2025年度入試より、「新課程入試」がスタートすることを、皆さんはご存じでしょうか?「前例がないなんて不安!」「どうやって勉強すればいいの?」と心配している方も多いのではないでしょうか。この記事では新課程での変更点を全教科紹介し、さらに現代大学生である私が、新課程を攻略するための勉強方法を提案します!
新課程入試とは?
「新課程入試」とは、高校の新しい教育課程に対応した大学入試のことです。
高校では、2022年度から新しい学習指導要領に基づいて教育が行われています。高校1年次から新課程で学んだ学年が大学受験を迎える2025年度の入試から、新課程に対応した「新課程入試」が行われるというわけです。
共通テストにおいても、新しい科目である「情報(情報I)」が追加されるほか、従来の科目に変更点がある教科もあります。
なぜ導入するの?
新課程では、探究的な学びが重視され、知識・技能に加えて、思考力・判断力・表現力や、学びに向かう姿勢を育てることが明記されています。単なる知識の蓄積に時間を費やすのではなく、考える力や自分の考えを表現する力などを、受験勉強を通して育て発揮してほしいという作成者の目的が推察できます。「受験勉強は受験まで」で終わりがちだった以前の学習方法に比べて、高校での学びを未来で役立つ力につなげてほしいという狙いなのではないでしょうか。
いつから始まるの?
共通テストで新課程入試が始まるのは、2025年1月18日(土)・19日(日)に実施される2025年度入試から実施されます。
この学年は高校1年生の時から新課程のカリキュラムで学んでいるため、新課程入試については「以前の入試とは異なる新しいもの」と過剰に反応しなくても大丈夫です。今まで学んだ成果を発揮するということは変わりません。
とはいえ念の為、旧課程入試からの変更点や留意点はひと通り押さえておきましょう。
旧課程生への措置は?
新課程生より不安を感じているのが、旧課程で学習した人だと思います。履修した範囲から出題されるように、経過措置が設けられる科目も用意することを、大学入試センターが発表しています。例えば共通テストの数学、地理歴史・公民は出題科目が再編されるため、2025年度に限り、旧科目履修者のみが選択可能な試験科目が出題されます。
こちらも参考にしてみてください。「独立行政法人大学入試センター:令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト「旧教育課程による出題科目」の出題方法等」
旧課程生の方も焦らず、本番でどのように受験するかしっかり対策を立て、計画に沿って勉強しましょう。
情報
まず、新しい教科「情報Ⅰ」が追加されます。
素点は100点満点、試験時間は60分で、2025年度の共通テストでは2日目(1月19日)の17:00~18:00に実施予定です。国公立大学の多くが「情報Ⅰ」を受験必須科目としているため、国公立大学志望者は受験に向けた準備が必要になります。4つの大問から構成されており、選択方法は全て必答となっています。
導入目的
現代社会で、生活に役立つためのモノやサービスを生み出すには、AIやビックデータの活用は、もはや避けられません。この傾向を鑑みて、大学入試でも必須科目に仲間入りをしたのでしょう。
実際社会では、文系か理系かは関係なく、何をするにもまず根拠となる「データ」が存在し、それを正しく分析して活用する能力が求められます。私立文系の大学生の私も、実際に統計リテラシーやデータサイエンスを必修科目として大学で学びました。あらゆる学問分野にとって必須の知識と言えます。
勉強法
まずは、教科書全体を読み直しましょう。プログラミングの問題を授業では長くやっているかもしれませんが、試験では1/3~1/4程度しかプログラミング問題は出ません。教科書から満遍なく出題されることを想定に、おろそかになっている部分がないか再確認しましょう。
また、正答率が一気に下がる箇所は、プログラミング問題の問2の図から問3です。そもそも何をしているのか理解することに時間がかかってしまう人が多いようです。
効率的に問題を理解するには、言語を素早く読み取ることが必要です。本番の問題は「DNCL」という共通テスト用の言語で出題されます。
授業で習ったプログラム言語とは異なるかもしれませんが、基本的な考え方は同じなので、プログラムを書いた経験が有利にはたらきます。言語を事前に知っていることと、プログラミングの形式や言語に慣れておくことが大切です。
数学Ⅰ・A
数IAは全問必答に変更されます。また、数学Ⅰ「データの分析」に「仮説検定」が、数学A「場合の数と確率」に「期待値」が、新たな項目として追加されます。
数学Ⅱ・B・C
数学②の「数学Ⅱ・B」が「数学Ⅱ・B・C」となり、出題範囲に「数学C」が加わります。
必答問題は、数学Ⅱの「三角関数」「指数関数・対数関数」「微分・積分」の3題。
選択問題は、数学Bの「数列」「統計的な推測」、数学Cの「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の4題で、4題から3題を選択して解答します。
問題数の増加に伴い、試験時間は10分延びて70分に変更されます。
もともと数IIBの選択問題だった「確率分布と統計的な推測」必答となり、数3の範囲だった「平面上の曲線と複素数平面」が選択問題に変更されます。
