東京大学といえば、日本最難関クラスの大学。
そこに通う学生の多くは、小さなころから塾通いをして名門中高を通ってきた、いわゆる「エリート」たちです。
しかし、東大に受かるには圧倒的な頭脳が必要なのでしょうか?
近年、東大生の中にも休学やギャップイヤーを取る生徒が増えており、卒業生も研究などに進まずクリエイティブな活動や起業などアカデミックな分野に特化しない人も増えてきています。
今回は、”第一弾 東大生インタビュー【ワタシの偏愛図鑑①】”と題して2022年度入学の原田怜歩さんにお話を伺います。
原田さんは国内最年少のトイレ研究家として幼少期からトイレ研究をされており、高校1年生の時にアメリカで研究を行ったり、「日本トイレ大賞」といった賞なども受賞されています!
今回は「知られざるトイレ」のあれこれについてご紹介いただきます。
なぜトイレに興味を持ったのか
では、まずなぜトイレに興味を持ったのか教えてください。
原田怜歩
「自分トイレ好きだな〜、と感じたきっかけは、中学3年生の時。
語学研修で2週間アメリカのフロリダ州へ滞在した時に、あるものに対して強くホームシックを感じたことです。
ホカホカの日本食でも離れ離れの家族でもなく、あの「トイレ」に深い悲しみを感じました。
アメリカのトイレは防犯上、足元に隙間があったり、便座が少しヒヤッとしてたり、そんな無機質なトイレに触れ、日本の、まるで小動物のような温もりが感じられる便座や川のせせらぎ流れる消音設計などに「おもてなしの心」を再認識しました。
しかし、ホストファザーがアメリカにも良いトイレがあるぞ、と紹介してくれたトイレが、オールジェンダートイレでした。幼い頃、親友からのカミングアウトでジェンダーについて関心を持った私に、とても印象的な出会いでした。
私にとって普段使うトイレの定義は「日常における唯一のプライベート空間」で、「ほっと一息付ける憩いの場」で、さらに「街中どこにでもある」こと。しかし、トランスジェンダーの中には自らの性自認との相違や周りからの視線によって外出した際などに気軽に使えるものではなくトイレの時間が苦痛に感じる人も少なくありません。
アメリカでトイレに魅せられた私は、「もっとトイレの中に秘めた無限の可能性を発見したい!」と考え、日本から機能的側面を、アメリカから文化的側面を相互発信すべく1年間の研究留学を決めました。
現地では企業と協力してバリアフリーやジェンダー対応などの観点をもとに学校や図書館などの公共施設、観光地でのトイレ調査を行いました。また、LGBTコミュニティーでは日本のトイレについての紹介、そして理想的なトイレ環境の実現についてインタビューやディスカッションを行いました。現地の高校にも通っており、そこでは生徒会長に選出され、学校代表として式典の参加やイベント運営などたくさんの人と対話する機会に恵まれました。
しかし、COVID19の急速な蔓延で緊急帰国を迫られ、現地での研究を打ち切る形となりました。失意の中、日本でも何かできることは無いかと考え、「トイレから社会課題を解決する」をテーマにPlungerという団体を立ち上げました。代表的な活動として、トイレットペーパーを通じた社会教育活動があります。SDGs17のゴールそれぞれを漫画形式で紹介したトイレットペーパーで、老若男女を問わず人々が日常的に手に取って、目にする革新的な教育媒体であると考えています。このトイレットペーパーを置いた空間はいわば令和の寺子屋になります。クラウドファンディングで集めた資金で全国の公共施設や教育機関に寄付し、多くの人が周りの出来事をジブンゴト化して行動できる社会創成を目指しました。」
原田さんにとっての高校生活は、留学やコロナ禍での事業など本当にトイレ愛に溢れた毎日を過ごしており、ついには「日本トイレ大賞」の受賞や官公庁での講演会などを行うようになったそうです。
青春をかけて調べ上げたトイレの極意についてもう少し深掘ってみましょう。
トイレのここがすごい!
では、具体的にトイレのここがすごい!ポイントなどはありますか。
原田怜歩
「個人的には、やはり自らがトイレに関心を持つきっかけになった温水洗浄便座の凄さですかね。
海外に比べると日本は身の回りの快適さや利便性を重視する傾向にあると言われています。トイレという日常的で当たり前の空間を”より良くしよう”と考えた先人には頭が上がりません。
大都会の喧騒にまみれた社会に生きる私たち、少しだけ個室に入って便器に座るだけでも一定のプライベート感と安心を与えてくれるのではないでしょうか。」
原田怜歩
「また近年トイレの機能面は、ほぼ究極の形態にたどり着いたと私は考えています。
最近SNSでちょくちょく話題になる男性/女性トイレどちらかわからないマークは”トイレという一見汚いと思われがちな場所をおしゃれで清潔感あふれる場所にしよう”という人々の試みが現れています。
同様に大手広告代理店が手を使わずに用が足せるトイレや見た目がトイレらしくないまるで美術館のようなトイレなどそれぞれの手腕や個性を光らせる一種の空間として機能していることもトレンドの一つです。
これらは、機能面が日本において改良の余地を残さない最終形態として存在しているが故に本来は必要不可欠でないプラスαの価値創造に人々が向かっているのです。
日本の温水洗浄便座の普及率が9割に近づいた今、日本のトイレ界に革命が起きようとしています。」
なぜ東大に?
最後に、原田さんの将来の展望を伺ってみました。
原田怜歩
「私は入学前に自分の関心分野を専門にする教員と対話することができる貴重な機会だと考え、一般に加えて推薦型での受験を決意しました。また、自身のプロダクトの営業や今後の展望に対してフィードバックも貰えたらラッキーとも考えていました。実際、面接を通じて、大学での学びの方向性をそれまで以上に明確にすることができた気がします。
入学後は、推薦生一人ひとりに対してアドバイザーの教員がつき研究をサポートしてくれます。もちろんトイレ研究の専門家はいませんが、経済のみならずジェンダーや社会政策などの最前線の課題を、1年次から学べることは非常に有意義だと実感しています。
将来はオールジェンダートイレ含め、多様なトイレのあり方やその重要性の認識を深めてもらうために『トイレ×経済学』という新たな学問テーマとして多機能トイレ設置がもたらす経済インパクトや理想的なトイレの追求に励んでいきたいと思います。」
「トイレで東大に」という一見つながりが見えないような掛け算ですが、学生時代から自分のスキを絶えず研究してきたMaverickさんの愛がよく伝わりますね。今後もたくさんの東大生の偏愛を紹介するのでぜひご覧ください〜!!
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