薬学部で学んだことを活かす!薬学部の卒業後の就職先をご紹介

 薬学生や薬学部進学を考えている学生のなかで、実際どのような就職先があるのか、就職先の選択肢が少ないのではないかと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。6年制の薬学部を卒業した人は主に病院薬剤師や調剤薬局に勤務することが多いですが、実際には幅広い選択肢があります。今回はそんな薬剤師の就職先を一つ一つ具体的に解説していきます!

目次

薬学部卒業生の一般的な就職先

医薬品の専門家である薬剤師は、医薬品に対して責任を負う大変重要な役割を担います。そんな薬学部卒業生の約半数以上が保険薬局や調剤薬局で勤務しています。しかしその他にも、そのまま研究機関に残ったり、一般企業に就職したりする人も多いです。

薬学部で学ぶこと

そもそも薬学部で学ぶことはなんでしょうか。薬学の分野は、主に薬を作ることを目的とした基礎薬学と、薬を正しく使うことを追求する臨床薬学に分かれます。薬剤師の資格を取るには6年制の薬学科に進学し、国家試験を受ける必要があります。病院や薬局での実習が多く、臨床薬学の比重が重いことも特徴の一つです。一方で薬科学科などの四年制の薬学制は、研究者の育成がメインであり、基礎薬学を中心に創薬について学びます。実習や国家試験の勉強がない分、研究や実験に集中できることが特徴です。

なぜ薬剤師が多いのか?

全国の薬学部生のうち、85%以上の生徒が6年制の学部に通っています。薬学科に進学する人は、最初から薬剤師になることを目指して入学するため、そのまま薬剤師として就職することが多いのです。薬学科の中にもそのまま4年制の大学院に進学する人もいますが、その割合は就職者に比べて非常に少なくなっています。

薬剤師資格のない卒業生の就職先

では四年制の学部に通う、薬剤師免許のない学生はどこに就職することになるのでしょうか。その多くは一般企業に就職したり、コピーライターとして活躍したりしています。しかし、一般の製薬企業などにそのまま就職しようとしても、学部卒では営業職や技術職などに限られてしまうことには注意が必要です。開発職や研究職に就くことを考えているのであれば、最低でも大学院の修士課程、できれば大学院の博士課程を修了していることが望ましいです。

薬剤師免許が必要な就職先

続いては具体的な就職先について解説していきます。まずは薬剤師免許が必要な仕事からです。6年間の学生生活で得た知識や培った経験が生きる就職先が人気となっています。

病院・医療施設

薬剤師は病院や医療施設で働いているイメージがある人もいるのではないでしょうか。2020年放送のドラマ「アンサング・シンデレラ」では、病院の薬剤部に所属する病院薬剤師の様子が描かれ、病院薬剤師の知名度が一気に上がりました。病院で働くメリットは、治療全体を把握することができるので、調合している薬が何の役に立っているのかわかることです。また、入院患者の薬を全て用意するため、調剤薬局とは処方する薬が異なり、それもやりがいを感じるポイントの一つでしょう。しかし、病院勤務のため、夜勤をしなければいけなかったり、医者との関係に悩むこともあります。それでも病院近くで働くことで得られる知識や達成感はかけがえのないものでしょう。

調剤薬局

就職先として最も数が多いのは調剤薬局です。実際に街を散歩していると、都会なら何店舗か見かけることもあるでしょう。地域の老人ホームと連携していたり、持病のある患者の家に薬を届けたり、地域の健康を支えているのが調剤薬局です。地域や場所によって調剤薬局の種類や規模は大きく異なります。病院と同じように患者に対して薬の説明を行うほか、クローズドなコミュニティでの勤務になるのでより人間関係に悩みやすくなる場合もありますが、少人数で業務を行う分、自分にマッチすると働きがいを持ってチームとして働くことができるようになります。

