【1分で学べる語源の話】希ガスの語源を追え!!〜前半〜

皆さんこんにちは。現役東大生ライターの縹峻介です。

今回から2回にかけて、元素周期表で最も右にある元素たち、通称希ガスたちの語源を一挙にご紹介したいと思います。

元素番号2 He(ヘリウム)
この元素は太陽に多く含まれています。正確に言えば、ヘリウムは太陽を構成している主成分の一つです。
実は、太陽は通常の燃焼によってではなく、核融合という特殊な条件下でのみ起こる反応によって、水素2つがヘリウム1つへと変化し、その反応で浮いた分のエネルギーを放出することで光り輝いているのです。

この元素が見つかったのは1868年のこと。
当時は上記で説明した、太陽の核融合反応などの理論的背景は解明されていませんでした。しかし、太陽からの光(のスペクトル)を分析していた過程で、太陽を構成していそうな未知の元素を発見することができ、それに対してギリシャ語で太陽を表す単語「へーリオス」

※古典ギリシャ語で「太陽」の意。読み方は「へーリオス」
を元に、ヘリウムという名前が授けられました。
とても良い名前だと思います。ヘリウムからすると、自分の主戦場は地球上ではなく太陽の中だと思っているはず、なので。

元素番号10 Ne(ネオン)
皆さんはエヴァンゲリオンというアニメをご存じでしょうか。
フルタイトルは『新世紀エヴァンゲリオン (Neon Genesis EVANGELION)』と言いますが、実はこの中に含まれているneonと元素のネオン[元素記号:Ne]は同じ語源を持っています

その意味は新しいです。
古典ギリシャ語の「ネオス」

※古典ギリシャ語で「新しい」の意。読み方は「ネオス」
が元になっています。では、なぜ新しい元素だったか、と言うと。
この元素が発見されたのは1898年。William Ramsay とMorris Traversによって、液体空気を蒸発させることで初めて単離されました。ただ、この発見は元素番号18のアルゴンなどよりも遅く、「周期表を埋めるために何か新しい元素があるはずだ」と考えた末の発見だったため、なんですね。

元素番号18 Ar(アルゴン)
この元素は、働かないという意味を持っています。つまりニートなんです。太陽内部でバリバリ核反応を起こしているヘリウムや、新しいと言われて重宝されたネオンとは大違いの待遇ですね。

アルゴン[Argon]を意味で分解すると、a+ergonに分けることができます。
aはギリシャ語で否定を表す接頭辞
ergonはギリシャ語で仕事という意味です。

※古典ギリシャ語で「仕事・活動」の意。読み方は「エレゴン」
なので、全体を合わせて仕事をしない・働かないという意味になるんですね。
では、なぜそんな不名誉な名前を付けられたのか。それは、アルゴンという気体が全く化学反応を起こさない気体だからなんです。希ガスは全般的に活性が著しく低いことからそのように名づけられていますが、アルゴンは発見された当時、本当に何とも反応を起こさない気体であったことから、特段に名づけをしようと言うことになり、このような名前となったようです。

元素界において、誰とも反応せず、働かずニートで居られるというのは誰にでも出来る所業ではなく、金や希ガスと言った選ばれた高尚な元素たちにしか許されず、それ故の誇り高き命名だったのですね。

おまけ「ergについて」

ergという語幹が「仕事・活動」という意味を持っていることを知らなかった方も多いかもしれません。しかし、意外にもこの語幹が残る英単語は多いのです。

・energy・・・仕事[erg]を与える[en]→エネルギー
・allergy・・・対立する[alle]活動[erg]→アレルギー
・surgeon・・・手[kheir]で仕事[erg]を行う人→外科医

などなどですね。ここからさらに深堀りできそうな語源もあってワクワクしますが、本日はこのあたりで。では。

この連載記事では、このような語源にまつわる文章を中心に執筆します。
多岐に渡る分野の言葉を紹介する予定ですので、楽しみにお待ちください。

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この記事を書いた人

東京大学理学部物理学科に所属。高校時代に生徒会長をした時の楽しさが忘れられず、学祭やイベントの運営に携わって仕事をすることが、至極の楽しみ。カルぺ・ディエムでは出版編集部に所属し、よりクオリティの髙い書籍を出すことを意識している。趣味はピアノとゲームとスラック。

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