参考書の効率的な使い方を知ろう

みなさんは、参考書の使い方をご存じでしょうか? 最近は、内容がよく練られた素晴らしい参考書も増えており、うまく活用すれば、それだけで東大を目指すことも不可能ではありません。実際、筆者の知り合いに何人か参考書の勉強だけで東大に進学した人もおりますし、筆者自身も、参考書による勉強だけで全国偏差値70まであげることができました。今回は、参考書の選び方、使い方についてお伝えします。

目次

参考書の選び方

今や無数に存在する参考書ですが、どれを使ってもいいわけではありません。全体的に学習したいのか、一部の分野だけ特訓したいのか。もしくは、レベルの高いものがいいのか、基礎から学びたいのか。口コミはどうか。さまざまな面をチェックする必要があります。

目的やレベルに合わせて選ぶ

参考書を選ぶうえで、一番重要なのは、目的とレベルです。目的とは、その本を使うにあたって、どのような効果を望んでいるか。例えば、数学の参考書に『青チャート』というシリーズがあります。1Aや2Bなど分野ごとに分かれていて、それぞれが辞書のように分厚い本です。問題数が充実していることが大きな特徴で、これに載っている問題をひととおり解けるようになれば、大抵の大学の過去問に挑戦できるレベルにまで達します。また、別の参考書に『一対一対応』というシリーズがあります。これは、青チャートの1/5程度の厚みしかありませんが、多くの良問が掲載されており、受験本番に必要な発想力や対応力を磨くことができます。

それでは、『青チャート』や『1対1対応』は、それぞれどのような学生に勧められるでしょうか? 青チャートの特徴は、レベル1から5までに分かれた300以上にも及ぶ問題数であり、基礎から数学を学び始めて本番レベルにまで完成させたい学生にはお勧めできるでしょう。ですが、非常に分厚いことから一周に非常に時間がかかることが難点。高校三年生から始めたのでは、おそらく間に合わないでしょう。遅くとも、高校二年生の段階から解き進めておきたい。これを考えると、『青チャート』は「基礎から受験レベルまで数学を完成させたい高校一年生、高校二年生」におすすめできると考えられます。一方で、『一対一対応』は薄いながらも受験に対応できるまでの良問がそろっていることが特徴。短期間で実力を養成したいならうってつけです。しかし、基礎レベルの問題は少なく、ある程度の理解力が必要になります。ですから、この本をおすすめできるのは「ある程度の実力を持っていて、本番レベルまで力を高めたい高校三年生」といえます。ほかにも、『確率が面白いほどわかる本』など、分野別になっている参考書も存在します。これらは、特定の分野の苦手を解消したい、もしくは得意をさらに伸ばしたい人におすすめできるでしょう。

このように、「自分に合った参考書」は、自分のレベル、受験までの時期などによって大きく変動します。参考書を選びに行く前に、自分と向かい合って、自分に本当に必要なものは何かを考える時間を取ってください

口コミや評価をチェックする

次に、口コミや評価を確かめましょう。口コミは、「よかった」のような一言だけではなく、「内容のどこがよくて、どこがいまいちだったか」まで書いてあるものをチェックしてください

この時に確かめるべきなのは、「どこが悪かったか」です。基本的に、詳細な口コミが付くような参考書であれば、売れている本とみて間違いない。売れているのは、中身がいいからです。ですから、「いい本」と考えていいでしょう。ですが、どれだけいい本だからといって、自分の使い方や考え方、勉強スタイルにあっているかは別の話ですよね。ですから、「どこが悪かった」を確認すべきなのです。その批判の内容をみれば、その参考書がどのような欠点を持っているかがわかりますよね。

例えば、英文法の参考書にはさまざまなスタイルがあります。解説がメインの「読書用」の本もあれば、問題がメインの問題集もあります。もしあなたが「文法問題について解説が読みたい!」と考えているのであれば、「いい本だけど解説が少なかった」とレビューされている本は、あわない可能性が高いですよね。優れている点は、なくても許すことができるかもしれませんが、今一つの欠点は、どうしても目についてしまいます。ですから、参考書を選ぶときには、優れた点よりも、欠点を気にしながら選んだ方がよいのです