ドラッグストア

街のドラッグストアで薬剤師を見かけたことはないでしょうか。ドラッグストアにも医薬品は販売されており、一般医薬品の中で要指導医薬品、第一類医薬品、第二類医薬品の販売には薬剤師の指導を受けることが必須になります。そのためドラッグストアの薬剤師は比較的給与が高くなります。しかし、レジ打ちや品出しなどの雑務が含まれることも多く、病院や薬局に比べて体力が必要だったり、知識を深める機会が少ないことが難点です。

学校薬剤師

学校薬剤師は、任命を受けた学校で環境衛生の維持・改善や医薬品および毒物の管理に関する指導と助言を行います。おもに環境衛生関連の業務に携わるため、衛生科学に関する知識が必要です。しかし追加で必要な資格はなく、生徒と関わる機会も多いので、子供が好きな人には向いている仕事だと言えます。

大学以外の各学校に一人の学校薬剤師を配置するよう、学校保健安全法によって定められており、学校全体の管理を一人で行うことも少なくないため、非常に責任感のある仕事だと言えます。

公務員薬剤師

実は、薬剤師免許があると公務員として働くことも可能です。公務員の中には国家公務員と地方公務員の二種類があります。どちらの仕事も、病院や薬局では経験できない多様な業務を行いますが、公務員なので転勤が多かったり、副業ができないなどの特徴があることも忘れないでください。

国家公務員薬剤師

国家公務員薬剤師は、各省庁で医薬品や食品、麻薬などに関わり、国民の安全を守る仕事です。国家公務員としての公務員薬剤師は総合職採用となるため、幅広い業務に携わることになります。 医薬品の審査や承認、安全対策などといったいわゆる薬事行政から、食品衛生法に関連するもの、研究開発促進など、所属する課によって扱う領域はさまざまです。中には一般的な薬剤師のイメージからはかけ離れた業務内容もありますが、薬学の知識を生かしてさまざまな仕事を経験したい人にとってはやりがいを感じられるでしょう。全国でも希少ではありますが、麻薬取締官となった際には、麻薬の管理も行うことになります。

地方公務員薬剤師

地方公務員としての公務員薬剤師は、その配属先によって業務内容が様々に変化します。大きくは病院勤務と行政勤務の二つに分けられ、病院に勤務する薬剤師の業務は、病院薬剤師とあまり変わらず、医師が処方した薬の調剤や飲み合わせの可否を確認します。また、病棟で患者様の病状確認や服薬説明などにも携わります。

一方で都道府県庁に配属されると医療や環境衛生に関わる業務を担当したり、保健所では市町村民の安全と健康維持のための啓発活動や指導、具体的には、薬事や環境、食品、動物衛生に関する業務を行うこともあります。

薬剤師免許の必要ない就職先

薬剤師免許が必要ないからといって、人気がないわけではありません。病院や薬局の薬剤師と同様に人気があったり、その仕事ならではのやりがいがあったりします。求められる能力も変わるので、自分に合った就職先を探してみてください。

製薬会社・MR

薬学部卒業生の就職先として、非常に人気があるものの一つに製薬会社があります。一口に製薬会社でもやっていることは様々で、一般には研究職、開発色、MR、事務職に分かれます。

事務職

事務職は一般企業と変わらず、「人事」「総務」「経理」「法務」「広報」などの仕事を行っています。しかし、事務職には薬学に対する専門的な知識が必要なわけではないため、薬学部卒業生のなかで事務職に就職する人は多くありません

MR

学部卒業生の中で多いのはMRに配属される人です。MRはMedical Representativeの略で日本語にすると医薬情報担当者です。製薬会社のいわゆる営業職として活躍します。MRは自社の医療用医薬品にかかわる情報を、病院や診療所の医師や薬剤師などの医療関係者に幅広く知らせたり、集めたりといった、自社の医療情報の中枢を担います。MRには薬剤師免許は必要ありません。

