ギャップイヤーとは?
皆さんは「ギャップイヤー」を知っていますか? なかなか聞き慣れない言葉ですよね。実際私の周りでもギャップイヤーについて知っている人は数十人に一人くらいでした。そのくらい認知されていないのが、ギャップイヤーなのではないでしょうか。
「ギャップイヤー」とは、学生が高校卒業後、進学や就職をする前の1年から2年程度の期間を、自己研鑽や社会体験に充てることを言います。高校卒業と大学入学までに1〜2年間の「ギャップ=隙間」を自ら設けるので、ギャップイヤーと呼ばれています。この期間中は、国内や海外でのボランティアをするもよし、留学にいくもよし、インターンシップ、語学研修などなど、多種多様な過ごし方を自分で選んでいける、貴重な経験を積むことができます。
この記事では、実際にギャップイヤーを経験した筆者(東京大学農学部4年生)が、その概要や導入大学・ギャップイヤー中の過ごし方や活動、メリット&デメリットまで、総合的に紹介します!
ギャップイヤーの歴史と現状
そもそも、ギャップイヤーはいつから始まったのでしょうか? 「ギャップイヤー」とは、欧州で古くから行われていた旅を伴う学びの伝統のことで、「グランドツアー」と「修行」の2つの起源があると言われています。
「グランドツアー」とは、イギリスの貴族や富裕層の子弟が家庭教師を伴って欧州を周遊するもので、教育や大人になるための通過儀礼の役割がありました。「修行」の旅とは、若い職人が徒弟として各地を渡り歩く伝統でした。
このような起源を持つギャップイヤーが学生向けの制度として受け入れられるようになったのは、1960年代のイギリスだと言われています。学生がエチオピアにボランティアとして派遣されたという説や、ヨーロッパの文化施設を回るために1年間の休みを取ったという説もあるようです。
こうして始まったギャップイヤーという文化は、現在でもイギリスを中心に、欧米・オセアニア出身者など特に英語圏では広く受け入れられています。一方で、日本を含むアジアではまだまだ浸透しておらず、ギャップイヤーを取り入れている大学も限られているのが現状です。
ギャップイヤー導入大学
では、日本でギャップイヤーを取得するにはどうすればいいのでしょうか? これは、大学がギャップイヤーの制度を導入しているのかどうかで大きく変わってきます。というのも、ギャップイヤーは「大学非関与型」と「大学プログラム型」の二つに分けることができるからです。
大学プログラム型
大学プログラム型では、大学がギャップイヤーの計画を支援し、学生が大学主催のプログラムに参加する形式です。大学がプログラムを提供するため、学生は大学が用意した選択肢から自己研鑽の方向性を決めることができます。このプログラムを導入している大学を今回は2校紹介します。
東京大学
東京大学では、ギャップイヤー制度「FLY Program」を導入しています。FLY Programとは「入学した直後の学部学生が、自ら申請して1年間の特別休学期間を取得したうえで、自らの選択に基づき、東京大学以外の場において、ボランティア活動や就業体験活動、国際交流活動など、長期間にわたる社会体験活動を行い、そのことを通じて自らを成長させる、自己教育のための仕組み」です。
3月の合格発表後、ギャップイヤーを取得するかどうかの意思確認があり、その後学内での選考に進んで通過するとギャップイヤーを取得することができます。
筆者は、FLY Program7期生として参加しました。ギャップイヤーを経験したことで、自分自身を見つめ直すことができる貴重な時間であり、自分の興味や目標を明確にすることができました。私の経験談については、こちらの記事をご覧ください。
国際教養大学
国際教養大学は「ギャップイヤー入試」という制度を導入しています。制度の趣旨では「グローバル社会で通用するタフな人材を育成・輩出することにある。ギャップイヤー入試は、 年齢や学事暦に囚われず、国内外の諸問題に対し高い関心を持ち、探求する意欲のある人材 、失敗を糧にして困難に挑戦できる人材、人を動かせる力を持った人材を発掘する手段として期待される。」と記載されています。