実際に本屋で選ぶ

 その参考書が自分の学習スタイルに合っているか確かめるために、実際に本屋に行って手に取りながら確かめるようにしましょう。例えば、問題を解き進めながら学習を進めたいのであれば、問題数が充実しているものがいいでしょうし、まずは知識をインプットしていきたいのであれば、解説がぶ厚いものがいいと考えられます。これらは、ネットの注文ページからはなかなか伝わりにくい。実際に諸点に行った人しかわからない違いがあります。たった一冊の本によって、偏差値が5ポイントも10ポイントも変わってくるかもしれない。ここは、面倒くさがらずに、書店へ足を運んで、じっくり選ぶべきでしょう。

参考書の有効活用法

参考書は買っただけでは効果がありません。実際に解き進めねばならない。その進め方も、やはり効率の良い方法と悪い方法があります。ここでは、参考書の使い方についてお伝えします。

問題集を活用する方法

問題集を活用するときには、注意すべきポイントがあります。問題を解くだけでは、学習効果は半減してしまうので、しっかり以下の注意点に気を払いながら学習してください。

①選択肢式の問題は、「ハズレの選択肢」まで吟味する

選択肢式の問題については、ハズレの選択肢をしっかり吟味しましょう。「正解の選択肢」を選べるだけで満足してはいけません。ハズレの選択肢が、なぜ「不正解」なのか、そこまでしっかりと説明できるようになれて、はじめて問題が解けたカウントに入れます。

なぜハズレの選択肢まで吟味する必要があるのか? それは、自分がなぜ解けたのか、しっかり確認するためです。問題集を解く理由は、もちろん「問題集を終わらせるため」ではありません。そうではなくて、「問題演習を通して、受験本番に耐えうる強靭な学力を養成すること」が目的でしょう。そうなれば、問題を解いた時には、「同じような問題が何回出ても100%正解できる学力」を獲得できていなくてはいけません。

仮に正解の選択肢だけを選んだ場合、それは素直に喜べるものではありません。なぜならば、もしかするとまぐれでアタリを引いただけかもしれませんし、次に類題が出た時、簡単なひっかけに引っかかってしまうかもしれないからです。これらを防ぐためには、「自分はこのような理由をもって、この選択肢を選んだ」と断言できる状態になっていなくてはなりません。ハズレの選択肢吟味は、「次に間違えない自分」を育むために役に立つのです。必ず、正解だけではなく不正解の選択肢まで考えるようにしましょう。

②記述式の問題は、自分一人で回答が再現できるまで復習する

記述式の問題については、解答解説を暗記してはいけません。もちろん、学習を進めるうえで、新しい考え方や知識を覚えていくことは重要ですが、そのために解説を丸暗記しても何の意味もないのです。

記述問題を解く上で覚えるべきは、解答解説ではなくて「解答の方針」です。解答のすべての行について、「どうしてそのような解答を作れるのか」答えられるようにならなくてはいけません。なぜならば、解答を丸暗記しただけでは、すこし数字や設定を変えただけの類題に引っ掛けられてしまうからです。一方で、解答の方針を覚えることができれば、どのような問題であっても、対応できます。「自分はこれをしたいから、このような操作(考え方)をしている」と、根拠をもって立ち向かえるようになれれば、対応力が身につくからです。

解答解説を読んで納得するだけではなく、1行1行すべての行について、「どうしてこのような解答を作っているのか」を、自分の言葉で説明できるようになることが重要です。

単語帳の有効活用

英語や古文の単語帳を使うときには、いくつかのルールを守ると、さらに学習効果が高まります。まず、単語帳を使うときの約束ですが、「すべての単語を相手にしないこと」を守ってください。

これは、「収録されている単語を覚えなくていい」のではありません。そうではなくて、「学習範囲を区切って考えよう」ということです。例えば、ここに2000単語が収録された単語帳があるとします。これを勉強しようとすると、ついつい2000単語相手にしようと考えてしまいがち。ですが、一回目に相手にするのはせいぜい1から100までの100単語くらいが限界でしょう。となれば、あなたが単語帳を開くときに気にすべきは「この2000単語を覚えられるかな」ではなく、「この100単語を覚えられるかな」であるべきですよね。2000は無理でも、100ならいけるかもしれないと思えませんか? このように、膨大な量を相手にするときは、どんどん小分けにして、敵の数を減らしていく方法が有効です。

