教育学部って名前は聞いたことあるんだけど、実際にどんなことしているんだろう…?みんな先生になるのかな…?
このように思っている人も多いのではないでしょうか。この記事では、教育学部で学ぶこと全体の話をはじめとして、東京大学の教育学部では具体的にどんなことをやっているのか、教育学部生の卒業後の進路など、さまざまなことを取り上げました。進路選択で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください!
教育学部とは?
教育学部で学ぶこと
教育学部と聞くと、学校教育や塾での教育のような、「大人が子供に何かを教える」ことについての学問と考える人が多いのではないでしょうか。その認識ももちろん正しいのですが、実は教育はそれだけではないのです。
皆さんは、「生涯教育」という言葉を聞いたことはありますか?これ以外にも、「企業内教育」「主権者教育」「安全教育」というように、教育という言葉はいろいろな場面で使われています。「教育」という言葉は「教え育てる・育む」という意味を持つので、その対象は児童・生徒などの子どもに限らないのです。
そんな教育学部では、非常に幅広い学びが行われています。今回はその内容を、「教育哲学系学部」と「教員養成系学部」の2つに分けて説明していこうと思います。まずは、それぞれ2つの学部でどのようなことを学ぶのかについて解説します!
教育学部にはどんな種類がある?
「教育哲学系学部」と「教員養成系学部」
まずは、この2つの学部についてそれぞれ簡単に説明します。
「教育哲学系学部」とは、その名の通り教育哲学について学ぶ学部のことです。そもそも「教育」とはなんだろう、という問いについて多角的な視点から学んでいくものです。具体的には、社会学や政治学、心理学などいろいろな学問と教育をかけ合わせて考えていきます。
「教員養成系学部」とは、教員になるための授業がカリキュラムとして組まれている学部のことです。こちらは皆さんがイメージするものなのではないでしょうか。教員免許を取得するのに必要な「教職」と呼ばれる授業をとって単位を取得し、在学中に教育実習に参加する学生がとても多くいます。
教育哲学とは
さて、ここからは「教育哲学系学部」について深掘りして説明していきます。
そもそも、教育哲学とはなんだと思いますか?言葉を聞いても何をしているのかいまいち良くわからない、という人も多いでしょう。
「教育哲学」とは、教育に関する基本的な原則や理念、そして教育の目的や方法について考察する学問分野です。教育哲学は、個々の教育システムや教育政策についてだけでなく、教育の根本的な目的や意義、人間の成長と発達における役割など、より幅広い視野で教育を理解しようとする学問です。教育哲学の研究は、教育の哲学的な基盤を探求し、教育に関する深い洞察を提供することを目的としています。
教育哲学の授業の例
教育哲学の授業は、具体的にはどういったことをしているのか?少しかいつまんで説明していきます。
「謙遜とは、元来、道徳的完全性を伴った自らの価値の比較以外のなにものでもない。」
という言葉があります。近代哲学の骨格を築き上げたと言われている、プロイセン18世紀の哲学者イマヌエル・カントの名言の一つです。
授業では、このような昔の哲学者、教育者の考えや言葉を今の時代の新しい角度から捉え直し、その意義や今にも通じる理論を確認する、ということを行います。このような授業でしばしば行われるのが「哲学対話」という形式です。
この「哲学対話」とは、授業、つまり会話の参加者が輪になって意見を出し合う形式の対話のことです。何かの議題に対し、それぞれの立場から自由に意見を出し、力を合わせて納得解を探していく営みになります。この取り組みは、アメリカやフランスなどの海外で始まり、近年日本でも広がっています。大学の教育哲学系学部の授業は、この哲学対話の取り組みを実践したり、他の教育機関で実践するにはどのような方法があるかを考えたりしています。
教員養成とは
続いて、ここからは「教員養成系学部」について説明します。
教員養成は、言葉の通り教育機関の教員になる人を育むことを目的とした授業を行います。教員になるためには、一般的に「教職」と呼ばれている教員免許の取得要件に入る単位を取る必要があるため、このような学部ではあらかじめ必修で学生が取る単位の中に教職の授業が含まれている場合が多いです。
教員養成の授業の例
教職を取るまでの流れは、
①教職課程に指定されている授業を取り、必要単位数を満たす
②教育実習に行き、実際の教育現場で実践を行う
③教員採用試験を受け、合格する
というものになっています。これを総合的にサポートしてくれるのが教員養成系学部であるので、教育実習の手続きであったり、試験までの対策であったり幅広い授業が行われます。教職課程の授業の一例としては、「教育相談」「教育心理」などの授業があり、色々なケーススタディを行いながらそれぞれの場面についてどのような声かけが必要なのか、教員として知っておくべきことは何かについて学んでいきます。
東大の教育学部の実情
さて、ここまで教育学部全体の話をしていきました。ここからは、「じゃあ東大はどうなの?」ということで、東大の教育学部について話していきます。教育学部全体で同じように行われていることもあれば、東大ならではの部分ももちろんあるので、その両方を説明していきます。
なぜ僕は教育学部に来たのか
実は、僕は元々理系で、東京大学にも理系(理科一類)で入学しました。教育学部に進学する人の多くは文系(主に文科三類)で入学しているのですが、僕は理系から文転する形で教育学部へ進学しました。これを聞くと、「え、そんなことできるの!?」と思う人も少なくないでしょう。しかし、東大ではこのような選択はむしろ推奨されており、学部を決める段階で理系から文系の学部へ、文系から理系の学部へ転向する人は年々増えてきているのです。これには、「幅広い分野の学問を学び、自分に合う学部がどういうものなのか十分に考えてから学部選びをしてほしい」という大学側の想いが表れています。
僕自身の思いとしても、僕のように高校時代に理系のことを学んでから、大学で教育学部に進学して教育に将来携わる人が増えていってほしいと考えています。教育を受ける対象である生徒には文系もいれば理系もいて、スポーツに熱中している人もいれば芸術の分野に長けている人もいます。それなのに、その生徒を導く立場の存在が同じような人ばかりでは、その生徒一人一人に合ったアドバイスができないと思いませんか?
僕は、より多くのバックグラウンドを持った人が教育に関わってほしいと思い、自分自身でもこのような道を選びました。
教員になる人が少ない…?
さて、そんな東大の教育学部なのですが、実は教員になる人がかなり少ないのです。割合にしてなんと3%。教員免許を取る人ですら20%を切っていると言われています。その理由は、東大の教育学部が、「教育哲学系学部」だからです。実は東大は、教育学部にいても基本的には「社会」と「体育」の2科目の教職課程しか取得できないのです。「数学」や「英語」などの教職を取るためには、他の学部の授業を多く履修する必要があります。ですので、カリキュラム的にも東大の教育学部は先生になるためには作られていないのです。
東大教育学部生の進路
では東大生は教育学部を卒業した後、一体どこに行くのでしょうか?
自分の先輩に聞いたり、調べたりしたところによると、教育関係の仕事に就く人もいれば、全く違う職種に行く人もいるようです。ただ、教育関係でない会社に就職した場合も、社内教育や人事に関係する仕事をする人の割合は大きいというデータが出ています。職種はどうであれ、大学時代に学んだことを社会に出てからの仕事にも活かしている人が多いようです!
おわりに
教育学部についての説明は、いかがでしたでしょうか?一言で「教育学部」と言っても、その種類や何を研究するかによって勉強する内容は大きく変わってきます。この記事が、少しでも皆さんの学部選びや、将来やりたいことを選ぶことに生かされれば幸いです!
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