「あの人は地頭がいい」という言葉を、しばしば耳にしますよね。地頭のよさって、いつ決まるものなのでしょうか。地頭のよさとは何なのか、どのような家庭環境で育つのかを、具体例を挙げながら紹介します。ぜひご自宅で試して見てください。
※本稿は、西岡壱誠(著)『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく東大思考』(東洋経済新報社)を参考にしています。
「地頭がいい」の定義
「地頭がいい」という言葉が遣われますが、そもそもその定義は何なのでしょうか。
辞書で調べてみると、『広辞苑 第七版』(2018年発行)や『大辞林 第四版』(2019年)には、「生まれつき備わっている頭の良さ」のようなかたちで、「地頭」が紹介されています。しかし、それぞれひとつ前の版であると、「地頭」が載っていないため、この10年ほどで浸透した言葉と言えるかもしれません。
「地頭」とは、「その人本来の頭のよさ」と定義します。偏差値や点数の高さとは異なり、思考力・発想力・コミュニケーション力など、テストでは測れない能力を指しているのです。地頭とは、もともとはコンサルタント業界で使われていた言葉であり、「知識や情報を加工する力」を意味していました。今ではその言葉が広く使われ始め、上記のような広い意味に変わったと言われています。
地頭がいい子の5つの特徴
『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』では、地頭がいい人の具体的な特徴として次のものを挙げています。
- 絶対に忘れない記憶力
- 難しいことも的確に伝える要約力
- 誰にでも必ず理解させる説明力
- 自然とあふれる「ひらめき」力
- 頼りにされる問題解決力
若干矛盾する表現にはなりますが、もし子どものうちにこれらの能力を育てることができれば、元の頭の良さに関係なく「地頭がいい」人に近づくことができるということです。
地頭がいい子に育つ家庭環境
では、子どものこれらの能力を育てるために、保護者の方はどのような家庭環境をつくれば良いのでしょうか。
分かりやすくするために、「インプット」と「アウトプット」という言葉に分けて考えます。「地頭がいい子の特徴」で挙げた能力はすべて「アウトプット」する力だといえます(「記憶力」も、情報が必要になった時に思い出す力と捉えます)。
アウトプットの前には当然、インプット、すなわちたくさんの経験や活動が必要です。そのためこれからは先は、子どもの頃にした方が良いことを、インプットとアウトプットの観点からそれぞれ紹介します。
インプット
いろいろな経験
とにかくいろいろな経験をさせてあげてください。意識していただきたいのが、いろいろな「分野」の経験を提供することです。
キャンプやピクニックをすることで自然に触れる。習い事で音楽やスポーツや美術に触れる。庭で野菜を育てて、植物や農業に触れる。公園で遊んだり、家で工作したりすることも立派な経験です。
大切なのはお金や時間をかけることではなく、たくさんの種類の体験をすることです。初めは子どもが何が好きで何をしたいのか、子ども自身もよくわかっていません。私が子ども時代にした経験の中には、当然、「ハマる」ものもあれば「ハマらなかった」ものもありました。ただ、小さくて狭い子どもの世界を、大人の力で広げてくれた親には本当に感謝しています。
そして現役大学生の私が思うのは、今の「好き」や「興味」の根を辿ると、残らずすべて子どもの頃の経験につながっているということです。経験が増える分だけ、子どもは考えるための材料を手に入れ、それらを広く深くしていきながら、大人になっていくのです。
読書
多くの経験の中で、特に役立ったのが、本を読むことです。私はまだ字が読めない頃、毎日読み聞かせをしてもらっていました。本が読めるようになってからは、公立図書館に連れて行ってもらい、好きな本を借りられる上限いっぱいまで借りさせてもらっていました。
本は、実際に経験するよりずっと早く、広くたくさんの世界を私たちに見せてくれます。私が大好きだった「マチルダは小さな大天才」というロアルド・ダールさんの児童書の中でも、子どもの「読書」に対するたくさんの可能性と導きが示されています。(この作者の本はどれも面白いので、小学校高学年くらいのお子様に読んでいただきたいです!)
本は知識だけでなく、絵やストーリーに対する感受性、様々な「仮定」を通じた想像力、推測力、好奇心、また、読書という行為を通じた集中力や、読む本を選ぶ選択力、内容を誰かに伝える説明力や要約力など、本当に多くのものを与えてくれます。公立図書館で借りればお金もかからないので、ぜひ読書を取り入れてみてください。
自主性の尊重
たくさんの機会を提供していたら、いずれ子どもが特定の分野に興味を示すかもしれません。そうなったら、お金や時間の許す限り、とことん「好き」を深めてみるのもおすすめです。好きなこと、やりたいことだけをたくさんできるのは、子どものうちだけです。一見勉強や将来に繋がらないような「好き」でも、意外と自分を助けてくれるものです。また、やりたいことができたという経験をすると、自分から「やりたい」と思ったり、それを言ったりできるようになり、子どもの自主性が育ちます。
アウトプット
経験や活動で知識を得ると同時に、「アウトプット」の練習もしましょう。キーワードは、「親子関係」です。子どもと親が信頼と安心感のある関係を築けなければ、せっかくインプットしても、表現する能力が身につきづらくなってしまいます。
コミュニケーションが多い関係
お子様との「会話」は多いですか?子どものアウトプットを増やすためには、子どもとのコミュニケーションを増やす必要があります。まだ「書く」という機能がない小さい子どもは特に、「話す」ことでしかアウトプットできないからです。
まず前提として、しっかり話を聞いてあげる姿勢を見せること、頭ごなしに否定したり急かしたりせず、子どもが自然と話したくなるような環境をつくることが不可欠です。子どもが「話さなく」なってしまったら、アウトプットの能力は伸びる余地を失ってしまいます。
理解を諦めない
子どもの拙い言葉は時に大人に伝わりづらく、理解したふりをして終わらせてしまうこともあるかもしれません。時間がある時だけでも、なるべく、大人が本当に理解できるまで、説明を求めてみてください。これが「要約力」「説明力」の成長に直接つながります。
「誰が?」「なんで?」と問われているうちに、子どもは、会話に含めなければいけない情報を考えるようになり、次第にその問いがなくても上手に説明する力が身につきます。1日の終わりや、体験が一区切りした段階で、子どもに自分の経験したことや感想を説明させるのも良いでしょう。
疑問にはなるべく答える
子どもから「なんで?」と聞かれたら、なるべく子どもに分かるように答えてあげましょう。幼い頃は多くの人が疑問を持つ力を持っています。ところが成長するにつれ、疑問を持つこと自体が難しくなっていきます。疑問力や質問力は、学校での授業課題になるほどです。
子どもの「なぜ」に分かりやすく答えてあげることや、逆に「じゃあこれはなぜだと思う?」と聞いてあげましょう。たとえ事象そのものは難しくて子どもが理解できなかったとしても、疑問を持つ経験、考える経験そのものが、勉強や将来の糧になるでしょう。
おわりに
私自身、子どもの頃の経験の重要性を、何にも勝るくらい実感しているので、つい熱く書いてしまいました。とはいえ私は一般家庭に生まれたので、何か特別な経験をさせてもらったわけではありません。皆様にも、それぞれの時間やお金の制限の中で、無理なく、親子どちらも楽しんでいただきたいと思います。どちらかというと子ども側からの目線の記事となってしまいましたが、本記事が少しでも、お子様と過ごす時のヒントになることを願っています。
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