勉強方法
新指導要領で勉強してきた学生の方には、それほど大きな変更ではないでしょう。過去に共通テストに出題がない項目も、教科書に載っている場合はよく読み直し、予想問題集などで対策しましょう。
国語
現代文の「近代以降の文章」についての大問が追加され、以下のように大問5つの構成になり、配点にも変更があります。
第1問=論説・説明的文章…45点
第2問=小説・文学的文章…45点
第3問=実用的文章+グラフ図表読み取り…20点
第4問=古文…45点
第5問=漢文…45点
問題数の増加に伴い、試験時間は10分延びて90分に変更されます。
なお、試作問題の内容から、近代以降の文章のうち1問は、報告書などの「実用的な文章」を扱い、図表やグラフを含む複数の文章を解釈したり、レポート作成を想定した設問に答えたりする内容になると予想されます。
導入目的
「新言葉による記録、要約、説明、論述、話し合い等の言語活動を重視して、目的や場面に応じて必要な情報と情報の関係を的確に理解する力や、さまざまな文章の内容を把握したり、適切に解釈したりする力等も含め多様な資質・能力を評価できるようにする。(独立行政法人大学入試センター 令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの 出題教科・科目の問題作成方針に関する検討の方向性についてより引用)
やはり旧課程より、社会で求められている能力や、国語と他の要素を掛け合わせた総合的な能力を測りたいという目的の強さが感じられます。
勉強方法
大学入試センターが出している試作問題は、必ず解いておきましょう。
国語 試作問題 第A問 出典: 大学入試センター「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」
試作問題から分かる通り、本番は短い時間でたくさんの資料を読まなければいけなかったり、見慣れない形式の問題が出たりする可能性があります。各社から出版されている問題集などを利用してできるだけ予想問題をたくさん解き、新しい問題に「慣れる」ことが、攻略への第一歩です。
また、国語の試験時間は90分と、かなりの長丁場になります。90分間、集中力が持続するような対策をしておきましょう。当時共通テスト国語(80分)を受けた私は、1→3→5→2→4→6のように、現代文と古典が混ざるように解いていました。他の学生が1番疲れるであろう現代文の最後の大問で、満点を取りました。集中力の持続方法は人それぞれですので、自分なりの対策を考えて、ぜひ90分を無駄にしないようにがんばってください。
社会
「地理総合、地理探究」「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」「公共、倫理」「公共、政治・経済」「地理総合・歴史総合・公共」(「地理総合・歴史総合・公共」は3分野から2分野を選択して解答)の計6科目から最大2科目を選択(「公共、倫理」と「公共、政治・経済」の2科目選択は不可)。
また、2科目に「地理総合・歴史総合・公共」を含む場合は、「地理総合・歴史総合・公共」で選択する2分野と異なる分野から1科目を選択する必要があります(表を参照)。
大学入試センター 令和7年度大学入学共通テストについての説明資料より
勉強法
科目にこそ大幅な変更があったものの、対策方法は旧課程と変わりません。まずは教科書、そして過去問や予想問題をしっかり確認しましょう。歴史に関しては、日本史、世界史どちらも勉強する必要がありますが、この2科目は決して別物ではありません。相互に関連付けて覚えることで、より抜けにくい記憶になりますし、結果的に深い学びにもつながるでしょう。履修のしかたによっては、高校1.2年生の間に授業を受け終わっていてブランクがある科目がある人もいると思うので、復習はこまめに周回し、どれかを置き去りにしないように勉強しましょう。
理科
大きな変更ではありませんが、化学では、一部で語句の変更(「希ガス→貴ガス」「反応熱→反応エンタルピー」など)がありました。
生物では、「生物の特徴」の単元において、遺伝子発現におけるコドン表の内容を扱うようになった。また、「恒常性」の単元では、心臓や腎臓の扱いが減って神経系の扱いが増え、「生態系」の単元では、物質循環が生物に移行して生物多様性の内容が増えました。
まとめ
新課程で追加された科目や変更のあった科目、導入目的の考察、勉強法について全科目分一気に紹介しました。入試は、時代によって変化します。入試や学習カリキュラムが変わるということは、社会で求められる力も変わっているということ、今学んでいることは入試だけではなく将来に直結するということです。過去問が少なく不安に思う人もいるかもしれませんが、条件は全員同じ。過度に不安に思う必要はありません。予想問題集をたくさんの会社が出しているので、そういった素材を駆使して最大限の準備をしましょう。
余談ですが、筆者はセンター試験が共通テストに変わって間もない頃に受験をしました。形式が変わり、1問にかける時間や問題を理解する時間が長くなりましたが、出題者が受験生の本当に測りたい学力を測れるようになるための変更だったのかなという感想です。共通テストまでの少ない時間の中で、試行錯誤して本番に備えてください。応援しています!