はじめに
受験生の皆さん、受験お疲れ様でした!
3/10の東大京大の合格発表で、国立前期の合否がほぼ全て出揃ったでしょう。新入生の多くにとって悩みどころとなるのは「第二外国語の選択」。多くの大学では、英語に加えてもう一つ別の言語(第二外国語)を履修しなければなりません。特に東大に関しては「文科理科を問わず1年生は全員必修」です。新入生がどうやって第二外国語を選ぶべきか、東大の例を出しつつ紹介します。
第二外国語の概要
東大は第二外国語が必修。週に3コマも授業があります。他の大学に比べると多めで、一年間で学ぶ内容は「他の大学の4年分」に匹敵します!読解・会話・文法を基礎から学び、一年のうちに教科書を一周します。さらに、東京大学の場合は選択した言語によってクラスが分けられます。その点においても第二外国語の選択は非常に重要です。
第二外国語の決め方、手続き(東大)
第一に優先して欲しいのは、「言語を学ぶモチベーション」です。上記の通り、東大では「極めて早いスピード」で言語の授業が進みます。そのため、強い思いがない限り、最後までやり続けられず、途中から授業に追いつけなくなる場合が多い。どういった趣味や学問に興味があるかで第二外国語の相性も変わってくる。詳しくは次項で解説します。
次に優先すべきなのは成績面。東大の「進学振り分け」制度(通称「進振り」)は、1年生と2年生前半の成績で、進学する学部が決まるというもの。成績が高ければ高いほど希望の学部に進学しやすくなります。
しかし、逆に成績が悪ければ希望する学部に行けない。必修のうち週3コマの第二外国語で低い成績を取ると、進振りで失敗する可能性が極めて高くなります。そのため、履修して成績がとりやすいかが進振りにおいて最重要。もし、成績が取りにくい言語を学びたいなら、第三外国語として学ぶことをお勧めします。一般教養の授業などから、任意の外国語を選べば、学ぶことができます。第三外国語は第二外国語に比べると成績に影響が出にくく、第二外国語にない言語からでも選べます。
東大の第二外国語を決める手続き締め切りは13日の正午です。早めに検討しましょう。
志望意思表明のフォームにおいて、第二外国語の選択欄は2つありますが、これは、「入力した二つの言語がどちらも第一志望」の設定になります。一つ目の欄を第一志望の言語、二つ目の欄を第二志望だ、と勘違いして入力してしまう人が多いですが、誤りです。
二つ目の欄にもほぼ履修する気が無い言語を登録したら、第二外国語がそちらに設定されてしまった人もいます。十分注意して設定しましょう。
各言語の特徴/クラスの雰囲気
1: フランス語
履修者が多く人気の言語です。友達や先輩と勉強法の相談や、教え合いがしやすく、学ぶハードル自体は低い言語でしょう。歴史や哲学などの思想系の学問はフランス語の文献が多いことも魅力です。
ただし、難しい。女性名詞と男性名詞という区分が存在し、その種類によって形容詞の形が変わる「性数変化」というルールが存在します。加えて、発音とスペルも難解。特に発音は日本語には存在しない音が多く、リエゾンなど特殊なルールも存在することからかなり難易度が高い。そのため、単位を落としてしまう人も多い。
クラスの雰囲気は非常によく、男女比が偏りがちな東京大学において、女性が多いことでも有名。個人的には東大の中で一番「大学生らしい」大学生をしている人が多いイメージです。もちろん真面目な人も多く、勉強のモチベーションも維持しやすい。
とはいえ、必ずしも女性が多いわけではない。2023年度の理科一類では、フランス語クラスのうち半分が男子のみのクラス(いわゆる男クラ)になっており、共学ライフを満喫しようと思った男子校高校出身者達に悲劇が訪れています。
結論として、進振りにそこまで重点を置かず、人文系に興味があったり、キャンパスライフを謳歌したりしたい人向けの言語になります。
2: スペイン語
フランス語に次いで履修者が多い言語。スペイン語は、スペインのみならず中南米の多くの国で公用語になっていることから、使う機会が極めて多いでしょう。
フランス語と同じラテン語派ですが、フランス語に比べると、圧倒的に学びやすい言語です。さらに言うと、「第二外国語の中でも特に簡単な言語」だと個人的には感じます。というのも、発音が簡単だからです。
スペイン語の文章は「ローマ字読み」でほぼOK。発音も日本語に近く、初めて読む文章でも音読することができます。ただし、動詞の変化形が6種類あったり、性数変化があったりする点は難しい。ですが、これは他のヨーロッパ系の第二外国語にも言えることなので、相対的に見てスペイン語が一番楽です。
スペイン語の文法で唯一他の言語より難しいのは「時制」。スペイン語は時制の数が極めて多いのです。過去形で2種類あり、未来形でも2種類あり、さらに接続法で時制の数が2倍になります。ここは暗記要素が強く混乱しがちなので注意しましょう。
簡単な言語ですが、使う機会の多い言語であることから、ある程度、本気で学びにくる人も多い。そのため、飛び抜けて高い点数を取ろうとすると困難です。ただし、単位は取りやすいですし、努力次第では高得点を狙えます。
クラスの雰囲気としては、女子も多くて、それぞれ仲良く、雰囲気も明るいイメージです。クラス会や文化祭での企画を催している所が多い印象です。ただ、学内では「スペイン語は陽キャだ」と言われるものの、実際はフランス語や韓国朝鮮語の方がクラスとしては盛り上がっている印象なので、人づきあいが苦手でも危惧する必要はありません。
結論として、実用性の高い言語を履修したい人、外国語をゆるく学びたい人や、明るいクラスが良いという方におすすめの言語です。
3: 中国語
