東大のギャップイヤー制度「FLY Program」経験者にインタビュー!

サムネイル「東京大学ギャップイヤー制度 FLY Program」

皆さんは「ギャップイヤー」って知っていますか?
近年日本でも注目されていますが、実際に経験している学生は少ないようです。

そこで今回は東京大学のギャップイヤー制度「FLY Program」を経験した、農学部の姜利英(かん・りよん)さんにインタビュー!ギャップイヤーって何? どんなことをしたの? という質問から、就職活動への影響まで、盛りだくさんでお話いただきました。

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姜利英(かん・りよん)さんとホストファミリーの兄弟
姜利英(かん・りよん)さんとホストファミリーの兄弟

──まずは簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

よろしくお願いします!
東京大学農学部獣医動物行動研究室4年の姜利英(かん・りよん)です。

出身は岡山県岡山操山高校です。理科一類から入学して、 FLY Program7期生として活動、復学後は農学部に進学し、動物の共感性について研究しています。


──ありがとうございます。今回は、東京大学のギャップイヤー制度「FLY Program」でのご経験について伺っていきたいのですが、まず FLY Programについて簡単に説明いただいてもよろしいですか?

はい!まずは「ギャップイヤー」の説明からしていきたいと思うんですけど、ギャップイヤーとは、学生が高校卒業後、進学や就職をする前の1年から2年程度の期間を、自己研鑽や社会体験に充てることを言います。つまり、高校卒業と大学入学までに1~2年間の「ギャップ=隙間」が空いてしまうのでため、これをギャップイヤーというんです。この期間中は、国内や海外でのボランティアをするもよし、留学にいくもよし、インターンシップ、語学研修などなど、多種多様な過ごし方を自分で選んでいける、貴重な経験を積むことができるんです。

東大では、日本でも珍しく、ギャップイヤー制度を導入していて、その制度を「FLY Program」と呼びます。FLY Programは、「入学した直後の学部学生が、自ら申請して1年間の特別休学期間を取得したうえで、自らの選択に基づき、東京大学以外の場において、ボランティア活動や就業体験活動、国際交流活動など、長期間にわたる社会体験活動を行い、そのことを通じて自らを成長させる、自己教育のための仕組み」であるとされています。


──なるほど。つまり高校卒業後すぐに休学する制度ということですね。姜さんはなぜギャップイヤーに参加して、大学に入ってすぐ休学しようと思ったのですか?

ギャップイヤーに参加したのは「すごい人になりたい」と思っていたからです笑

 FLY Programっていう名前とか、東大で10人しかいないとか、かっこいいなって。だって東大の中でも異次元と言われている理科三類の生徒ですら100人くらいいますからね笑


──「すごい人になりたい」というのは意外でした笑 では、ギャップイヤーに参加することで、その目標に近づくことができたと思いますか? また、どのような経験をしましたか?

少なくとも、そのきっかけにはなったと思います。僕はギャップイヤー中、持続可能な公園のあり方に興味を持っていました。というのも、理由が二つあって、まず、元々建築家になりたいと思っていたからです。建物とか、都市設計とかぼんやりとですけどまちづくりみたいなものに興味がありました。公園というのは、都市の中でも様々な役割を持っていて、とても面白いテーマだなというふうに思っていました。

また、僕は岡山出身だったのですが、僕の地元の公園ってあまり手入れがされておらず、滑り台が使用禁止になっていたり、草がぼうぼうだったりして荒れていて、それに問題意識を持っていたというのも理由の一つです。


──確かに公園のあり方というのは面白いテーマですね。

はい。これからの公園はどうなっていくんだろうなという、空間のあり方をテーマにギャップイヤーを始めたのですが、その中で、さまざまな人と触れ合うことで、空間と人間の関係性に興味を持つようになりました。


──なるほど、ギャップイヤー中に空間と人との関わりに興味が変わったということですね。具体的に、どのような経験をされたんですか?

