ミッフィーに影響を与えた!?マティス展に普通の大学生が行ってみた

美術館を楽しめるようになりたい!というすこーし浅はかな理由で、国立新美術館で開催されていたマティス展に実際に行ってみました。

私は美術館に全く縁がなく、今回のマティス展が人生初めての美術館でした。絵の背景知識も全くなかったのですが、芸術には専門用語も多く、解説されていないものも多いので、今回は丁寧に解説しながらレポートしていきたいと思います!

Henri Matisse - Forms in Freedom...
マティス 自由なフォルム│展覧会サイト 2024年2月14日~5月27日、国立新美術館で開催されるマティス 自由なフォルムの公式サイトです。巨匠アンリ・マティスがたどり着いた究極の芸術「切り紙絵」を中心に、マテ...
目次

専門用語の解説

マティス展のレポートに入る前に、まずは専門用語について解説していこうと思います。そんなの知ってるよ!という方はもちろん読み飛ばしていただいて構いません。わからない方も、最初に読むもよし、適宜参照しながら読むもよしです。それでは、解説していきます!

絵画の歴史

まずは絵画の歴史についてです。「印象派」などは学校の授業で聞いたことがあるかもしれませんが、印象派って結局なんなの?と思っている人もいるのではないでしょうか。私はそうでした。基本的な絵画の歴史について重要なところだけ解説します!

印象派と後期印象派

芸術の分類には、時代と運動の二つの観点を使うことができます。時代は大きく古代、中世などと分けられ、後から地理や宗教、文化などの類似性によって分類されたものがほとんどです。一方で運動は、表現したいこと、表現する技法が似た芸術家が集まり、共通の信念を持って活動していくものです。今回取り上げる印象派やフォービズムは絵画運動に分類されます。

フォービズム(野獣派)

今回の企画展の題材となっているマティスは、フォービズムと呼ばれる絵画運動の中心人物でした。フォーヴィズム作品最大の特徴は、大胆な色彩表現です。人間の感情を表現するには色彩が重要な役割を果たしているとし、目に映る本来の色彩ではなく、直接心に訴える色彩を使って巧みに表現しています。

もっと簡単にいうと、濁りのない明るい色を利用し、細部を簡略した絵が特徴的で、写実的というよりは平面的な描写が特徴となっています。

キュビズム

前述のフォービズムの発展の後に起こったのがキュビズムです。キュビズムは、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって創始された芸術の大きなムーブメントで、描く対象物を様々な視点から観察し、四方八方からの視点を絵の中に落とし込むという技法です

モチーフがバラバラに描かれる特徴的な作風は、色々な角度から見た同一のものを一枚の画面に描き込むという革新的な手法によって生まれました。「キュビズム」という名前の由来は、英語にすれば「キューブイズム」=立方体主義となり、複雑な形をした人間やその他のモチーフを立方体という幾何学形態に分解した上で再構成して描くという様式のことを指します。

 絵画の専門用語

美術館に行って、せっかく展示物の説明を読んでも何を書いているかさっぱりわからないことはありませんか?絵画には専門用語も多く、少し背景知識が必要な用語も多いのです。マティス展のレポートに入る前に基本的なものだけ解説していきます。

静物

静物はせいぶつ、と読み、簡単には動かないものを指します。例えば花や果実、パンやワインなどの食品、食器、楽器、書物などです。14世紀末頃から本格的に描かれはじめ、写実的な表現が好まれた17世紀には、美術の一ジャンルとしてその地位を確立しました。フォービズム以降では平面的な表現が好まれたため、静物を多方面から見て再構成する方法で描かれました。

 習作

マティス展には習作と呼ばれるものもたくさん展示されています。習作は読んで字の如く、 芸術作品において、練習のために作られた作品のことです。

自画像

自画像は読んで字の如く自分のことを描いた絵のことです。ゴッホの自画像などを知っている人も多いかもしれませんが、全ての画家や彫刻家が自画像を作成していたわけではありません。かつて、15世紀以前ではキリスト教が広まった世の中において、正面の絵を描くことを許されたのはキリストか聖人にのみ許されていました。しかし15世紀以降少しずつ自画像が広がり、今では美術の重要な一分野になったのです。

どうして多くの画家が自画像を描くのでしょうか。モデル代の削減といった消極的な背景もないことはないですが、それ以上に、自画像を描くことを通じて自己を見つめ直していたのだといいます。特に精神を病んでいる時期の自画像は、後になって美術史家などが当時の精神状態の分析に用いているほど、精神状態を色濃く反映しているといえます。

オダリスク

オダリスクが一番類推しにくい単語ではないでしょうか。odalisqueと綴るフランス語で、オスマントルコの後宮(ハーレム)に仕える女奴隷のことです。そう聞くと仰々しいですが、マティスなどのフランス画家がよく取り上げた典型的な画題です。

18~19世紀に西欧で東洋の文化を取り入れようとする動きが一部で見られ、それをオリエンタリズムと呼びます。オリエンタリズムを表現するものとしてよく用いられる画題こそがオダリスクなのです。

アングルによるグランド・オダリスク

マティスって?

ではマティスはどんな人で、なぜこれほど大規模な展示が開かれたのでしょうか。

 アンリ・マティスとは?

