理学部ってなんか変な人が多そう…
そんなイメージから、入試の際には避けられがちな理学部。でも、実際、理学部って何を学んでいるのでしょうか。
この記事では、理学部の学生の生活や研究内容、卒業後の進路など様々なことを紹介していきます。
進路選択で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
理学部とは?
理学部というと、やはり変な人が多いというイメージを持っている人も多いでしょう。
これは、高校時代に勉強が好きだった人を変な人だと定義するなら、そのイメージは正しいと言えるでしょう。
理学部で受ける授業や研究内容は、本質を追求すること、が根底にある場合がほとんどです。
その性質ゆえに、高校時代や大学の前期課程で「勉強することを楽しいと感じている」人や「誰も知らないことを解明したんだ」「人類が積み上げてきた英知をこの手でさらに積み上げたい」という思いを持った人が集まる学部になっています。
理学部で学ぶこと
理学部には通常、下位区分となる学科が複数設定されており、この学科ごとに勉強する内容や雰囲気、スタイルなどの大部分が異なります。
ここでは、東京大学の学科区分を念頭において解説します。
数学科
理学部といえば!、とも言える学科の数学科。
高校や大学初年次で習う数学をさらに一般化した原理や抽象的な対象に対しての勉強・研究を進めていく学科です。
数学科の魅力は、何と言っても数学にずっと触れられること!
巷では「工学部で使う数学は厳密ではない」とか「極限と積分を安易に交換するな!」といったネットスラングがありますが、(この発言の是非はともかく)数学科の授業では、非常に厳密に論理を組み立てて進むものであり、普段から「この場合はどうなるんだ?」「この条件を緩めると?」と考えている数学徒たちの生態がよく反映されている事例だと思います。
授業は基本的に、定義の導入→それから導かれる定理→定理の証明→その定理からさらに別の定理…の流れで進みます。
実験は一切ないため、この授業のスタイルが自分に合うか合わないかで、数学科に向いているか向いていないかが決まると言っても過言ではなく、「高校生のときに数学が得意であった」という理由だけで数学科に進学すると痛い目を見人も居るとか居ないとか…
数学科に入ると、代数学・幾何学・解析学のうちから1つ専攻を選んで、専門的に勉強することになります。
興味がある人はこれらのワードでさらに調べてみると、数学科に対する解像度が上がることでしょう。
物理学科
名の通り、物理に関することを広く扱うことができる学科です。
物理学科の魅力は、宇宙や素粒子といった、まだ見ぬ世界を知るための一歩を自分で切り開けることでしょう。
物理学科に進学しておけば、物理に関することの大抵には関わることができます。
例えば、加速器を用いた素粒子探索、宇宙実験、物性系、量子情報、数理物理などなど、扱う理論や実験内容も、研究室に応じて多岐に渡ります。それゆえ、物理学科には様々な興味を持った学生が集まっている印象です。
といってもまずは、高校時代に習った古典物理は前提として、大学の初年次では量子力学・統計力学・電磁気学(ベクトル解析)といった基礎的なの考え方を身に着けることから始まります。
また、物理学科では伝統的に理論系・実験系の概念があり、同じトピックに対しても理論からアプローチするのか、実験からアプローチするのかで、研究室が分かれています。
例えば、東京大学の理学系研究科物理学専攻の場合、
のように分かれています。
とはいっても、東大の理物の場合、学部生の間は広く浅く知識を身に着けさせようという意図があるのでしょうか、授業:実験:演習=4:4:2くらいの比率で、多くの分野の理論や現象に触れる機会があり、「自分の専門を何にするか」を、物理学科に来てから決めている人も少なくありません。
なので、結論としては、高校生で物理が好きな人は積極的に受験の際の選択肢に入れるのが良いと思います。
化学科
こちらも名の通り、化学に関することを広く扱うことができる学科です。
化学科の魅力は、身近なモノや素材などを扱うことで、生活の基盤を支えるための研究ができる点です。
大学の化学科で学ぶことは(理学部の他の学科に比べると)高校で習う化学の延長線上にある場合が多く、それらは大きく物理化学(理論化学)・有機化学・無機化学(分析化学)の3つに大別されます。
