はじめに
学校の地域連携とは、一般には「幅広い地域住民の参画を得て、地域全体で子供たちの学びや成長を支えるとともに、『学校を核とした地域づくり』を目指して、地域と学校が相互にパートナーとして、様々な取組を組み合わせて実 施する活動」とされています。
本記事では地域連携の重要性に始まり、ポイントや具体的な方法についてご紹介したいと思います。
全国の学校が地域連携を図る重要性とは
そもそもなぜ学校が地域連携を図る必要があるのか、学校や子ども、地域にとってどのようなメリットがあるのかといったことについて見ていこうと思います。
地域連携が子どもたち・学校教育に与える影響とは
ここでは文科省の平成27年中央教育審議会の答申をもとに、地域連携が子どもと学校教育に与える影響についてご紹介しようと思います。
(参考:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1365991.htm)
①これからの時代を生き抜く力の育成の観点
子どもは学校だけでなく、地域社会とのつながりや信頼できる大人との多くの関わりを通して成長していきます。地域住民や企業・NPOなど様々な専門知識・能力を持った地域人材が関わることで、子どもたちの幅広い知識・能力を育成することができます。
②地域に信頼される学校づくりの観点
学校は様々な課題を抱えており、それを学校内で全て解決しよう、といったことは非常に難しいと思われます。地域住民や保護者等が学校運営に対する理解を深め、積極的に参画することで、学校をより良いものにしていこうという当事者意識を高め、子どもの教育に対する責任を社会的に分担していくことが理想的なのではないでしょうか。
③社会全体で子ども達を守り安心して子育てできる環境を整備する観点
子供たちの安全・安心の確保・非行防止・健全育成という観点からも、まずは学校に関する活動の中で気軽に子どもたちに声を掛けるなど、学校と地域の連携の中で子供たちの様子を見守っていくことが重要です。個人や個々の機関だけでは対応が困難な課題についても、学校と地域の連携・協働により保護者や子供に必要な支援を行うことで、家庭や子供の変化をもたらすことに繋がります。
地域連携がもたらす社会的な影響とは
地域の未来を担う子どもたちの成長は,その地域に住む人々の希望とも言えます。そのため地域社会を構成する一人一人が当事者としての役割と責任を自覚し、主体的・自主的に子供たちの学びに関わり支えていく中で、地域住民の学びを起点に地域の教育力を向上させる。そして、社会的な教育の基盤を構築し、ふるさとに根付く子どもたちを育てることは、地域の振興・再生にもつながるのではないでしょうか。
地域連携の活動例
ここでは、様々な地域連携の例について紹介したいと思います。
地域のリソースを活用した学校活動
自分が住む地域の名産や文化などの魅力を知る「郷土学習」というものがあり、地域住民のお話を聴く、実際に体験してみる、調べ学習をするなどといったように、様々な学習方法が実践されています。
地域住民の参画を促す取り組み
地域住民の方の職場に伺い職業体験をさせてもらう、地域住民の方に学校に訪問してもらい子どもたちに向けて講演してもらう・子どもたちと対話してもらうというように、地域住民が学校の授業に参画する形での地域連携も実践されています。また、登下校の見守りや通学路の整備などのように、子どもたちが学校に通いやすい環境を整えるといった活動もみられます。
保護者の参画を促す取り組み
寄り添いが必要な子どもや不登校傾向のある子ども等への対応について、保護者が学び合う・相談し合う機会を地域内で作ることは、学校教育・家庭教育への支援になります。
地域行事やボランティア活動
地域の伝統行事やお祭りなどでの発表やボランティア、地域の防災訓練への参加を子どもたちに周知し促すことも、一つの地域連携の形と言えるでしょう。
学校の地域連携を成功させるためのコツ
ここでは、地域連を成功させるためにはどのようなポイントを抑える必要があるのか、どのような仕組みが必要なのかということについて、紹介したいと思います。
教員と地域住民の理解
地域連携を行う上で最も重要と言っても過言ではないのが、教員と地域住民の活動への理解です。きちんとした説明や相談、目標共有により、認識を合わせる必要があります。
コーディネーターの設置
教員と学外の地域住民は、基本的には普段関わる機会が少ない傾向にあります。そこで円滑なコミュニケーションをとるために、学校内外を繋ぐコーディネーターという人材を設置することが理想的です。このコーディネーターは、普段から教員・地域住民のどちらともコミュニケーションをとり、必要に応じて人と人を繋ぐ役割を果たす必要があるでしょう。
コミュニティ・スクールの仕組みづくり
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組みであり、学校運営への必要な支援に関する協議を行います。こうした仕組みにより、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができます。
(参考:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/index.htm)
地域連携の評価と持続可能な展開
ここでは、上で紹介した地域連携を長期的に続けるためのポイントについて紹介したいと思います。
地域連携の成果を継続的に評価・改善する方法
評価方法の一例として、私の出身校やある地域では、学校の地域連携について、地域住民との関わりにより子どもに意識の変化があったか等のアンケートを採っていました。
しかし、地域連携の成果について、個人的には目に見えない成果も多くあると思っています。運営上評価や改善をする必要が出てくることもあるかと思いますので、ご参考までに。
地域住民との長期的なパートナーシップ構築
地域住民と長期にわたって協働関係を築くためには、やはり学校側の信頼や地域住民が「協力してよかった」と思える何かが重要になってくると思います。
例えば、授業内で地域住民の方に農業体験をさせてもらった場合、体験後に子どもたちが感想文を書き、それを協力してくださった地域住民の方に共有するともにお礼を伝えるなどといったことは、実際に行われているようです。こうした行動が持続可能な学校と地域の連携を生み出すのかもしれません。
地域連携成功事例から見る未来の学校と地域の関係性
ここでは地域連携の取り組みの一例として、横浜市立東山田中学校での取り組みを紹介しようと思います。
横浜市立東山田中学校では、子どもと大人が一緒につどい学ぶ場・地域と学校をむすぶ場として、学内に「コミュニティハウス」と呼ばれるものがあります。この「コミュニティハウス」は、大人と子どもが集まるサロンやおやこひろばなどの機会を用意することで、「地域の縁側」としての役割を果たしています。こうした取り組みにより、教育内容が充実し教職員の負担が減った、学校を核に地域の事業所・人が繋がった、防災をテーマに地域の活動が広がったなどといった効果があったようです。
まとめ 地域との連携が育む未来の教育の形
学校は、全ての子どもたちが自立し豊かな人生を送ることができるよう、その基礎となる力を培う場であるとともに、地域の将来の担い手となる人材を育成する役割を果たしていかなければなりません。一方地域は、実生活・実社会について体験的・探究的に学習できる場として、子どもたちの学びを豊かにしていく役割を果たす必要があります。
教育は地域社会を動かしていくエンジンの役割を担うとともに、子どもたち一人一人の潜在能力を最大限に引き出し、全ての子どもたちが幸福に、より良く生きられるようにすることが求められています。上記の学校と地域のそれぞれの役割を踏まえると、学校の地域連携は、こうした教育を実現していくために相応しい手段だと言えるのではないでしょうか。
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