そもそも今回の企画展の題材となっているマティスことアンリ・マティスとはどのような人物なのでしょうか。20世紀最大の巨匠としても名高く、「色彩の魔術師」とも呼ばれるマティスはフランスで活躍した画家です。自然に忠実な色彩から解放された原色を使う大胆な表現が特徴のフォーヴィスムの中心人物としてパリで頭角を現します。フォービズムとは、後期印象派の影響を受けた絵画で、絵の具を混ぜない原色を主体とする激しい色彩と大胆な筆づかいで、荒々しくも力強い印象を与えるという特徴があります。なお、後期印象派は、ゴッホのひまわりのように鮮やかな色使いかつ厚塗り

彼は後半生を主にニースで過ごし、そこではアトリエで様々なモデルやオブジェを精力的に描く一方で、マティスは色が塗られた紙をハサミで切り取り、それを紙に貼り付ける技法「切り紙絵」に取り組みます。

この展示会の目的

今回訪れたこの展示はフランスのニース市マティス美術館の所蔵作品を中心に、切り紙絵に焦点を当てながら、絵画、彫刻、版画、テキスタイル等の作品や資料、約150点が紹介されています。なかでも切り紙絵の代表的作例である《ブルー・ヌードⅣ》が出品されるほか、大作《花と果実》は本展のためにフランスでの修復を経て日本初公開される必見の作品です。

この展示ではさらに、マティスが最晩年にその建設に取り組んだ、芸術家人生の集大成ともいえるヴァンスのロザリオ礼拝堂にも着目し、建築から室内装飾、祭服に至るまで、マティスの至高の芸術を紹介いたします。

いざマティス展へ!

それではいよいよマティス展のレポートに入っていきます!撮影禁止の場所もありましたが、さまざまな作品が展示されているのでみていて飽きず、最後まで圧倒される素晴らしい展示でした。

初期作品の展示

マティスといえば切り絵のイメージがある人も多く、そういった広告を見ることも多いかもしれません。しかし意外にも最初に展示されていたのはデッサンや風景画、そして彫刻などさまざまなタイプの美術品でした。

同じ画題を別の表現手法で表現しているものもあり、例えば横たわる裸婦を題材にした作品では、キャンバスに油彩で書いたものや銅像で表現した作品、木炭と擦筆で表現した作品もあり、その表現の多様性に驚きました。画家は一つの表現技法、マティスなら切り絵とデッサンくらいだろうと勝手に思っていたのが完全に覆され、どの作品も新鮮でとても楽しかったです。

こんなものまで!?意外な制作物

絵描き、というよりも芸術家として名を馳せていたアンリ・マティスは、先ほども述べたように彫刻なども制作していました。しかし実は、舞台装置なども手がけていたのです。舞台「ナイチンゲールの歌」の衣装デザインはマティスに依頼され、モンテカルロバレエ団によって上演されていたのです。実際に使用されている映像も合わせて見ることができ、小さなデザインにまでマティスらしさを感じる衣装でした。

それに関連して、さまざまなタイプの上祭服(ミサの際に司祭が白衣の上に着るもの)もデザインしており、それが四方の壁全体に展示されている様子は圧巻でした。

黒色のカズラ(上祭服)のためのマケット

いよいよメインの切り絵展示へ

ここから撮影可能という看板を抜けるとすぐ目に飛び込んでくるのが大きな「花と果実」の展示。4.1×8.7メートルもあるだけあって、予想していたよりも大きく、その色鮮やかさに圧倒されるばかりでした。これほど大掛かりな作品でありながら、制作を始めたのは病後72歳になってからだとい宇野で驚きです。切り絵だからこそ出せるパターンや色づかいはどれだけ眺めていても飽きません。

花と果実

実は、このマティスの切り絵作品たちが、ミッフィーのモデルとなったとも言われています。日本では「うさこちゃん」の名前で知られるミッフィーですが、「うさこちゃんびじゅつかんへいく」ではこの花と果実を初めとするマティスの切り絵作品を彷彿とさせる表紙になっています。

福音館書店
うさこちゃん びじゅつかんへいく|福音館書店 うさこちゃん びじゅつかんへいく。子どもたちに長く読み継がれる絵本・童話・科学書を作り続けている福音館書店の公式サイト。

ミッフィーの作者であるディック・ブルーナはオランダの絵本作家ですが、元々は画家志望だったのです。そんなブルーナは同世代や上の世代の美術運動に大きな影響を受けています。ブルーナはマティスの色づかいから学ぶことも多いと公言しているほど、マティスとの結びつきは強いのです。

トリを飾るのは「ヴァンス礼拝堂」

数々の展示物を抜け、最後に迎えてくれるのはヴァンス礼拝堂です。この礼拝堂はマティスが四年かけて作成した、いわば芸術人生の集大成のような作品だといいます。実際、切り絵と似たパターンを示すステンドグラスや黒インクで描かれた静謐なパネルたちは、それまでの展示物と通じるものがあります。それら全てが一つの空間に集まったヴァンス礼拝堂はこの企画展の最後を飾るにもふさわしいでしょう。

ヴァンス礼拝堂

まとめ

いかがでしたか。今回筆者は初めて美術館へ行きましたが、正直、とても疲れました(笑)

美術館はすぐに見終わるものかと思っていましたが、160点をこえる豊富な展示品のそれぞれに圧倒され、美術の背景知識がなくても非常に充実した時間を過ごすことができました。作品のエネルギーが強く、他の時代や芸術家のことももっと知りたくなったので、これかも他の美術館、企画展にチャレンジしようと思います。みなさんも、たまには美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

東京大学で薬学や心理学を中心に勉強しています。高校時代に発達障害の方とその支援者を中心に様々な人と関わってきた経験があり、人と話しその人の人生を知るのが好き。ボカロとお笑いが大好き。

目次