はじめに
「夏休みの宿題」と聞くと、苦い思い出がよみがえる方も多いのではないでしょうか? 朝から遊ぼうとすると保護者に「宿題が終わってからにしなさい!」と怒られたり、始業式の前日になっても宿題が終わっておらず夜通し取り組む羽目になったり、宿題は終わったと思って油断していたら実は見落としていた宿題が後から見つかって慌てたり……
せっかくの夏休みなんだから、宿題なんてなんてない方がいい!と思う方は多いのかもしれません。そこで、この記事では、「夏休みの宿題って本当に必要なのか?」を考えてみたいと思います。
宿題の目的とは
夏休みの宿題の最大の目的は、家にいても勉強する機会を作ることです。「宿題なんていらない」と思う方は自分の胸に手を当てて問いかけてみてください。あなたは、もし仮に宿題がなかったとして、夏休みに自ら進んで勉強すると思いますか?残念ながら、胸を張ってYESと言える方は多くないでしょう。
せっかく1学期の間にコツコツ勉強してきたのに、夏休みを挟んだせいで勉強する習慣を失い、学習した内容まで忘れてしまっては、学業に支障をきたします。そこで、学校側は生徒に宿題を課すことで、義務的にでも机に向かわせ、家でも勉強する機会を作り出しているのです。
宿題って効果ある?
宿題の効果については様々な調査・研究が行われています。一口に「宿題」と言っても、日々の宿題から長期休みの宿題まで幅広く存在します。また、小学生、中学生、高校生と、生徒の年齢によっても宿題の意味付けは変わってくるので、様々な切り口から分析する必要があります。
デューク大学の研究者、ハリス・クーパー博士の研究によると、小学生など幼い頃に課される宿題は、学習の習慣を身につける意味合いが大きいそうです。年齢が上がるほど宿題が学業成績に寄与する割合が上がっていき、特に中学生、高校生のような高学年の生徒になると、宿題の学習効果が特に高くなることがわかりました。
宿題のメリット
先ほどの研究でもわかったように、学年が上がるほど、宿題は成績向上につながります。長期休みの間に家で復習をすることによって、記憶が定着しやすくなります。
また、夏休みに自分でスケジュールを立てて計画的に宿題に取り組むことは、自律的に物事に取り組む姿勢を身につける練習になります。これは学生のうちだけではなく、大人になってからも役に立つ力です。夏休みは際限なくだらけることができてしまうので、宿題を一つのペースメーカーとすることで、メリハリのある日々を過ごすことができるのです。
また、保護者にとっても、子供が勉強している様子を間近で見る機会となります。子供がどういう学習態度なのか、何が得意でどこに苦手を感じているのかを知ることができます。
宿題のデメリット
宿題の最大のデメリットは、時間がかかることです。せっかくの夏休み、子供が本来やりたいことに使える時間を奪ってしまいます。際限なく時間をかけて問題に取り組むことができるから、だらだらと机に座るクセがついてしまい、時間を浪費する可能性があります。
また、宿題は単純作業になりがちなので、学ぶこと本来の面白さを味わえなくなり、「勉強=つまらないもの」という認識を助長してしまう危険性があります。極端な話、答えの丸写しもできてしまうので、宿題を課されたからといって真剣に勉強に取り組むとは限りません。そんな様子を保護者から口出しされたりすると、子供にとっても気分のいいものではないので、家庭内トラブルのもとにもなりかねません。
宿題の代替案・改善案
一部の小学校では、夏休みの宿題を廃止する動きも出てきています。
岐阜県の市立岐阜小学校では、2022年度から画一的な夏休みの宿題を廃止し、子供が自ら課題を考えて取り組む「家庭学習」を代わりに課しています。ドリルやノートを採点するだけより、生徒一人一人の個性と向き合えるそうです。
山形県の新庄市立日新小学校でも、2023年度から夏休みの宿題を廃止し、代わりに提出不要のプリントを自由に持ち帰ってよい形式にしています。
保護者の役割とは
普段は学校にいる子供が家にいると、保護者の方としても何かと目について気になるものです。遊び呆けているように見えると、宿題はちゃんとやれているのかと気になってしまうのも仕方ありません。
とはいえ、自分が気になったからといって気まぐれに叱ったり注意したりするのでは、ご自身の不安こそ一時的に解消されるかもしれませんが、それが子供のためになっているとは残念ながら言い難いです。では、保護者の方はどうやって、子供の宿題と関わって行くべきなのでしょうか。
宿題支援のあり方
まず、保護者が代わりにやってしまうのは悪手です。学習の機会を奪うだけではなく、子供に「やりたくないことは誰かが代わりにやってくれる」という意識が刷り込まれてしまう危険性があります。ましてや宿題代行サービスに頼むなんてもってのほかです。
保護者の方にできることは、子供の学習に対するモチベーションを保つことと、子供が立てたスケジュールの進行を一緒に見守ることです。子供の学年が上がってくると、だんだん学習内容が難しくなり、保護者が教えることも難しくなってきます。しかし、無理して子供に教えようとする必要はありません。普段は学校で先生に教わっているのだから、保護者が的外れな教え方をして「何にもわかってないな、相談するだけ無駄だな」と子供に思われる方がその後の関わり方に悪影響を及ぼします。
家庭での学習環境整備の重要性
「家では集中して勉強できない」という学生は意外と多いです。夏休み、大人が楽しくテレビを見ているところに「勉強するからテレビ消して」の一言が遠慮して言えない子供もいます。
普段と違う生活になる夏休みだからこそ、保護者は意識的に子供の学習環境に気を配る必要があります。例えば夏休みでも規則正しい生活を維持し、ルーティンの中で子供の学習時間を確保するなど、子供が学習しやすい環境を整えることが保護者の役目であるといえます。
おわりに
ちなみに筆者の場合、計画を立てるのは好きだけど守るのは苦手という自覚があったので、夏休みの宿題は最初の1週間でだいたい全部終わらせる方針でした。どれだけ「宿題なんてなければいいのに」と思っても、目の前の宿題がなくなるわけではありません。スケジュールを立てたり、学習環境を整えたりして、始業式に間に合うように上手に付き合っていきましょう。
公式サイトにて、カルぺ・ディエムが提供している具体的なサービスを紹介中!
カルペ・ディエムでは、学校や保護者のみなさまが抱える懸念やニーズに応える形で、講演・講座・ワークショップを提案し、それらを実施しております。
生徒の皆さんの大学選びや学部選びのワークショップ、モチベーション向上を目的とした講演、独自の探究学習授業、長期休暇中の学習合宿、難関大学合格を目指した通年プロジェクトなど、さまざまなプランをご用意しております。
私たちの講師は現役東大生で 偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠をはじめ、地域格差や経済格差などの多様な逆境を乗り越えた講師たちが、生徒の皆さんに寄り添って全力でサポートいたします。
ご質問やご相談だけでも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。