中国語の履修者も非常に多い。中国には日本企業も進出しており、日本にいても中国の人とのやりとりや取引が発生する可能性が高いことから、社会に出てからも実用性が高い言語といえます。
文法は極めて簡単。中国語の時制はほぼありません。しかし、一方で暗記量が一番多い言語でもあります。中国語は漢字だけでなく、その音や意味も一緒に覚える必要があるからです。特に中国語は、発音として「拼音」を覚えなければいけません。これは漢字をどう発音するかをアルファベットで表したもので、多くの人が覚えるのに苦労します。
クラスの雰囲気は比較的真面目。奇抜な人や陽気な人が少ない印象ですが、楽しいクラスの雰囲気が作られています。教員も優しい人が多く、好成績も狙えます。結論として、社会での実用性の高さ、真面目で控えめなクラスを希望する人にはおすすめな言語です。
4: ドイツ語
履修者は比較的少なめ。英語と同じゲルマン語派であり、英語にかなり近い言語です。医学書や法学、科学技術に関する資料を読む際には非常に有益となるほか、ゲーテやカントなど哲学においても使う機会が多い。そのため、研究者を目指す人が履修しているイメージです。
学ぶのはかなり難しい。発音自体は基本的に規則通りで読みやすい一方で、文法が難解です。フランス語のように性数変化が存在しますが、名詞に男性名詞、女性名詞に加えて「中性名詞」という区分が存在します。これに加えて「格変化」という概念が存在します。格変化は、日本語で言う「助詞」の意味の変化に応じて、名詞や形容詞の語尾が変化するもの。多くの人がここで挫折します。
学問への情熱が強い人が集まりがちで、クラスはとても真面目な雰囲気。学習意欲の高さから、自分の勉強へのモチベーションが高まりやすいでしょう。履修者の満足感が高いクラスになっています。研究に対するモチベーションの方が高く、大学でも勉強に専念したい人におすすめです。
5: 韓国朝鮮語
履修者は極めて少ない。文系の場合、文科一類から文科三類をまとめても1クラス分しか履修者がいません。
K-Popや韓流ドラマ、メイクやファッションの流行から韓国朝鮮語に興味を持つ人が多く、人気が出ています。韓国に興味があるならお勧めですし、社会に出てからも韓国の方と関わることは少なくないため、実用性も高い。
履修の難易度は低め。文法にだけフォーカスすればスペイン語以上に簡単です。文法はシンプルで、日本語に近いことからも習得しやすいです。いちばんの難関は「ハングル」でしょう。韓国朝鮮語固有の文字を覚える必要があります。ただ、規則性に富んでいるので得意な人なら1日でも習得できます。他の懸念点としては、単語の暗記量が凄まじいことが挙げられます。
クラスの雰囲気は、K-Popなどの韓国文化に興味のある人が集結していて、人数が少ないながらも和気あいあいとしています。実は狙い目かもしれません。韓国の文化に興味があるならば、選んで損はないでしょう。
6: イタリア語
履修者は比較的少なめ。言語はフランス語や、スペイン語と同じラテン語派で、この二つにとても近いです。特にスペイン語とは親和性が高く、「ほぼ同じ言語か?」と錯覚してしまうほど似ています。ただし、読みがローマ字通りにいかなかったり、発音が少し難しかったりする点で、少し難しいかもしれません。
スペイン語よりも使える機会が限られることから、本気で習得しようとする人が少ない。このことからも、第二外国語の中では「一番好成績を狙うことのできる穴場の言語」と言われます。進振りでどうしても行きたい学部がある人にはお勧めです。
クラスの雰囲気として、変人が多いと言われるようです。ただ、内情は他のクラスと同じく色々な人が集まっているだけで、いわゆる「変人」はいません。クラスの雰囲気も盛り上がっており、しっかりと大学生らしい生活が送れるでしょう。
結論として、美術や料理が好きで、進振りを頑張りたい人にはおすすめの言語となります。
7: ロシア語
東大の中で一番マイナーな言語です。第二外国語の中で唯一「スラブ語派」に属しており、フランス語や英語とはまた異なる雰囲気を持ちます。履修する人の中では、歴史好き(特にロシア史、ソ連史)、ロシアの思想や主義に興味のある人、ロシアが強い宇宙産業に興味のある人が集まっています。
言語としては、第二外国語の中で一番難しいと言っても過言ではありません。まず、文字としてアルファベットではなく、キリル文字が使用されます。キリル文字はアルファベットの形や読み方と混同しやすく極めて複雑です。そして、文法も難しい。勉強のできる東大生にとっても「格変化が難しい」と恐れられるほど。ロシア語はドイツ語よりもさらに格変化の種類が多く、複雑です。
クラスの雰囲気としては、他には見られない独特なものがあります。興味が限定的だったり、考え方が特殊だったりする、奇抜な人も多い印象があります。ですが、クラスメートはロシア語を本気で履修したくて希望している人ばかりであり、クラスの士気は非常に高い。全員勉強に対して極めて熱心です。
わが道を往きたい方には特にお勧めできます。
まとめ
大学生活において、第二外国語はかなり重要な立ち位置を占めます。学生生活の充実度合いが第二外国語の選択で決まるといっても過言ではありません。
もちろん、第二外国語として履修した言語が、自分が将来携わる研究に直接使えるとは限らないでしょう。しかし、新しい言語の学びかたの習得、または、日本語/英語以外の文章や動画に触れるきっかけとなります。東大で第二外国語を学ぶのは前期教養学部において。名前通り、ひとつの教養として第二外国語を楽しんで学べるといいのではないでしょうか。
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