思います。研究テーマや、研究の手法など、身近な分野に自分の手を動かしながら挑んでいくことができます。

その分かなり時間がかかる研究も多いので、研究にしっかり向き合う心づもりをしておきましょう!

まとめ

いかがでしょうか?農学部の生活について、少しイメージをつかめましたか?

農学は、私たちの暮らしの基盤となる、自然、食を支える重要な学問です。この分野を学ぶことで、世界中の人々だけでなく、全ての生き物がより良い暮らしを送れる世界への貢献につながるのです。

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この記事を書いた人

東京大学農学部獣医動物行動学研究室所属。大学での研究活動に勤しむ傍ら、ギャップイヤーを通じて出会った人たちと教育活動や地域おこしにも取り組んでいる。

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