今年2024年の2月12日におこわれた慶應義塾大学理工学部の英語の問題で、村上春樹の「辺境・近境」を英作文せよ、という問題が出て話題になりました。その問題を現役東大生・早稲田生・慶應生が解いてみました!
問題
5.次の和文を読み、下線部分をひとつのセンテンスに英訳しなさい。解答は解答用紙(記述式)に記入しなさい。
大学に入るときに東京に出て、そこで結婚して仕事を持ち、それからあとはあまり阪神間には戻らなくなった。たまに帰郷することがあっても、用事が済むとすぐに新幹線に乗って東京に帰った。生活が忙しかったこともあるし、外国で暮らした期間も長かった。それに加えて、いくつかの個人的な事情がある。世の中には故郷にたえず引き戻される人もいるし、逆にそこにはもう戻ることができないと感じ続ける人もいる。両者を隔てるのは、多くの場合一種の運命の力であって、それは故郷に対する想いの軽重とはまた少し違うものだ。どうやら、好むと好まざるとにかかわらず、僕は後者のグループに属しているらしい。
(村上春樹。『辺境・近境』。1998年より一部改変)
解答
東京大学教育学部 Aさんの解答
Some people constantly return to their hometown, while others always feel like they cannot return there anymore.
東京大学薬学部 Bさんの解答
Some people have to constantly return to their hometown, while others continue to believe that they can no longer return there.
早稲田大学 Cさんの解答
There are two types of people; those who always go back to their hometown, and those who think they don’t deserve it anymore.
早稲田大学 Dさんの解答
While there are some who are always brought back to their hometown, there are some who keep denying going back there.
慶應義塾大学 Eさんの解答
Some are brought back to their home countryside continuously, some conversely feel that they could never return to there anymore.
まとめ
一文を英語にするだけの問題ではありますが、日本語の解釈やそれを英語に落とし込む力を問うている問題であり、受験生の語学力が如実に反映される問題だと言えるでしょう。
AさんとBさんの解答は比較的素直な解答であり、入試問題の解答としてはこれで良いと言えるラインでしょう。
ただ、実際にこの小説の英語版を出版するとなると、ここはCさんやDさんのように物理的な行き来の可否だけでなく、心理的描像も加味している英文がより好まれるのは間違い無いでしょう。
入試問題としてどこまでを採点基準とするかは、大学と受験生のレベルに依存すると思います。
しかし、少なくとも題材を村上春樹から選んでいることや前後の文章を読ませていることから、ある程度心情描写や日本語としての解釈の余地を考慮した解答でないと満点にはならないと思われます。
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