「あなたはなぜこの大学・学部を選びましたか?」
推薦やAO入試がある大学では必ず聞かれるこの質問、最近では一般入試のアンケートでも聞かれるようになりました。
4年間もしくはそれ以上の期間、多額の学費をかけて通う大学は、大学選びだけではなく、学部選びがとても重要です。なんとなくのイメージ、就職に有利そう、偏差値が丁度いいからなどの理由で決めてしまうのはもったいないです。
また、何を勉強するか、どんな楽しいことが待っているか分からない状態で、受験勉強をしてもやる気が続きません。
そこでこの記事では、現役大学生へのインタビューをまとめた書籍『13歳からの学部選び』をもとに、経済学部の学生が実際にどんな勉強をしていて、どんな経験ができるのか? 学部選択に役立つ情報をまとめました。
経済学部とは何か?
経済学部は「ヒト・モノ・カネ・情報」の動きを捉えて、経済がまわる仕組みを学ぶ学部です。
経済を回している主体をざっくり分けると、家計(家庭・個人)、企業、政府の三者となります。それぞれがどのような役割を担っていて、どのように経済活動を展開しているのかを、さまざまな観点から研究しています。
データ分析、経済予測、政策分析、調査、経営戦略など、さまざまな理論や分析手法を、授業やゼミなどを通して学んでいきます。最終的には自分が取り組みたいテーマを決め、過去の論文やデータ、インタビューなどを元に研究していきます。
経済学部の入り口
経済学を勉強し始めて、最初の頃に学ぶのがマクロ経済学とミクロ経済学です。
マクロ経済学
「マクロ経済学」とは、政府・企業・家計を合わせた全体の経済の動きを捉える学問です。国の経済成長率や失業率、消費者が購入する商品・サービスの価格変動を示す物価指数などのデータを駆使しながら、経済を大きな単位で考えます。
ミクロ経済学
「ミクロ経済学」とは、家計や企業といった、小さい単位での経済の動きを捉え、商品・サービスの価格がどのように決定され、行きわたっているのかを調べる学問です。マクロ経済学より狭い視点で細かく分析していきます。
経済学部で学ぶ3つのトピック
経済学部では「マクロ経済学」と「ミクロ経済学」という大枠を理解した上で、身の回りの経済活動について勉強します。
その中でも主要となる「行動経済学」「経営学」「財政学」という3つのトピックスについて紹介したいと思います。(大学の中には、経営学をメインに学ぶ経営学部を設置しているところもあります。より経営に特化した勉強をしたい方は、経営学部もおすすめです。)
行動経済学
これまで経済学では「人間は合理的な行動をする」ということが当たり前に前提とされていました。
選択肢がいくつもあった場合、人間はお得な方を選択すると想像してしまいますが、実際には非合理的な行動をとる場合があります。なぜ人間が非合理的な選択をしてしまうかを心理学と絡めて考える分野が「行動経済学」です。
日常の生活に置き換えた2つの例で考えてみましょう。皆さんはどの選択肢を選びますか?
例① 損失回避性
質問:①と②の選択肢を与えられたら、どちらを選びますか?
① 10分の1の確率で10億円が手に入る
② 必ず1000万円が手に入る
受け取れる見込み金額は、①は1億円、②は1000万円です。①の方が合理的ですが、②を選ぶ人が多いです。それは10分の9の確率で、①は何も得られない可能性があるという損出を、過大評価してしまう心理が影響しています。この理論を「損出回避性」と言います。
例② 極端回避性
質問:①〜③の3つのお弁当が並んでいたら、どれを選びますか?
