雨が降ると外に出たくなくなるし、どんよりと曇った空を見ていると、なんとなく心も沈む……そんな人が少なからずいるかもしれません。この記事では、少しでも雨の日が好きになれるように、雨の魅力についてお伝えします!
はじめに 雨と言葉
雨には、晴れている時にはない趣があります。日本人は昔から、雨を味わう感性を持っていました。その証に、日本語には、雨に関する言葉が100語以上あります。語彙の豊富さは、国の自然環境や文化を反映していると言われることがありますが、雨もその幅広さを感じ取れる言葉のひとつ。たとえばこのような言葉があります。
五月雨(さみだれ) 陰暦5月頃に降り続く雨。梅雨。
夕立(ゆうだち) 夏の午後から夕方にかけ、にわかに降り出すどしゃぶり雨。
慈雨(じう) めぐみの雨。ほどよい時にほどよく降って、草木や作物をうるおし育てる雨。
時雨(しぐれ) 初冬の頃、急にぱらぱらと降ってはやみ、数時間で通り過ぎてゆく雨。
『大辞林 4.0』より
季節や降り方、さらには見る人の感情によっても呼び方が変わる日本の雨。はっきりとした四季がある日本だからこそ、雨に関する言葉が多く存在するのです。
また言葉だけでなく、雨は和歌や文学の題材にもされてきました。
村雨(むらさめ)の 露もまだひぬ 槇(まき)の葉に
霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
寂蓮法師(87番) 『新古今集』秋・491
「にわか雨が通り過ぎていった後、まだその滴も乾いていない杉や檜の葉の茂りから、霧が白く沸き上がっている秋の夕暮れ時である。」
この和歌は百人一首にも入っている、寂蓮法師の一句です。「村雨」とは、強く降ってすぐやむ雨、にわか雨のこと。にわか雨が降った秋の夕暮れの、うっとりするような幻想的な景色を詠んだ一首です。
五月雨(さみだれ)を 集めて早し 最上川(もがみがわ)
松尾芭蕉 『おくのほそ道』
「降り続く梅雨の雨を一つに集めたように、何とまあ最上川の流れの早くすさまじいことよ。」
こちらは松尾芭蕉の「おくのほそ道」に出てくる俳句です。旧暦の5月は現在の6月にあたりますから、「五月雨」とは梅雨を意味します。最上川は日本三大急流のひとつ。急流に例えられるほど、梅雨の雨は激しいものとして捉えられていたのですね。ちなみに五月雨は、かな表記では「さみ多れ」と書く場合もあるようですよ。
雨を楽しむ
言葉の話はこれくらいにして、実際に雨を前向きに捉えるためのマインドセットを紹介します。
「目」で楽しむ
雨の日は、下を向いて足早に歩いていませんか?次の雨の日はぜひ、周りの景色に目を向けてみてください。雨の日は植物の「緑」が映え、草木がいつもより生き生きとして見えます。
また、室内から見える水滴がついた窓越しの景色は、雨の日にしか見られないものです。雨の雫が降ってきては落ちていく様子をぼーっと眺めていると、自然と落ち着いて心が癒やされる気がします。
ぼーっとするのはいいこと
少し話が逸れますが、「ぼーっとすること」が実は脳にとって良いことだというのは知っていますか?「ぼんやり」している時、脳は休んでいるように思えますよね。しかし実際、脳には集中的に情報が詰め込まれる「集中モード」と、情報を整理整頓する「整理・整頓モード」があり、「整理・整頓モード」になるのが「ぼんやり」している時であることが分かってきました。
具体的には、散歩をしているとき、景色を眺めているとき、入浴などのとき、頭を使わない単純作業のときなど。このときに脳のデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という部位群が活性化して、記憶の整理整頓や、新しい情報のつなぎ合わせを進めてくれるというのです。情報を詰め込まない時間を、意識的につくるのも大切ということですね。休憩時間にスマホを見る人は多いと思いますが、常に脳に情報が入ってくるので、スマホ以外でリフレッシュする時間も必要なのです。
「耳」で楽しむ
次に、雨の「音」を聴いてみましょう。勉強に疲れた時や、気分が落ち込んだ時などに雨の音を聴くと、心が穏やかになってリラックスできます。雨の音にはリラックス状態に導いてくれる科学的な根拠があるのです。
1/fゆらぎ
1/fゆらぎとは、自然音の中に含まれる音のゆらぎのことで、きっちりとした規則性はないもののある一定のリズムを持っているといわれています。1/fゆらぎは、心臓の鼓動などの生体リズムと近いので、私たちにとって心地よいものとして受け止められるのです。
高周波
雨の音をはじめとした自然音には、人の耳では聴こえない高周波が含まれています。これと耳で聴こえる音をともに体感すると、体や心をつかさどる脳機能が活性化されることがわかっているのです。
リラックスした脳の状態は、もちろん睡眠にも効果をもたらしますが、逆に脳の集中を活性化させる力も持っています。休憩時間に雨の音を聴いてリラックスした後に勉強に臨むと、緊張状態から解き放たれて集中できるようになり、効率アップにもつながるでしょう。ネット上には雨の音が流れる動画もあるので、ぜひ探して聴いてみてください。
「鼻」で楽しむ
雨が降ると、草木の匂いなのか、アスファルトのものなのか、雨の日特有の「匂い」がするのを感じたことはありませんか?「雨の匂いが好き」と答える人は多いそうです。本来は無味無臭であるはずの雨に、なぜ匂いを感じるのでしょうか。
降り始めに感じられる「石のエッセンス」ペトリコール
ひと口に「雨の匂い」といっても、その匂いの要因はいくつかあるそうです。
一つ目は、雨が降っている際に、アスファルトから漂ってくる匂い。これは、カビや排ガスなどを含むほこりが水と混ざり、アスファルトの熱によって匂いの成分が気体となったものです。この匂いは「ペトリコール」(ギリシャ語で「石のエッセンス」の意味)と呼ばれています。
雨上がりに強まる「大地の匂い」ゲオスミン
雨の降り始めの匂いとは別に、雨上がりの匂いもあります。「ペトリコール」が「雨の降り始めの匂い」であるのに対して、「雨上がりの匂い」といえるのが、「ゲオスミン」です。土中のバクテリアなどによってつくり出される有機化合物の匂いで、雨水が蒸発し始める際に匂いが強まるので、雨上がりに特徴的な匂いとして感じられるのです。なお、ゲオスミンとはギリシャ語で「大地の匂い」を意味します。
「石のエッセンス」や「大地の匂い」の言葉を思い浮かべながら雨の匂いを感じると、憂鬱な雨も、前向きに捉えられるかもしれませんね。
まとめ 自然とともに生きる
雨に対して少しでもポジティブなイメージを持つことができたでしょうか?人間の手ではどうにもできない自然現象が過ぎ去るのを耐えて待つのではなく、ともに生きていく存在として自然を受け入れられるようになれれば、もっと楽しく気楽に過ごすことができるかもしれませんね。
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