【東大生作家たちと論文記事を書いてみよう!】現役高校生が考える、日本人が陥りがちな不幸のメゾット抜け出して幸福を実感するためには?

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「世界幸福度ランキング」の調査方法、「キャントリルの梯子」とは

世界幸福度ランキングは、その名の通りそれぞれの国や地域に住んでいる人が「どれくらい幸せであるか」を幸福度として数値化し順位付けたものである。ところでこの幸福度とは、いったいどのように測定されているのだろうか。 

その調査方法の1つに用いられているのが「キャントリルの梯子の質問(Cantril ladder question)」である。これはアメリカのハドレー・キャントリルが考案した、人生をハシゴに見立て主観的な幸福度や満足度を測定する方法である。あり得る最高の状況をハシゴの10段目、最悪の状況をハシゴの0段目とし、回答者は現在の自身の生活が何段目にあるのかを想像して答える。高い段数を答えた人が多い国ほど幸福度が高いという評価になり、世界幸福度調査の世界ランキングもこの測定方法の結果に基づいて公表されている。 

このランキングにおける日本の順位は、決して高いとは言い難い。2021年以降は137カ国中56位、54位、47位と順位の上昇が見られるものの、先進国の中では最も低い結果である。このように順位が低迷している現状から読み取れるように、日本人は自身を「幸せである」と自己評価しない人が多いようだ。このような日本国民の主観的な幸福度の低さが目を引く現状はいったいなぜ起きているのだろうか。

不幸の原因はどこにあるのか

それには物質的な豊かさに原因があると考える人もいるかも知れない。確かに、例えばその代表とも言えるお金がなければ、幸せな生活を送っていると言い切ることは難しいだろう。しかし、客観的な事実に基づくと日本は世界的に見てもかなり裕福な国であると言う事ができそうだ。経済大国とも称される国であり、生活水準も高く治安も良い。また健康寿命も長く、ブルームバーグ社が発表した「世界で最も健康な国ランキング2019」では第4位の結果であった。私には、日本は十分「豊かである」という条件はクリアしているように思われる。先進国である日本と比べると豊かであるとは言い難い国が多く上位にランクインしていることからも、物質的な豊かさは幸福度の自己評価にはあまり関係がないと言えそうだ。ではなぜ客観的な状況と比べて、日本国民の主観的な幸福度は低いままであるのか。

その原因を私は、幸福度を決める基準を無意識に相対化してしまっていることだと考える。言い換えるならば、他人と自分の境遇を比べる傾向が強くあることが、自身を幸福だと言いきれない要因になっているのだと思う。特に私が周りと「幸せ」を比べる環境を作り出している場面として実感するのは、近年の教育現場である。日本の教育制度は他人より優れていることを善とする価値観を強調しているように思われる。 

相対評価を重んじる日本の教育

日本の学校の多くは学期ごとに定期試験や模試が行われ、成績が進級や進学の明確な評価基準となる。これにより生徒たちは継続的に自分の学習成果を評価し、他人との比較を通じて努力をすることが求められている。また高校生の多くは大学進学を目指して成績向上に努めることが期待されている。私は中高一貫校に通っており今年受験を迎える高校3年生であるが、中学1年生の頃から大学入試を意識した先取り学習や講演会などが行われているため、周りの友人も成績や順位、受験に対してかなり重要と捉えていると思う。またこれは私の考えであるが、成績が個人の進路やキャリアに大きな影響を与えるという話、いい大学に行き良い会社に務める人生を送ったほうが良いという話を1度も聞いたことがないという人は、おそらく日本にはいないのではないだろうか。私自身低い成績を取ることは恥ずかしいと感じ日々勉学に励んでいるが、やはり動機は勉強ができないことは頭が悪い人間だという社会的評価を払拭するためであったり、良い大学に入学し他人と比べて見劣りすることを避けるための見栄であるように思う。

一方世界幸福度ランキングで2023年まで6年連続で1位を獲得しているフィンランドは、子供に負担をかけず個々の可能性を最大限に活かすため、統一の試験などをせず成績評価は個人内で行う教育を徹底している。前期と比較しどのような点が成長したのか等、個人でフィードバックを行う制度は「世界一の教育」との呼び声も高い。

やはり低い、日本人の自己評価

フィンランドのような教育システムは国民の自己肯定感を高めることにも大きく貢献しているだろう。日本人の自己に対する認識はどのようであるだろうか。平成25年度に日本を含め7カ国の満13〜29歳の若者を対象に内閣府が実施した意識調査では、「自分自身に満足している」という項目で最も高い順位であったアメリカは86.0%の人が満足していると答えたのに対し、日本はそのように回答した人が45.8%で最も低い結果であった。また「自分には長所がある」や「将来への希望」の項目でも、スウェーデンやアメリカなどの日本を除いた6カ国は80%前後の高い数字を記録しており、約60%の結果であった日本との差は大きい。

これらのデータから日本人は自分に自信が持てず悲観的になったり劣等感を抱きやすいということが出来そうだ。そのために社会の様々な場面で他人と自分を比較しているように思う。他人と比べることは、低い自己評価や満たされない心を作り出す大きな要因になるのではないだろうか。他人と比較することには終わりがない。自分よりも上の人が現れたら、たちまちその幸福感や自信は消えていく。このままだと、いつまでたっても「キャントリルの梯子」が10段目に到達することはないのだ。

今の自分が幸福であるために

自身の幸せの自己評価を高めるためには「比べない」必要がある。だが、隣の芝生は青く見えるということわざも生まれる程度には、人を羨まないというのは難しいことかもしれない。これを改善するために、自分の目的を明確にし信念や使命感に意識を向ける、感謝の気持を表現し満足感を得る、自分の良いところを書き出してみるなど様々な心理学的なアプローチの方法も現在研究されているところである。競争社会に生きている私達には難しいことかもしれないが、今の自分を認め、今あるものを大切にし、結果は後から付いてくるものであると前向きな心で努力を続けることで、他人と比較することで生まれる虚無感を埋められれば良いのではないかと思う。 

自分自身とどう向き合っていくか、これが日本国民の幸福度を高めるための1つの解決の糸口になることは間違いないように思われる。

筆者:星野未来

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この記事を書いた人

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