物理化学(理論化学)は、高校化学における理論分野の延長線上。物理の理論である熱力学や統計力学、量子論を、原子レベルや分子レベルにマクロ化して現象論として捉えなおし、実生活に応用できる形とするための研究をしていると言えるでしょう。
有機化学は、高校化学の有機分野を直に延長した分野。高校の延長として、まずは有機化合物の合成手順や物質の安定性について勉強し、その後、特定の物質を安定して作り出すための合成方法を模索したり、そのための触媒を生み出す研究に繋がります。
無機化学(分析化学)も、高校化学の向き分野を直に延長した分野。金属イオンや錯体が持つ性質を学びそれらが生体中でどのような働きをしているか調べる錯体化学分野や、様々な手法を用いて新しい性質を持つ物質を作り出す個体化学・物性化学分野などがあります。
化学科では、学部3年生までに基礎的な理論や考え方、実験手法を身に着け、学部4年生や大学院生になると自分で研究テーマを決め、研究に励んでいきます。ですから、高校までの理科の授業で、自分の手を動かして実験を進めることが好きだったり、単純に化学が好きだという想いのある人におススメの学科です。
その他
理学部には他にも、
などがあります。
ここには書ききれない、各学科の魅力や研究内容もたくさんあるので、興味がある方は調べてみてください。
理学部の院進?就活?事情
院進率、驚異の90%!!
一般に理学部の学生の院進率は高い傾向にありますが、これは東大とて例外ではありません。
東大理学部全体で見ても、卒業生の約90%が修士課程に進学します。
特に、私の所属する物理学科はその傾向が顕著であり、本当に全員が修士課程に進みます。就職予定の人は本当に誰一人として知りません。
さらに、博士課程に進む人の割合も凄まじい割合です。
理学部全体見ても、修士号取得者の約50%が博士課程に進学。
物理学科にいたっては、約70%が博士課程に進みます。
さすが理学部といったところでしょうか。正直、学部の4年間で理学の最先端に触れることはできないし、「もっともっと突き詰めたい!」という想いが強い人が多いため、このような結果になるのは必然と言えるでしょう。
理物に関しては、はなから4年で教育を終えるつもりがないのか、進振り後の2年くらいじゃサイエンスに貢献できるような論文なんぞ書けないという意思表示なのか、学部の卒業論文がありません。(代わりに特別実験・理論演習という授業がありますが。)
理学を極めるには時間がかかるものなのです。
じゃあ、就職先は?
このような博士課程進学者が多い理学部ですが、就職事情はどうなのでしょうか。
アカデミックポスト(博士課程修了者の約4割)
いわゆる、大学の先生のことです。
大学に残って研究を続けていきたいのなら、ポスドクや大学講師として研究を続ける必要があります。
他にも、国の研究機関(理化学研究所・JAXA・KEKなど)の研究員として、研究を続ける人も居ます。
メーカー系
とは言いつつも、研究をするのは、何も大学でしか出来ない訳ではありません。
例えば
といった企業を就職先に選ぶ、企業で研究員として働く人も多いです。
官公庁や金融・コンサル系
いわゆる文系就職をする人も一定数居ます。まあ、お給料が良いですからね。
理学部は就職無理学部、なんて言われていた時代もありますが、最近では、博士号所有者を積極的に採用してくれる企業も増えているのが現状です。
とはいっても、学部卒で就職する人に比べれば、博士課程に進学する学生達は不安定な生活を余儀なくされるのは事実です。
そのため、学振など博士課程の学生を支援する制度は多く存在しているため、博士進学を考える際には奨学金等の制度もしっかりと調べる必要があります。
まとめ
理学部は、基本的には勉強や研究を楽しいと思う人に向けた学部です。
これは逆に、勉強を楽しいと思わない人が誤って進学してしまうと、全く面白くない大学生活を送ってしまうということでもあります。
理学部を受験したり、進振り先に選ぶ際には、自分の心に問うてみてください。
本当に自分は理学が好きなのか
と。
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