野村総研とオックスフォード大学の共同研究から、「AIの導入によって日本の労働人口の49%の仕事が10-20年以内になくなる」というレポートが2015年12月に発表されました。それから9年の歳月がたち、着々とAIやロボットの精度はあがり、単純労働の働き口は徐々に減ってきています。
未来の労働が減って困るのは、大人たちだけではありません。いま中高生の子どもたちも当事者です。彼らの生きる道はどこにあるのでしょうか。
2024年4月8日に、東京書籍から『高校生活の強化書』が出版されます。これまでに多くの子どもたちを見てきた株式会社カルペ・ディエム社長の西岡壱誠と、宇都宮短期大学附属高等学校の教頭を務める萩原俊和先生が共同で執筆にあたった、「これからの未来を生きる子どもたちのための、人生指南書」です。
今回は、萩原教頭に、本書の魅力について伺っていきます。
『高校生の強化書』の執筆背景
「本書を執筆したのは、自分の経験を全国に広めるいい機会だと感じたからです。38年間の教員人生の中で1,000人以上の卒業生を送り出してきました。そのうちに、高校生たちに向けて送りたい言葉が自分の中で増えてきた。もちろん全員ではないが、多くの人の参考になる内容だと自分では考えています」
萩原先生は、宇都宮短期大学附属高等学校の教頭を務められています。38年間、教員一筋で生きてきた人生の中では、1,000人以上の卒業生を見送ってきました。先生は、本書の中で「挑戦が大事」と繰り返し述べられます。なぜでしょうか。
「私の高校時代もいろいろなことに挑戦していました。そして、必ず失敗していた。失敗を繰り返すのは、大人になってからもそうです。生徒を励まそうと『よくできたね』と声を掛けたら、『子ども扱いされた』と受け止められ、むしろ落ち込んでしまったことがあった。これは自分の中に特に印象深く残っています。
ただ、失敗からは必ず何か経験を得られました。先ほどの例でいえば、『たったひとつの言葉でも受け取られ方は大きく変わる』と知れた。人間は、失敗から多くを学べる。成功すればもちろん素晴らしいが、高校生のみなさんには、若いうちにいろいろな失敗を経験してほしいと考えています」
先生自身も、大学時代に少林寺拳法に初挑戦した。毎日厳しい練習を受ける毎日。だが、武道未経験の自分では見えなかった、勝ち負けを競うのではなく自分自身が鍛錬することによって自信が得られるという考えがあることがよくわかったといいます。
振り返ると、新発見の原因は「毎日知らないことばかり、新しいことばかりが起きたから」。高校時代はできることにひきこもり、変化に乏しい毎日を過ごした。武術の経験は、固まった自分のルーティンに大きな変化をもたらしてくれた。
「だからこそ、委員会活動や部活動に全力で取り組んでみることが大事。自分の時代は、ほかの人と違うと咎められ、平均化された。だが、いまは逆で、尖ったところが個性として受け入れられる。生徒一人一人の尖りをほめて伸ばしていきたい」と語ります。自主性を重んじる教育方針です。
AIとの付き合い方
また、宇都宮短期大学附属高等学校では、AIとどのように付き合うべきか、高校生の時から指導しているといいます。
「今年の読書感想文では、AI利用を推奨しています。自分の読んだ本について、生成AIの感想を求め、それと自分の抱いた感想を比較して、その相違を考える宿題を出しました。新しいものに触れるのは、とても恐ろしく思えるが、『誰かがすでに触れて便利に使っている』とわかると、みんな飛びついてくる。AIに関しても、我々教員が率先して新しいものを研究し、その可能性、実用性やリスクについて、生徒たちに波及させる役割を担うべきだと感じます」
化学の教員だった萩原先生は、医学部を目指す子を指導することも多かったそう。どうしても受験戦争では勝ち負けばかりが気になりますが、「敢えて勝ち負けから離れることが大事」と説きます。
「勝ち負けの価値観にとらわれてしまいそうになるが、大事なのは納得感。どんな結果であっても、自分が納得できる結果であれば、その子の人生は前向きになっていける。人生は、常に選択の連続だからこそ、勝ち負けの世界観だけでは、どこかで行き詰まる瞬間が来る。だからこそ、自分の選択に対して、自ら納得感をもてるようになれば、どんな経歴を歩んでも、幸せに生きられるはず」
リーダーになろう
本書では、学校の活動で積極的にリーダーに立候補すべきだといいます。中には、自分はリーダーに向いていないと感じる子もおり、そういう子も挑戦すべきだそうですが、それはなぜでしょうか。
「人間の思い込みって、案外強い。自分ではリーダーに向いていないと感じても、実際やってみたら、新たな才能が開花することもあります。大人でも、そういったケースは見られる。学年主任なんて無理だと語る先生に、主任を任せてみたら、一年間で見事に成長して、管理職としての職務を全うしたことがあった。
つまり、リーダーとして資質があるかどうかではなくて、まずはチャレンジしてみることが重要。自分が向いているかは、やってみた後でわかる。リーダー関係なく、苦手だと感じる分野にも、高校時代には積極的に手を出すべき。自分では気が付かなかった力を見つけるチャンスだから、成長できる可能性をつかんでほしい」
大事なことは、自分の可能性を追求し、幸せになる可能性を追い求めること。勝つとか負けるとか、優れているとか劣っているとか、そういうことに気を取られてしまいがちですが、誰かが幸せになって割を食うのではなく、お互いに譲り合って幸せを分かち合う道を模索することが重要だといいます。
読書を通じて、幸せになるための生き方を見つけられる。本書の魅力は、そういったところにあるのかもしれません。
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