ギャップイヤー入試に合格した生徒は、11月の合格発表後、翌年9月入学までの期間を自分で計画を立てて活動していくようです。
大学非関与型
大学非関与型のギャップイヤーは、大学が公式にプログラムを用意しているわけではなく、学生が自分でギャップイヤーの計画を立て、実施する必要があるギャップイヤーの形式です。
大学がギャップイヤーの計画に関与しないため、自由度が高く、学生自身が自己研鑽の方向性を決めることができます。一方で、使用する制度としては「休学」になるため、休学費用の有無や金額など、実際に発生する費用や、期間中の具体的な活動をよく考える必要があるでしょう。
ギャップイヤーの過ごし方
ギャップイヤーでは、留学、ボランティア、インターンシップ、語学研修、ホームステイ、独自のテーマに基づく自由研究など、さまざまな過ごし方があります。具体的にどんな過ごし方をしているのか? ギャップイヤーならではの視点で紹介します。
留学
留学は、海外での学びや文化体験を通じて、語学力や異文化理解力を身につけることができる過ごし方です。留学先では、授業だけでなく、現地の人々と交流したり、観光地を巡ったりすることで、自分自身を成長させることができます。ギャップイヤーだからこそできる留学のあり方としては、習得単位を気にする必要がないため、本当に興味のある授業に参加することができます。
ボランティア
ボランティアは、社会貢献活動を通じて、人とのつながりや社会貢献の意義を学ぶことができる過ごし方です。
まず、社会貢献をすることができる点が魅力のひとつです。ボランティア活動を通じて、自分が持っているスキルや知識を活かして、社会や地域の役に立つことができます。例えば、環境保全や人道支援、地域振興など、多くの分野で活動が行われています。自分が貢献したい分野を選ぶことができ、自分自身が成長することも期待できます。
また、ボランティア活動を通じて、多様な人々との交流ができる点も魅力のひとつです。ボランティア活動には、国内外を問わず、多くの人々が参加しています。共通の目的を持った仲間との活動を通じて、新しい出会いや友情が生まれることもあります。異なる文化や価値観に触れることで、自分自身の視野が広がることも期待できます。応募しやすい活動のため、ギャップイヤーの計画に組み込む学生も多いようです。
インターンシップ
インターンシップは、実際の職場で働きながら、ビジネススキルや人間関係の構築などを学ぶことができる過ごし方です。インターンシップ先では、職場での経験を通じて、自分の将来の進路やキャリアパスについての考え方を深めることができます。特に、しっかり時間をとることができるギャップイヤーは、インターンシップと相性が良いのではないでしょうか。
語学研修・語学学校
語学研修・語学学校は、海外での語学学習を通じて、語学力を向上させることができる過ごし方です。
語学学校に通うことの魅力は、なんといっても語学力の向上でしょう。語学学校では、専門の講師による授業や、日常会話を学ぶクラスなど、多様なプログラムが用意されています。自分のレベルに合ったクラスを選ぶことができるため、自分のペースで学ぶことができます。また、語学学校では、多くの国籍の学生が集まるため、異なる文化や習慣に触れることができます。
語学学校では、学生生活を送る上で必要なサポートが受けられることも魅力のひとつです。生活面やビザの取得などの手続きをサポートしてくれます。また、学生寮やホームステイなどの住居も手配してくれる場合が多く、生活する上での不安を減らすことができます。
さらに、多くのアクティビティが用意されていることも魅力のひとつです。地元の文化や観光名所を訪れるツアーや、スポーツやアートなどのクラブ活動など、多彩なアクティビティが提供されています。これにより、学生同士の交流が促進され、新しい友人を作ることができます。
ギャップイヤーで海外に行きたいけど語学力や、慣れない海外に不安が……という人はかなり多いため、計画の序盤に組み込む人が多い印象です。
ホームステイ