① 1,000円のお弁当
② 800円のお弁当
③ 500円のお弁当
お弁当に1,000円出すのは少し躊躇しますよね。ですがこの1,000円のお弁当が選択肢に入っていると、800円のお弁当がよく売れるようになるのです。
マーケティングの観点からメニューを考えると、どんなに売れなくても、1,000円のお弁当を用意した方が最終的な売り上げは高くなるのです。この理論を「極端回避性」と言います。
このように、さまざまな理論を学び、実際にどのような場面で役立つのか考えていくのが「行動経済学」です。上の例は、一見当たり前に感じるかもしれませんが、この当たり前を感覚ではなく、根拠を示して説明できるようになります。
経営学
「経営学」では、実際に存在する企業を分析して、よりよい経営の仕方を考えていきます。
経済学部では、データや数式を扱うことが多いですが、経営学は少し違います。実際に工場に行って現地視察をしたり、働いている人にインタビューをしたり、フィールドワークも多く経験します。
経営学の理論を実際の企業の状況に当てはめることで、その理論を深く学び、さらに理論の中で解決できていない新たな課題を見つけ、解決策を考えていきます。
財政学
「財政学」では社会保障や税制、財政健全化など、政府の経済活動におけるお金の動きについて考えます。
社会保障とは、病院での医療費負担を軽減する健康保険や、定年後に受け取る年金、生活困窮者に給付される生活保障などのことです。税制とは、物を買うときに払う消費税、法人税、所得財など、さまざまな税金の仕組みのことです。財政健全化では、日本が抱える借金をどのように減らしていくかがテーマです。
自分たちが払っている税金はどのように使われているのか、現状どのような制度があり、社会に適して機能しているのかなどを学び、社会経済への理解を深める学問です。
経済学部に通う大学生の声
では、実際に経済学部に通う大学生は、具体的にどんな研究をしているのでしょうか。
大学生Aさん
Aさんは大学で「仕事の引き継ぎ」について研究しています。
会社では部署移動や転職など、仕事を別の方へ引き継ぐ場面が多々あります。引き継ぎする内容は、マニュアル化できる業務だけではなく、取引先との関係値、部署内の人間関係などさまざまです。
そこでAさんは、一時的に仕事をして、母国に帰る予定の駐在員の方にインタビューをしながら、現状どのようにして引き継ぎが行われているか、どのような引き継ぎの仕方なら仕事がしやすくなるかを考えているそうです。
大学生Bさん
Bさんは大学で「生活保護受給者の中でも65歳以上の受給者の割合が特に高く、年々高まっている」ということを課題に感じ、その理由を分析しています。
大学生の研究は参考になりそうな論文を探すことから始まります。論文を参考にしながら、分析方法を実際に試したり、アレンジしながら研究を進めていきます。
Bさんの場合は、宮寺良光さんが2017年に発表した論文を元に、データを最新のものに置き換えたり、追加しながら仮説・検証を繰り返して研究を進めているそうです。
経済学部で取れる資格
経済学部で取り扱う学問の範囲はとても広いので、取れる資格もさまざまです。大学や地域、カリキュラムなどによっても異なりますが、主な資格をまとめました。
簿記技能検定
簿記の知識と技術を評価するための資格です。簿記の基礎や会計処理の方法について学ぶことができます。
証券アナリスト試験
証券市場や投資に関する知識を評価するための資格です。証券分析や投資戦略について学びます。
金融資格
金融業界での就職に有利な資格として、証券外務員一種試験や金融検定などがあります。これらの資格は金融商品や法律に関する知識などを学びます。
経済学関連資格
経済学の専門知識を深めるための資格です。日本銀行主催の経済検定や公認経済学者試験などがあります。
グローバルビジネス資格
国際的なビジネスに関する知識を評価するための資格として、国際ビジネスコミュニケーション協会(ICC)が主催する国際ビジネスコミュニケーション検定などがあります。
経済学部の主な就職先
経済学部の学生は実際どのような職業に就いているのでしょうか? 主要大学が発表している進学先データを元に、経済学部の主な就職先を紹介していきます。
金融業界
銀行や証券会社などの金融機関は、経済学部での学びがダイレクトに生かせることも多く、メガバンクから地方銀行、信用金庫など全国にあるため、Uターンする学生の就職先としても人気があります。
保険業界
生命保険や損害保険など、保険を扱う会社は、人々のリスク回避の傾向が高くなり、高齢者社会へと向かう中で、さらに需要が高まる分野です。統計学など経済学部で学んだことも生かせる人気の業界です。
製造業界
電化製品や食品まで、さまざまな製造会社があります。営業、マーケディング、広報、人事など、1つの会社でもさまざまな部署があるため、自分が勉強してきた得意分野を生かすこともできます。
マスコミ・情報通信業界
マスコミ・情報通信業界は、テレビ制作会社や広告代理店、NTTなど電話回線提供や、インターネットサービスなどを扱う会社です。経済学部では行動経済学など、マーケティングを合わせた勉強も多いので、消費者の需要や購買欲求にどうアプローチするかなど、知識を生かすことができます。
まとめ
いかがでしたか?経済学部に入ってから、卒業するまでのイメージを掴めたでしょうか?
私たちは毎日何かしらの経済活動を行っています。よりより暮らしや社会に向けてどう行動していけばよいか、ダイレクトに学べるのが経済学部です。
就職に生かせるスキルや考え方も多く学ぶこともできます。大学ごとに取れる資格も違ってくるので、ぜひ調べてみてください。
この記事が皆さんの学部選びの参考になっていれば幸いです。
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