宇都宮短期大学附属高等学校 アカデミックマインド 第8回

カルぺ・ディエム講師の、布施川講師(文学部4年)朝倉講師(教養学部2年)橋本講師(教育学部3年)が、2023年12月9日に宇都宮短期大学附属高校の高校1年生を対象に「アカデミックマインド育成講座」という講演会・ワークショップを開催しました。

アカデミックマインド育成講座とは、「自分で考える力」を育む講座です。

AIなどさまざまな技術が発達する中、これからの世代に求められるのが「思考力」です。共通テストや大学入試でも「自分で考える力」が試されるようになっています。本講座では、現役東大生と一緒に「身の回りにあふれる疑問」と「五教科の勉強」を結びつけた課題に取り組み、自ら問いを立て、仮説を作り、検証する一連の思考法「アカデミックマインド」の獲得を目指します。

勉強がより楽しく、身近な存在になるだけではなく、獲得した思考法を大学受験の問題に応用していく講座です。

全10回からなるアカデミックマインド講義の今回は第8回目です。

本記事では、イベントの様子を実際に講義を担当した講師の橋本が紹介します!

目次

円周率について証明する!?

「円周率が3より大きいことを証明してみよう!」

2003年の東京大学の数学の問題を提示する橋本講師。

小学生の時は3.14として、中高生の間はπとして当たり前のように使ってきた円周率のことを証明する、という問題に動揺が広がります。

「え、、円周率は円周率でしょ、」

「当たり前すぎてわからない。」

そこで、普段どのように円周率を使っているかという視点から周りと話し合います。

実際に円周率を使うのは主に面積を求める時と円周を求める時なのは、明白です。

では、円周率を求める式を作れないかと考えていきます。

直径✖️円周率=円周

となるので、そこから、

円周÷直径=円周率と求めることができます。

つまり、円周のながさもしくは円周のながさの「近似値」を求めることができれば円周率もしくはその近似値を求めることができます。

そしてその値が3よりも大きいことを示せればこの問題も解くことができると見えてきますね。

身の回りにある当たり前に目を向ける。疑問を持つ。

この問題に込められている東大の先生方の想いが見えてきます。

まさに、アカデミックマインド講義の演習(円周)問題です!

カボチャから生まれる入試問題

「スーパーでカボチャを見たことがあるひと?」

半数程度の生徒さんから手が上がります。

急に話題が変わったことに戸惑いを隠せない空気が漂います。

高校生の時点でスーパーにいく機会は多くないですが、それでもあることは知っている人がほとんどです。

「では、日本国内で取引されているカボチャは、北海道、メキシコ、ニュージーランド産が多いのはなぜ?」

これは、実際に東大入試問題で出題されたものです。

カボチャの生産までは、注意して見たことのなかった生徒さんに驚きの声がさらに広がります。

生徒さんはそれぞれ考え始めますが、聞いたことのない切り口の問題になかなか手がすすみません。

「じゃあみなさん、ナスの産地といえばどこをイメージしますか?」

「千葉!」「高知もあった気がする」「茨城とか?」

色々意見が広がります。

この中の「高知県産のナス」に今回の問題のヒントが隠されています。

これは、促成栽培と呼ばれています。

高知県沖の暖かい日本海流の影響で冬でも比較的温暖な気候が広がる高知平野で、夏野菜であるナスを栽培しています。

旬ではない時期にも、その気候にあった栽培を続けることで、一年中農作物を供給することを可能にするのです。

この考え方をうまく使うと、北海道・メキシコ・ニュージーランドそれぞれの栽培の特徴を見ることができます。

その際に、まとめて考えるのではなくそれぞれの地域で分解して考えることで地域の特徴とカボチャの生育特徴を捉えることができるのです。

この問題を通して、分解の考え方がどんな場面でも重要になってくることを改めて感じていただけたかと思います。

東大入試のような高いレベルの問題にも、今まで学んだ考え方が変わらず使っていく生徒さんの成長がたくさん見られました。

最後に

東大入試問題はいかがだったでしょうか。

何から始めれば良いかわからないと感じる人も多かったようです。そんな時にもアカデミックマインド思考を糸口に模索してみてほしいと思います。

実際に学んだ考え方を使って解いていく生徒さんの姿はとても頼もしかったです。

次回からはアカデミックマインド講義特別編です。今までとは違った角度でみなさんの思考力を育てて行ければと思っています。

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この記事を書いた人

東京大学では教育哲学専攻。小学校でのボランティアの経験から学校教育のあり方について模索している。趣味は旅行とドライブ。最近は高遠そばのねぎを普通は食べないことを知り、衝撃を受けた。

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