「多浪で人生変えられますか?」著者インタビュー ――自分と向き合い続けた先に見えるもの

何度も受験に挑み続ける–––それは誰にでもできることではない。

社会の中で、多浪はしばしば遅れや停滞の象徴として語られる。しかし、その裏側には自分なりの目標を信じて歩み続ける人たちの物語がある。

多浪経験者への取材をまとめた本書「多浪で人生変えられますか?」の著者であり、自身も九浪の末に早稲田大学へ進学した濱井さんは次のように語る。

「多浪をしている人たちは、誰よりも自分指針と向き合い続け、自分軸を強く持つ挑戦者です。」

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多浪を抜け出すには変化が必要

―――濱井さんは多くの多浪経験者の方にインタビューをされてきたと思うのですが、どのようにして多浪の状態は抜け出せるのでしょうか?

濱井:何かしらのきっかけがあって多浪を抜け出す方が多いです。それは環境を変えることや誰かからの言葉で考えが変わることだったりします。環境が変わると一気に学力が伸びることがあります。また自分のことを表面的にしか知らない方に叱られて見返したいと思ったり、憧れの人からのエールがきっかけで心機一転頑張れるようになったり。そういった小さな転機が大きな変化を生むことで色々なことを乗り越えられるようになります。


多浪生というと孤立して黙々と毎日勉強をしているイメージがあるが、実際には人との関わりや環境の変化が学びのモチベーションに直結している。

殻を作って閉じこもるのではなく、変化を受け入れるマインドを持つことが突破口となるのだろう。

応援してくれる人がひとりいるだけで変わる

―――もし周りに多浪をしている人がいたら、どのように接するのが良いと思いますか?

濱井:その人の人生なので、馬鹿にしたり否定したりするのではなく、応援してあげてほしいです。多浪生は孤独になりがちなんです。応援してくれる人が一人いるだけで、本当に変わります。


浪人であったり、その他のチャレンジを続けるなかで最も辛いことは結果が出ないことよりも理解されないことだろう。誰かの一言が励ましにも、言葉の刃にもなりうる。

―――それを踏まえて、濱井さんが18歳の頃の自分自身にひとこと声をかけられるとしたらどんな言葉をかけたいですか?

濱井:どんな結果になっても、努力した時間は自分を支えてくれる、と伝えたいです。結果だけでなく努力したその過程は必ず人生の糧になります。


多浪は成功と失敗のどちらかという二分法で語られることが多い。

しかし濱井さんは「頑張った時間は決して嘘をつかない」と繰り返す。

時間をかけて何かに向き合うこと自体が、その人の人生の土台となるのだ。

「多浪で人生変えられますか?」 ――答えはもちろん“Yes”

―――最後に、本のタイトルにもなっているこの質問「多浪で人生変えられますか?」に対する濱井さんの答えを改めて伺いたいです。

濱井:答えはもちろんYesです。繰り返しにはなりますが、頑張った時間は嘘をつきません。たとえ志望校に合格できなくても、多浪の期間の努力を後悔している方はほとんどいません。浪人というのは、結局は自分との戦いなんです。それを経て自分軸で頑張れるようになる。みんな、自分ありの目的や理由を持って戦っています。家庭の事情や環境で遅れをとってしまった分を取り戻すために頑張る人もいる。理由もなく多浪している人なんて、ほとんどいません。学歴や肩書「だけ」ではなく、自分のコンプレックスをどう受け止め、どう向き合うか、それがその人の生き方に現れると思っています。


努力した時間は必ず自分を支えてくれる ――自らも多浪を経験した濱井さんの哲学とも言える言葉だ。「多浪」は人生の遅れなどではなく、人生の投資ということなのだろう。

まとめ: 「人間の挑戦」を見つめ直すための一冊

本書「多浪で人生変えられますか?」 には、濱井さん自身の体験以上に、数多くの多浪経験者の声が詰まっている。彼ら多浪生は夢を追う芸人や作品作りに人生をかけるアーティストのように目標を強く持ち、その過程で自らの軸を模索している。

社会の中で見えにくい存在である多浪生の姿を通じて本書は「人間の挑戦」について問いかけている。偏見を超えて、人の頑張りを理解する ――その第一歩となる一冊だ。

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濱井 正吾(はまい しょうご)

1990年生まれ  早稲田大学教育学部国語国文学科卒業

9浪の末、早稲田大学に一般受験で合格。『バンカラジオ』(登録者65万人)といった若年層に人気のエンタメYouTubeチャンネルに出演を続けながら、他の教育系YouTuberの動画にも出演し、自身の人生体験を話している。Twitterフォロワー数は30000人(2025年10月現在)。

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多浪で人生変えられますか――大学受験と格闘した20人の記録

笠間書院

「多浪なんてデメリットばかり!」。そんな世間の声に負けず、志望校を目指した浪人生たちは何を手に入れたのか? 2浪から19浪まで、多浪を乗り越えた20名に、その人生と勉強法を聞いた書!
「2浪から東大合格、現在は人気作家として活躍」「底辺校から同志社に合格後、神戸大に編入」「女性の浪人は否定されがちな中で、6浪して医学部合格」「高3の夏から準備を始めて4浪で東京藝大へ」「12浪中に夢を発見し、『大学に行く目的』が明確に」「塾の講師として成長するため東大受験、3浪で合格」「10浪で東大理Iに合格するも、辞退して理IIIに挑戦中」……など、大学受験を選んだ理由や合格をつかんだ契機、そして現在の姿は、多浪経験者によってさまざま。
受験の実際を知りたい人、憧れの大学を目指して今頑張っている人、自分を変えたいと願う人に、自身も9浪で早稲田に合格した著者が、多浪で発見した人生の可能性を伝えます!

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この記事を書いた人

東京大学数理科学研究科所属。靴下が嫌いなので、夏はほぼ毎日サンダルを履いている。そのため、一番好きな季節は夏。

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