今回は、『東大入試徹底解明 ドラゴン現代文』の中から、東大現代文・2018年第1問設問(一)の解答・解説をそのまま公開します。
「既存の予備校等による解答と比較してみたい」という方、「本書は気になるけど、実際信用して良いのか不安」という方などは、以下の解答・解説をご覧ください。
『ドラゴン現代文』とは?
『東大入試徹底解明 ドラゴン現代文』は、『ドラゴン桜』のメソッドで東大現代文を攻略する参考書です。
【本書の特徴】(Amazon商品紹介より一部抜粋)
(1) 受験の土台となる読解力を「基礎」から積み上げる
1章(理論編)では、桜木建二が『ドラゴン桜』原作を典拠として、入試現代文、そして全ての文章を“正しく”読むためのスキルをあますところなく伝授する。
(2) 文章を「構造」化して読み解くワザを現役東大生が再現
2章(実戦編)では、東大に現役合格し、現在は「リアルドラゴン桜プロジェクト」を推進する講師でもある相生昌悟が東大現代文の過去問を解説。
(3) 東大入試から厳選した8題を「図解」して完全解説
2章(実戦編)の「全体構造図」では、問題文全体を4つの構造(同等構造・類比構造・対比構造・因果構造)で整理。
2018年度第1問設問(一)(全文公開)
設問(一)「その痕跡が素粒子の『実在』を示す証拠であることを保証しているのは、量子力学を基盤とする現代の物理学理論にほかなりません」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
《解答例》
素粒子を対象とする物理学理論によって、知覚可能な実験結果が、知覚不可能な素粒子の「実在」を裏づける間接的証拠たる素粒子の飛跡であることが保証されている。
《エッセンス》
①知覚可能な水滴や泡は、素粒子の飛跡である。
②素粒子の飛跡は、知覚不可能な素粒子の「実在」を裏づける間接的証拠である。
③素粒子を対象とするものとしての物理学理論。
④物理学理論によって、①が保証されている。
⑤知覚可能な「水滴や泡」を抽象化=「知覚可能な実験結果」。
【STEP1 範囲確定】
設問(一)では、第2段落の中にある一文について、内容を説明することが求められています。
第2段落は右図のように、第3段落と同等構造の関係にあり、傍線部の説明に使用できる可能性がありますから、第2段落を確認した後、第3段落を確認していくことになります。
【STEP2 傍線部分解】
A〈その痕跡が〉
B〈素粒子の「実在」を示す証拠であることを〉
C〈保証しているのは、〉
D〈量子力学を基盤とする現代の物理学理論にほかなりません〉
【STEP3 ミクロの分析】
エッセンス①知覚可能な水滴や泡は、素粒子の飛跡である。
エッセンス②素粒子の飛跡は、知覚不可能な素粒子の「実在」を裏づける間接的証拠である。
傍線部にはA〈その痕跡が〉という指示語を含む部分がありますから、これを確認するところから始めていきましょう。ここでのA〈その痕跡が〉は、傍線部直前の一文にある「水滴や泡」と同等構造になっています。
皆さんの中には、「素粒子の飛跡」や「ミクロな粒子の運動のマクロな『痕跡』」と同等構造にあると考えた方もいらっしゃるかもしれませんが、それは適切とは言えません。なぜなら、「素粒子の飛跡」や「ミクロな粒子の運動のマクロな『痕跡』」では意味が通らないからです。試しに「素粒子の飛跡」と言い換えてみましょう。
この場合、傍線部は「素粒子の飛跡が素粒子の『実在』を示す証拠であることを保証しているのが物理学理論である」となります。ただ、これでは筋が通りません。というのも、「素粒子の飛跡」だとわかっているのであれば、物理学理論がなくとも素粒子は「実在」すると確証されるからです。存在しないものが跡を残すはずはありません。ですから、A〈その痕跡が〉は「水滴や泡」と同等構造になっているのです。
そして、このように考えれば、B〈素粒子の「実在」を示す証拠であることを〉の「素粒子の『実在』を示す証拠」の方が「素粒子の飛跡」と同等構造になっていることがわかると思います。つまり、「素粒子の飛跡」が、素粒子の「実在」を裏づける間接的証拠であるということです。
ここまで確認したことを踏まえつつ、傍線部の内容を簡単に言えば、私たちが単なる水滴や泡を見て、それが素粒子の飛跡で間違いないと認識し、素粒子の「実在」が確認されるのは、物理学理論のおかげであるということです。
さらに、ここには「知覚不可能な素粒子」と「知覚可能な水滴や泡」という対比構造が潜んでいますから、この点も反映します。
エッセンス③素粒子を対象とするものとしての物理学理論。
では、「水滴や泡」が「素粒子の飛跡」であることを保証している、D〈量子力学を基盤とする現代の物理学理論にほかなりません〉の「量子力学を基盤とする現代の物理学理論」という部分は、どのように言い換えられるでしょうか。この答えに当たるのが第2段落の2文目にある「ミクロ物理学の対象、すなわち素粒子」という部分です。このような素粒子を対象とする物理学理論が前もって存在するからこそ、私たちは「水滴や泡」を見て、それが「素粒子の飛跡」に間違いない、と思うことができるわけです。
エッセンス④物理学理論によって、①が保証されている。
残るはC〈保証しているのは、〉の説明ですが、これについては傍線部よりも後ろの文章に言い換え表現があります。具体的には、傍線部直後の一文の中にある「間接的証拠を支えている」という表現です。ただ、「支えている」という表現は少し使いにくいものですから、解答例では傍線部の表現のまま「保証されている」としています。もちろん、「支えている」という表現を使っても間違いではありません。
【STEP4 マクロの分析】
エッセンス⑤「知覚可能な水滴や泡」を抽象化=「知覚可能な実験結果」。
すでに解答はほとんど完成していますが、A〈その痕跡が〉と同等構造であるとした「知覚可能な水滴や泡」という表現がかなり具体的ですから、もう少し抽象的な表現にしたいところです。
そのような視点で見ていくと、第3段落に「サイクロトロンを始めとする巨大な実験装置」という記述があり、〔注〕での「霧箱」と「泡箱」の説明から、これらも実験装置に含まれることがわかります。そして、「水滴や泡」は、霧箱や泡箱によって捉えられたものでした。したがって、「知覚可能な水滴や泡」という表現は「知覚可能な実験結果」と抽象化することができるでしょう。
設問(一)の解説は以上になります。
紹介
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この解答・解説を読んで「他の年の問題も見てみたい」「問題解説だけでなく、理論編の解説も読んでみたい」と思った方は、ぜひ本書を手にとってみてください。
東大入試徹底解明 ドラゴン現代文
文英堂 (2022/10/4)
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こちらもぜひご覧ください。