導入にあたり否定的な意見を受けた大学も
山田進太郎D&I財団は3月7日、理工系学部の「女子枠」実態調査の結果を公開しました。理工系学部における「女子枠」入試を実施している大学を対象にアンケート調査を実施し、24大学から得た回答を集計したものです。結果によると、24大学のうち「女子枠」を2020年度以前に導入したのは3校(12.5%)であるのに対し、2023年度以降に導入したのは21校(87.5%)と、2023年以降に「女子枠」制度を導入する大学が増えたことが示されました。
大学が「女子枠」を導入する際に期待していた効果は、学部の多様性と活性化(87.5%)、優秀な女子学生の獲得(83.3%)、学部のジェンダーバランス改善(79.2%)の順で多い結果となりました。一方で、入学した女子学生にとって学びやすい環境(ハード/ソフト面)や入学後のサポートに関する期待は3割程度で、副次的効果としての期待にとどまった。
2024年度女子枠入試の応募状況については、非公開などの5大学を除く19大学のうち、定員を上回る応募あるいは同数程度だった大学は12校で、定員を下回った大学は7大学となりました。「女子枠」入試を導入した大学においては、卒業後に約半数の女子が大学院に進学し、意欲的な女子学生が研究面でも貢献するなど、具体的な成果が出ているようです。一方で、「女子枠」入試導入にあたって45.5%の大学が大学内外からの否定的なコメントなどがあったと回答しています。
また、学力試験がない場合は、入学後の数学・物理の補講や専門教育導入授業の実施など、学力面でのフォローアップが必要になるケースがあるほか、女子トイレの増設やロッカールームの設置など施設の充実にも課題との回答が寄せられています。
山田進太郎D&I財団「理工系学部の「女子枠」実態調査2024 アンケートから読み解く、24大学の「女子枠」制度の現在地と展望」2024年3月5日(最終閲覧日:2024年3月5日)
東大生の考察:「女子枠」制度の意義
昨今では、一部の大学の理工系学部入試で「女子枠」制度が導入されています。共通テストが免除になったり、学校推薦が用意されていたりと、「女子枠」の具体的制度は大学によってさまざまです。
確かに、「女子枠」制度の導入により男女間で合格基準が変わってしまうことが不平等であり男子に対する逆差別であるという意見もあります。ひとくちに「女子」と言っても個人の感覚はそれぞれなので、単に「女子」を増やすことで学部全体の価値観が多様化するという見方についても懐疑的な意見があるでしょう。
とはいえ、「女子枠」制度によって学部所属・学部出身の女性を増やすことで、将来その学部の受験を検討している女子受験生からの印象を良くすることが、最終的な女子受験生の増加に寄与することは間違いありません。女子の理工学部進学がごく当たり前になり、進学先にまつわる社会の固定観念が薄れた先に、受験生が真に自身の興味関心に従って学部を選べる風潮が生まれるのかもしれません。