小学校で活躍されている先生方に大学生がインタビュー!
お仕事の内容や学生時代からの歩みなど、ここでしか聞けない内容を盛りだくさんでお届けします。
今回は、大阪市立豊崎小学校で勤務をされている松下 隼司(まつした・じゅんじ)先生にインタビューをしました。学校現場で働く教師として、教職に対する世間のイメージと実態について、昨今導入されているICT教育、生徒との関わり方、授業方法の工夫など、貴重なご経験をもとに学校現場のリアルなエピソードをお話いただきました。
松下隼司(まつした・じゅんじ)先生
大阪市立豊崎小学校教諭
第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞を受賞
日本最古の神社、大神神社短歌祭で額田王賞を受賞
プレゼンアワード2020で、優秀賞を受賞
第20回読み聞かせコンクール朗読部門で県議会議長賞を受賞、自由部門で教育委員会教育長賞を受賞
絵本『せんせいって』『ぼく、わたしのトリセツ』
教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』『教師のしくじり大全』
令和6年度版教科書編集委員
令和4年度 文部科学大臣優秀教職員表彰 Voicyパーソナリティ
その他、小学館の「みんなの教育技術」に連載記事を寄稿(リンクはこちら)
教育現場の実態とやりがいとは?
ー世間には教職に対して「しんどい」というイメージを持っている人もいます。実際のところいかがでしょうか?
松下:私は子どものふとした姿にいつも癒されています。学校の休憩時間でも休まずに外へ遊びに出る子どもたちや、 絵本を読みながらウトウトしている子どもたちを見ると「子どもって素敵だな」と感じ、疲れも吹き飛びます。毎日がその繰り返しです。
もちろん、しんどい部分もありますが、それはどの仕事でも同じです。実は学校の離職率が他の職業と比べると低いことを知っていますか?
ーそうだったなんて知りませんでした。松下先生はやりがいをどのように見出していますか?
松下:学校の子どもたちと過ごす時間は、自分の子どもや家族よりも一緒に過ごす時間が長いです。だからこそ、子どもたちの見違えるような心身の成長を感じられるところにやりがいを感じています。例えば、何日も練習してやっと逆上がりができるようになった子どもを間近で見ていると、感動しますね。
ICT教育について
ー昨今は教育現場へのICTの導入が盛んです。松下先生はICT教育に対してどうお考えでしょうか?
松下:これまで、小学校の担任の先生は全教科を担当し、丸つけも一枚ずつ手で行っていました。とても業務が幅広いので自分の専門外の教科では大変だと感じることもありましたが、学習端末(パソコンやタブレット)を導入したことによって手作業が減り、一気に効率を上げることができました。
またこれまでの授業では黒板を使った一方通行の説明が多かったですが、学習端末を用いることで子どもたちと会話したり、子どもたちのできたことに目を向けて褒めたりする時間が増えたと感じます。
昭和とか平成のほうが良かったなという先生もいますが、教員としてはもう戻りたくないです。(笑)
ー生徒と会話する時間が増えたのはすごいですね!具体的に学習端末(パソコンやタブレット)はどのように使用していますか?
松下:例えば、算数の問題を以前のようなプリントではなく、学習端末にあるデジタルドリルが学習サイトをやっていいよと伝えると、意欲満々でやる子どもが増えました。またクイズ形式で単元を学習することができる”Kahoot”は、ゲーム感覚で取り組めるので人気です。
社会科の学習に苦手意識をもっていた子どもも、「パソコンで調べ学習やまとめ学習をするのが楽しい」という理由で、社会科は人気の科目になりました。そうして学習意欲が上がり、成績が上がっていく子どもたちを褒められるようになりました。パソコンの使い方も子ども同士で教え合ってくれます。授業もより楽しくなるし、仲間づくりにも活かせるので、教師としては、とってもありがたいです。
子どもたちが自分のタブレットで好きなページを見れる、自分の知りたいことを調べられる環境はとても助かります。デジタル教材は確実に子どものモチベーションにつながっていると分かりました。
ー一方で、ICT教育の難しいところはありますか?
