デジタルデータで学びの過程を可視化できる利点も
大日本印刷と相模原市教育委員会、ネットワンシステムズ、光村図書出版、放送大学学園は1月30日、デジタル教科書を活用した共同研究事業の研究成果を発表しました。共同研究は相模原市の小・中学校を対象に、2022年4月から2023年3月まで行われました。
研究では、光村図書出版が提供する「⼩学校国語学習者用デジタル教科書+教材」などのデジタル教科書を活用した授業を開発し、生徒の主体的な活動時間や対話を行う活動時間の確保を意識した指導案のもと実施されました。
実証授業の結果によると、デジタル教科書に書き込むことで板書をノートに書き写す時間が減少し、授業中に生徒が思考する時間が増えました。また、学習成果物がデジタルデータとして記録されることで個人の学びの過程が可視化できるようになり、生徒が自ら学習を分析して自己調整する能力につながったとされています。
実証授業に参加した生徒にはアンケート調査が行われ、約80%の生徒がデジタル教科書を肯定的に捉えていることが分かりました。大日本印刷は2023年度も複数の自治体と共同研究を進めており、教員や児童・生徒が学習データを活用できるシステムを開発して2024年度内の本格的なサービス化を目指すとしています。
東大生の考察:デジタル教科書のメリット・デメリット
学習者用デジタル教科書を制度化する「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が平成31年4月から施行され、これまでの紙の教科書を主たる教材として使用しながら、必要に応じて学習者用デジタル教科書を併用することができるようになりました。
デジタル教科書では、音読や朗読の音声、外国語のネイティヴ・スピーカーの発音等を聞きながら音読の学習ができます。また、動画やアニメーションを活用することで従来の挿絵よりもわかりやすい解説が可能になります。気づいたことや考えたことを資料上に直接書き込み、それを他の生徒や教員と共有することができるので、円滑なコミュニケーションにも役立ちます。
一方で、デジタル教科書にもデメリットがあります。導入コストやセキュリティの問題に加えて、生徒の視力低下や姿勢の悪化、睡眠不足などの健康リスクも懸念されています。30分に1回は画面を離れる、就寝1時間前からは学習用端末の利用を控えるなど、適切な指導案とセットで導入されることが望ましいでしょう。