同じように、復習のタイミングでも、「もう覚えた単語」は、わざわざ復習の対象にせず、どんどん触れる単語の数を減らすべき。一回目にテストするときに、「1秒以内に意味が答えられる単語」にはマルを、「1秒以上5秒以下で意味が答えられる単語」には三角を、それ以上かかる単語にはバツを書き込みます。そして、二回目に復習するときは、三角とバツだけを相手にするのです。こうすれば、復習のハードルが低くなって楽になります。筆者の場合は、三角とバツの問題に、さらに正の字をつけていました。そうすれば、何度間違えたのかが一目瞭然だからです。こうして、3回目以降の復習の時は、「正の字が2画以上ついている単語」のみに絞るなど、工夫していました。

要点のまとめかたや整理法

よく、重要な箇所に「付せん」を貼る方がいます。確かに一見すると重要箇所がマーキングされていて、実用的な方法であるように感じられるでしょう。しかし、これはおすすめできません。なぜならば、学習参考書に載っている内容の大半は重要な内容であって、無駄な内容はほとんど載っていないため、この方法でマーキングをすると、付せんだらけになってしまうからです。付せんを貼る理由は、ほかのページよりも目立たせるためですが、これが多すぎると、結局付せんの中に目的の付せんが埋もれてしまって、当初の目的が達成されなくなってしまいます。この方法で付せんを運用するのであれば、5枚以上の付せんは貼らないほうがいいでしょう。これ以上になると、自分で管理できなくなる可能性があります。

筆者のお勧めは、重要な箇所に付せんを貼るのではなく、「理解した箇所」に付せんを貼る方法です。つまり、自分にとって「もう重要ではない」と感じられる箇所に、付せんを貼っていくのです。こうすれば、いくら付せんが増えてもマイナス効果が出ることはありません。それどころか、自分の達成度が目に見えて増えていく様子がわかるので、達成感が得られます。

効果的な問題演習の進め方

問題演習を行ったら、その日の終わりに必ず復習するようにしましょう。問題を解きっぱなしにしていては、意味がありません。解けた問題にせよ、解けなかった問題にせよ、模試や試験本番で解けるようになっていなくては、意味がないわけです。ですから、「いま解ける」ことに価値はなく、「いつでも解ける」ことを目標にすべき。そのためには、復習を通して、その問題を解く知識を定着させなくてはいけません。

復習の方法ですが、解いた問題をひととおり確認して、頭の中に解法が浮かべば大丈夫です。具体的にどのように解いていくか、なぜそのような方法をとるのか。覚えるべきは、答えではなく解答の指針なので、答えの数字や言葉だけが浮かぶのではなく、その理由がわかっているかを確かめるように復習してください。

効率的な学習計画の立て方

学習のためには、効率的な学習計画の立案が不可欠。闇雲に勉強しても、あまり意味はありません。どの参考書を、いつまでに、どれくらいのペースで終わらせるか。そして、その結果、どのような学習効果を得るか。ここまでを設定したうえで学ばないと、「ただ参考書を読んだだけの人」になってしまいます。わざわざ時間と体力をかけて参考書学習をするのですから、何か成果を得たいですよね。そのためにも、やり始める前に、まずは学習計画を立案するようにしましょう。

期限や目標を設定する

まず設定すべきは、最終的な目標です。「○○大学合格」とか「定期テストで学年一位」とか「○○模試で全国偏差値70をとる」とか、なるべく具体的な目標を立てましょう。そして、そのために必要な参考書を選定します。参考書の選び方については既にお伝えしましたね。自分に足りないと思われる要素について、それを補充してくれるような本を選びましょう。