ちょっと長くなっちゃうんですけど笑 アメリカでのホームステイ中の経験が非常に大きいです。
当時僕はアメリカの、父母子供4人(小学生2人、中学生1人、高校生1人)の家庭にホームステイをしていました。

僕が行ったナッシュビルという地域の家の多くが、フロントヤードと呼ばれる庭を持っていました。フロントヤードとは、道路に面した庭で、よく子供たちの遊び場になっています。これが道の左右にあることで、狭い道でもかなり広く感じることができます。

このフロントヤードには、隣の家のフロントヤードとの区切りが明確でないことが多く、子供たちは誰の庭かなんてことは気にせず自由に遊びまわっていました。

隣の家との境がないフロントヤードの風景
隣の家との境がないフロントヤードの風景

FLY Programの当初、公園の使われ方を見るために、自宅付近の公園で1日過ごすというのを何回かしていたのですが、基本的に、都市公園は既知の集団が集まって、「じゃあ公園行くか」というように、コミュニティが先にある状態から、公園(コミュニティ基盤)が選ばれるという形で使われています。
これに対して、連続したフロントヤードでは、

1. 子供が各家庭のフロントヤードで遊ぶ
2. 子供がフロントヤードを共有して遊び始める
3. 子供を媒介とすることで親も含めた地域のコミュニティが生まれる

というようになっており、これに非常に興味を持ちました。というのも、この例が、コミュニティベースが、心地よいコミュニティを作りうるということを示唆しているように思われたからです。

また、もう一点フロントヤードについて面白いのは、ある程度コミュニティで共有されているとはいえ、あくまでもそれが「私有地である」という点です。

僕のホームステイ先のフロントヤードに大きな木があり、僕がそれに登っていたところ、子供達も登りたいと言い出しました。その木には子供も手軽に登れるような枝がなかったので、僕が子供たちを上まで持ち上げていたのですが、そのうちそれがめんどくさくなったので、部屋に戻ったのです。

それでも木に登りたい子供達が、自らガレージから工具を持ち出し、木に木材を打ち付け、それを足場にして木に登り始めました。僕はこれを見てコミュニティ内の人間によって空間がよりよく改変されていくように感じ、ひどく感動したのを覚えています。

利用者によって改変され、利用者と共に、それも唯一の正解としての完成ではなく、多様なあり方としての完成へ近づいていく空間は現代の公共空間にはほとんどないと思っています。

このような経験をしたことで、人と空間の関係性に興味を持つようになりました。


──なるほど。アメリカのホームステイ体験から、地域のコミュニティが空間の使われ方に大きな影響を与えることを学ばれたんですね。確かに子供たちが自由に遊び回ることで、地域全体でのコミュニティが形成されていくというのは印象的です。

フロントヤードの大きな木で遊ぶ子どもたち
フロントヤードの大きな木で遊ぶ子どもたち

──ここまで、ギャップイヤーでどのようなことしてきたのかをお伺いしてきたのですが、実際にギャップイヤーを終えてみて、どのようなことを感じましたか?

大きく2つあって、まずは、ギャップイヤーについてネガティブな印象を持たれることが全くなかったのは少し驚きました。こういう目新しいことに対して、自分としては反対する人が結構多いんじゃないかなぁと予想しながらギャップイヤーに参加したのですが、実際はそんなことはなく、本当にみんなが僕の活動に興味を持ってくれました。

一方で、やっぱりギャップイヤーの知名度はまだまだ低くて、その説明からしないといけないなというのは強く感じたところです。自分としてはもっと広まっていってほしいと思うんですけどね。


——全員がポジティブな反応を示してくれるというのは少し驚きかもしれません。
姜さんは就活をもう終えてらっしゃると伺ったのですが、就活においても特に問題はなかったのですか?

そうですね。就活でも、休学して活動した人を評価されることが多かった気がします。休学自体をネガティブに取られることはなかったです。ただ、休学していた1年間をどのように捉え、何にどう取り組んだのかということがしっかりと説明できていて、かつ休学したことでその後の生活に変化があったということがしっかりと説明できるのならむしろ特大のアドバンテージになると思いますよ。


——そうなんですね。ありがとうございます。
最後に春から大学生活を迎える新入生に伝えたいことはありますか?

春からの新入生には、とりあえず色々やってみてほしいですね。何かをやらない理由も、やる理由も、正直後からなんとでも言えちゃうじゃないですか笑

だからこそ、「やりたいかも」とか「気になるかも」っていう気持ちって少し時間が経つと忘れられちゃう気がするんですよね。新入生の時のフレッシュな気持ちで、いろんなことにチャレンジしてみてほしいなと思います!

姜利英(かん・りよん)さん

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この記事を書いた人

早稲田大学文学部で臨床心理学を専攻している。チームビルディングやマネジメントに関心がある。公園で見知らぬ子どもと犬を愛でることが日課。趣味は散歩とカフェ巡り。

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