開発職

また開発職も人気がある仕事です。開発職の主な仕事は新薬の確認作業であり、新薬開発の最終段階となる臨床試験いわゆる「治験」の計画、実施を行います。最終的には新薬の承認申請を行い、自社の新製品を上市(医薬品を販売)することを目指します。また、新薬だけでなく既存薬の服用しやすい剤形の開発も手掛けています。

研究職

しかしやはり製薬企業の中で最も人気があるのは研究職でしょう。​製薬企業の研究職は、新薬やジェネリック医薬品などの医薬品を世に送り出すための研究を行う仕事で、医薬品開発の上流工程に位置しています。薬学部に進学する人の中には新薬の開発をしたいという目標があって勉強している人も多いのではないでしょうか。しかし新薬の開発は製薬会社での業務の中でも最も難しく、研究職に就職するのは倍率も高く非常に難しいと言えるでしょう。

化粧品・食品メーカー

意外に思われるかもしれませんが、化粧品メーカーや食品メーカーなどは、薬剤師が専門性を発揮して活躍できる職場のひとつです。製薬企業よりも研究職や開発職につくハードルが低く、最近は医薬品の豊富な知識や資格を活かし企業で働く薬剤師も多いです。 直接肌につける化粧品や、健康食品の成分や安全性の研究、品質管理などが主な業務となります。そのほかにも他の専門家と協力してプロジェクトを進めることもあり、薬学部で得た知識を最大限に活かすこともできます。メーカーによっては、薬剤師の資格以外に「調理」「メイク」「色彩」などのスキルを求められる場合もあります。

医薬品・医療機器関連のコピーライター

医薬品や医療機器関連のコピーライターは、メディカルコピーライターと呼ばれ、制作会社や広告代理店などで医薬品や医療機器の販売促進のための広告や文章の作成に携わる仕事です。薬学部で培った専門知識はもちろん、専門家でない一般の方にわかりやすく伝えるための、文章力や発想力も求められます。今までに学んだ医薬品についての知識や、自分のアイディアが形になるのはこの職種の最大の魅力ではないでしょうか。

就職したら何をしているの?

業務内容については今までも軽く触れてきましたが、もう少しだけ細かくみていきましょう。公務員の仕事などはあげていたらキリがないので、今回は研究と調剤という二つに焦点を絞ってみていきます。

研究職

研究職に就くには薬剤師免許は必要ありません。それよりも重視されるのは、研究の分野で何ができるのか、どんなスキルがあるのかということです。新薬の開発、創薬においては研究室で新しい薬を合成したり、人体で治験をすることもあるため、高度な知識とスキルが必要になります。そのため、大学院を修了していることが必要要件に入ることも少なくありません。

新薬の開発には、研究開始から上市まで、一般には10年ほどかかると言われています。とても長い道のりではありますが、自分が開発した薬が一般販売された際の喜びはひとしおです。

調剤

調剤は、医者が出した処方箋を確認し、薬を調合する仕事です。患者への服薬指導が含まれることも多く、いわゆる薬剤師の仕事としてイメージされるものです。

処方箋に則ってそのまま薬を処方していいのかと言われると、そんなことはありません。医者は医学の専門家ではありますが、薬学の専門家ではありません。薬は飲み合わせによっては取り返しのつかない事態になってしまうこともあり、悲しいことに薬害として何例も報告されています。そうした事態を防ぐために、薬剤師が最後の砦として薬の量や飲み合わせを確認し、必要に応じて医者と連携をとりながら服薬指導をしていくのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。もしかしたら想像していたよりも多くの選択肢があったかもしれません。それぞれ向いている仕事や職場は違うので、気になったものがあればより深く調べてみて、そこで働いている自分の姿をイメージしてみてください。

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この記事を書いた人

東京大学で薬学や心理学を中心に勉強しています。高校時代に発達障害の方とその支援者を中心に様々な人と関わってきた経験があり、人と話しその人の人生を知るのが好き。ボカロとお笑いが大好き。

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