松下:そうですね…。ICTの担当になった先生は、一人で全学年の授業を受け持っています。一人で全児童の端末の管理と年度末の切り替えを行う必要があるので、学期末は自分のクラスや授業を担当できないこともあり、大変そうです。
またデジタル教材に関する規定は自治体でばらつきがあるので、使えるアプリや教材に差があることがあります。他府県の様子を見て自治体がOK出すことが多いですね。大阪では最近、スライドなどを作成できるcanvaの使用ができるようになりました。
授業や普段の生徒との関わりについて
ー授業方法について工夫をする際、そのアイデアは自分で編み出していますか?それとも何かを参考にしていますか?
松下:完全に自分の経験をもとに授業方法を工夫しています。
私は個人的に毎日1ページ、ノートに振り返りを書いています。授業中や休み時間の様子や目の前で起きたことを書き記し、今後の先生や生徒たちの参考になるようにしているのです。
例えば、数年前、体育でマット運動をする際、眼鏡を外して床に置いていた生徒がいました。ところがとある生徒がその眼鏡に気づかず踏んでしまい、壊してしまいました。私は「眼鏡を床に置いていたらあかん」という事前指導をしていなかった自分にも非があると感じて反省し、今後このようなことが起こらないようにメモしました。些細な事だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした日々の積み重ねが将来役に立ったりもするのです。
また私の周りにはInstagramを情報サイトとして活用する先生もいます。ものすごく短い時間でパパッと調べられるので様々な情報を得たいときには良いかもしれませんが、コンテンツが手軽な分、少し浅いと感じてしまうこともあります。
ー反抗期の生徒や挑戦的な態度をとってくる子どもに対してはどのように関わっていますか?
松下:子どもが友達に暴言を言ったり、暴力をふるったりしたときは、教師として理由を聞いたり、だめなものはだめだと毅然と指導します。ただ、正論を言うほど反抗的な態度をとったり、挑戦的な態度をとったりする子どもを担任したことがあります。教師をうざったい存在に思って、聞く耳を持ってもらえなくなるのです。そんなときは、正攻法だけでなく、子ども視点に立った指導をすることがあります。そのために、子どもたちが何に興味を持っているか理解しておきます。子どもたちのトレンドに興味をもったり、流行っている漫画を読んだりするなどです。
「クソ野郎!」などとクラスメイトに暴言を吐いてしまう子どももいますが、それに対して「そんな言葉遣いをしません」と伝えても子どもの心には全く響かないことがあります。ところが、「クソ野郎!」と暴言を言ってしまった子どもに「あたなは、カイザー!?(ブルーロックの悪口を言うイケメンキャラ)」っていうと周りの女子たちは途端に「いやだ~!」と言い始めます。その「クソ野郎!」と暴言を言った子どもは、周りの女子たちに嫌われたくないので「クソ野郎!」と言うのをやめたのです♪
松下先生の思い
ー教員の志望者数が減ってきている現状についてはどうお考えですか?
松下:教員は「給食を食べる時間がない」「休憩が取れない」という声もありますが、それが全てではないと思っています。私は給食を多めに食べることもあります。また夏休みに2週間のまとまった長期休暇をとることもできます。(その分、年休が余っているということもあるのですが…。私は、息子や娘の育児や急病などで年休が残っていないのでとれません。)
メディアでいじめ問題や不祥事などが取り上げられたり、「しんどい」「理不尽な環境」とまで世間では言われたりすることもありますが、実際は子どもたちの日々の成長を実感できる非常に魅力的な職業だと思っています。なぜ私たちが教師を続けているのか、そのやりがいについて、もっと多くの方に知ってもらえたら嬉しいです。
松下先生、ありがとうございました!
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