ギャップイヤー中にホームステイをすることの魅力は多岐にわたります。まず、ホームステイを通じて、その地域の文化を深く理解することができます。ホストファミリーと一緒に暮らすことで、現地の食事や習慣、言語などを身近に感じることができます。また、ホストファミリーとのコミュニケーションが必要になるため、現地の言語を使う機会が多くなります。自然な会話を通じて語学力を向上させることができます。
ホームステイは、安全で親切な環境で過ごすことができます。地元の人たちと一緒に生活することで、異国の土地にいるという不安を軽減することができます。また、ホストファミリーと一緒に生活することで、異文化理解を深めたり、自分たちの文化や習慣に触れることで、自分の常識が相対的であることを知ったりすることができます。相手の文化に興味を持ち、尊重する意識が身に付くようになるでしょう。
ギャップイヤー中にホームステイをすることは、現地の文化に触れることができ、異文化理解を深められるなどの魅力があります。
自己研鑽・独自のテーマに基づく自由研究
自己研鑽は、自己啓発や自己実現のための時間を過ごす過ごし方です。趣味やスポーツなど、自分の興味に合わせた活動を選ぶことで、自己成長や自己表現のスキルを向上させることができます。
ギャップイヤーのメリット&デメリット
ここまで見てきたように、ギャップイヤーは、自分がどのような計画をたてるかによって大きくその性格が変わります。そのため、一概にギャップイヤーの良いところ、悪いところというのは難しいのですが、全体的な部分に触れていきたいと思います。
ギャップイヤーの効果
ギャップイヤーには、留学やインターンシップなどの経験がその後の生活に非常に有利になるという効果があります。また、自己成長や自己表現のスキルの向上、異文化理解力や語学力の向上、将来の進路やキャリアパスの方向性の見出しなどの効果も期待できます。
ギャップイヤーと就職活動
ギャップイヤーで得た経験やスキルは、就職活動において非常に有利になります。留学やインターンシップなどの経験を通じて、異文化理解力やコミュニケーション能力、問題解決力など、グローバルな視点を持った人材としての価値が高まります。また、ギャップイヤーを経験することで、自己成長や自己表現のスキルが向上し、自信を持って就職活動に臨むことができるようになるでしょう。
ただし、ギャップイヤーでの経験が就職に直結するというわけではありません。企業によっては、留学やインターンシップよりも実務経験を重視する場合もあるため、自分が目指す就職先に合わせて、適切な経験を積んでおく必要があります。
休学との違い
ギャップイヤーを取得するとき、検討したほうが良いのは、今このタイミングなのか?という点です。2年生や3年生での休学か、高校卒業直後か、どちらが自分にとってより良いのかを検討する必要があります。
あえて高校卒業後に休学するギャップイヤーのメリットは、大学1年生・2年生の時期を有効に活用できるようになるという点です。ギャップイヤー中に自分自身について考え、その後の進路をイメージできるようになれば、大学生活をより有意義に使うことができるでしょう。
一方で、2年生・3年生での休学は、大学1、2年生で学んだことを休学中に活動に行かせるというメリットもあります。どちらが自分に合うのか、事前にしっかり考えておくのが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか? この記事ではギャップイヤーの歴史や制度、特徴を紹介しました。
もし興味があれば、ご自分の大学の制度を調べてみたり、これから入学する大学選びの選択理由の一つにしてみてくださいね。
実際に僕が経験したギャップイヤーについてのインタビュー記事がこちらから読めるのでぜひご覧ください!
ギャップイヤーを取る、2年生・3年生で休学する、ストレートに進学するなど、大学生活には様々な選択肢があります。1つの選択肢に囚われすぎず、視野を広く持ってより良い人生が送るための手段として何を選ぶのか。参考の1つになっていれば嬉しいです。
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