そうしたら、次はどの参考書をいつまでに終わらせるか計画を立てます。例えば、「東大合格」が目標だった場合、数学の参考書である『青チャート』をひととおり終わらせれば、ある程度入試問題に太刀打ちできます。だからといって、入試前日に解き終わるような計画を立ててしまうと、まずいわけです。過去問演習をする時間が残らないからです。参考書学習をしたら、過去問演習を通して本番力を身につけたい。そう考えると、参考書は、入試本番の半年~3カ月前には終わっていないと、不都合。では、入試本番の半年前、すなわち、入試前年の8月9月ごろまでには、今から数えて何か月の猶予があるのか。そして、その日に終わらせるためには、一日何ページの学習を進めていくべきなのか。このように考えて計画を立案します。大事なのは、「いつまでにその参考書を終わらせるべきなのか」と、「その期限までに、あと何日の猶予があるのか」を考えること。一日に何ページ進めるかは、その結果として出てくるものであって、計算によって最終的に導き出されるものです。「一日3ページくらいでいいかな」と見切り発車をせず、そのペースで終わるかを確かめてから、解き進めましょう。

時間の使い方を工夫する

参考書と言っても、単語帳や、読み物系、問題演習中心の本など様々な種類があります。これらは、それぞれの特徴によって、解くべきタイミング、そうでないタイミングがあります。

例えば、単語帳などは、比較的どこでも勉強しやすいものです。なぜならば、単語帳を引っ張り出して開けば、勉強が開始できるものだからです。読み物系もそうかもしれませんが、単語帳よりも内容を理解する必要がありますから、学習の難易度は少し上がるかもしれません。問題演習系の本は、この中では一番勉強しにくい。普通、演習をするにあたって頭の中だけで解き進める人はいないでしょう。ノートも一緒に開いて、そちらに解いていくものです。そのためには、ノート、ペン、そしてそれらを広げる机が必要になります。

こう考えると、自習室のような、落ち着いてじっくり勉強できる環境で、わざわざ単語帳のためにまとまった時間を割くのはもったいないと考えられます。単語帳学習は電車の中でも、家に帰ってから寝る前の時間でも、時と場所を選ばずに学習が開始できるからです。一方で、問題演習はそうもいきません。電車の中でノートとペンを引っ張り出しても広げる場所がありませんし、仮にそんなことをすれば、周りのお客さんから総スカンを食らうでしょう。このように、一口に学習と言っても「いつでもできる学習」と「時と場合が限られる学習」に分けられます。自分に与えられた時間、環境はどうか、今からやろうと考えている学習は、それらにあっているか。これを考えることで、学習効率はグッと高まります。

集中力を高めるための方法

集中力を高めるためには、ルーティンを設定するのがおすすめ。ルーティンとは、「決まり切った動作」のことで、一連の決まった動きを繰り返すことで、常に同じような精神状態へと自分の心を整える効果があります。たとえば、元プロ野球選手のイチロー選手が、バッターボックスに入るとき、少し袖をまくって、バットを投手の方向に掲げてからバッティングフォームに入ることをご存じでしょうか? もしくは、サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドがフリーキックの直前に大股で5歩下がり、仁王立ちをしてから大きく息を吐いて、キックの動作に入るのも、実はルーティン。これらは、一連の動作をきっかけにして、「いつもの自分」の精神状態を呼び覚ますことが目的とされています。

そのために、ルーティンは毎日繰り返すことが必要です。本番だけやっても意味はありません。毎日練習の段階で、必ず一連の動作を行う。ですから、先述のイチロー選手やロナウド選手も、練習の時からそれぞれのルーティンを行っているはずです。そうすることによって、練習時の「いつもの自分」の精神状態を登録しておく必要があるからです。逆に言えば、いつも繰り返していなければ、とっさの時にルーティンを行っても、参照される「いつもの自分」がないため、冷静さを取り戻すことはできません。

もちろんこれはスポーツ選手以外にも応用が利きます。たとえば、この記事を書いている私は、勉強を始める前に「目をつぶって、机の上に手を置いて、3回深呼吸をする」ことをルーティンに設定していました。これによって、なかなか集中できない勉強し始めにも一気に深い集中力を得ることができましたし、試験本番にも、全く緊張しないで問題を解き進めることができました。

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この記事を書いた人

東京大学文学部。世帯年収300万円台の家庭から東大へ合格。現在学業の傍ら、ライター、作家活動や講演活動を通して逆転合格のノウハウを広める。日刊SPA!、プレジデントオンライン、東洋経済オンラインにて連載経験あり。ゲームとマンガが趣味。

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