※本稿は、東大カルペ・ディエム（著）『外国人しか知らない日本の観光名所』（星海社新書）の一部を再編集したものです。
あなたは盛岡のNAGASAWA COFFEEを知っているか？
外国の方と話していると時々このようなことを言われ、われわれ日本人が知らない、外国人しか知らないもう一つの日本があることに気づかされます。長く住んでいるのに、あるいは住んでいるからこそわれわれ日本人には見えない日本の地域や文化が数多くあるのです。そういった日本の埋もれた魅力が現在、年間２５００万人を超す外国人訪日旅行者（インバウンド）によって次々と発掘されています。
アメリカを代表する新聞『ニューヨーク・タイムズ』では2023年、「今年は盛岡が熱い」という記事が掲載されました。それを見たたくさんの外国人が盛岡を訪れたところ、盛岡の人が「えっ、なんでこんなところに外国人が⁉」と驚いたといいます。盛岡の人より外国の人の方が、盛岡の魅力に気づいているのです。同じような現象は今、日本のいろいろな地域で起こっています。
そういった「外国人しか知らない日本」を、この本で日本のみなさんに紹介したいと思います。
この本について
観光は、「光を観る」と書きます。そして「光」は、自分で光っているつもりがなくても、相手が見出す場合だってあるのです。その地域に住んでいる人たちにとっては、自分の地域の面白さは意外とわからないものです。
昔、筆者が長崎県の波佐見町という焼物で有名な地域の中学校に行ったとき、「この地域には何もないよ」と言う地元の人に、「波佐見焼があるじゃないか」と反論したら、ポカンとした表情を浮かべられたことがあります。波佐見町ではその焼物が当たり前すぎて、他の地域にはない良さだということが意識されていなかったのです。
このように、私たち日本人からすれば当たり前のことも、外国人から見ればユニークに映ることがあります。逆にいえば、外国人が面白く感じることを、私たちはまだ発見できていないかもしれません。
例えば、徳島の「かかしの里」はあるドイツ人の留学生が「かわいい人形がたくさんいる村がある」と動画をアップロードして、一躍人気の観光名所になりました。
ドイツには昔話のような風景で有名なメルヘン街道があります。人形などに造詣が深いドイツ人の感性で徳島のかかしを見たからこそ、「かわいい」と思ったのでしょう。そのドイツ人が発見するまで、かかしの里のかかしを「かわいい」という感性で捉え、価値あるものだと考えて発信する人はいなかったのです。このように、たとえ知っているものであっても、外からの一言によって見方が一転することがあるのです。
日本人が日本の魅力を実は知らない、知っているものだけど実は気づいていない魅力がある──これは非常にもったいないことです。
そこで本書では全国各地の「外国人しか知らない日本」を調査し、なぜそれが世界で知られるようになったのか、どのような外国人からの人気を集めているのかを解説しました。「この観光地は有名だから多くの日本人が知っているよ」というスポットでも、あまり日本人が気づいていない角度の魅力がある、外国でユニークな注目のされ方をしているものに関しては取り上げています。
日本には、一冊の本では紹介しきれないほどたくさんの魅力が眠っています。この本を読んでくださったみなさんが、ご紹介した観光名所を実際に訪れ、さらには地元の魅力を再発見するヒントが見つかればと思っております。
外国人しか知らない日本の観光名所
著者：東大カルペ・ディエム
出版：星海社新書（2023/7/23）
外国人が愛する「もう一つの日本」が示す日本の魅力と可能性
今や年間2500万人を超える訪日外国人――彼らが日本を訪れる目的は、日本人がイメージする典型的な観光名所ばかりではありません。むしろ日本人にとっては「なぜこんな場所に行くんだろう」というありふれた場所やマイナーな場所こそ、外国人にとって非常に興味深い場合も多いのです。本書ではそんな「外国人しか知らない日本の観光名所」を全国47都道府県、56ヶ所にわたって取り上げて外国人に人気の理由とともに解説した、インバウンドビジネスの要点をつかむための観光論にして、あなたの知らないもう一つの日本像を知るための文化論です。
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